働き方改革
オフィス環境で生産性は大きく変わる!働きやすくなる工夫とは?
日本の1時間あたりの労働生産性は、公益財団法人・日本生産性本部の2018年末の発表によると先進7カ国で最下位。主要先進7カ国(G7)で47年連続最下位だったこと …
これまで、前篇・中篇と2回にわたり、ヤフー株式会社の「働き方改革」の具体的な取り組みについてお伺いしてきました。最後となる後篇では、ヤフー株式会社の目指す先についてお話を伺いしました。
■ゲスト(写真右)
ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア 学長 / 伊藤 羊一氏(以下、伊藤)
■インタビュアー(写真左)
株式会社KOMPEITO 代表取締役社長 / 川岸 亮造 (以下、川岸)
川岸: オフィス移転されて、前篇・中篇でお話いただいたような様々な施策を、本格的に行われてから1年くらい経つと思うのですが、効果や変化を感じられていることってありますか?
伊藤: もう本当に個人的な感想なのですが、少なくとも、こういう方向性だよねってことをみんなが共有したってこと。これがすごくデカい。どういう形で働き方を考えるんだっけ?残業時間を減らすんだっけ?って。1個1個の施策はもちろん、やっぱりまずは安心安全があって、その上で選択肢があって、その中で1on1などでモチベートして業績を上げていく、生産性を上げていくっていう流れが割と全社で共有されて来たってのいうことが1つデカいよね。
また、宮坂CCO(チーフ・コンディショニング・オフィサー)になって、いろんなところでコンディショニングの話をしたり、いろんな施策を出したりすることで、だんだんわかってきている。わからなかったらみんな同じ方向に行けないからね。
川岸: そうですね。どこかの部署だけがワーワー言ってる、みたいな。6,000人くらいの規模にもなると、そういうことも結構ありますよね。8割ぐらいのメンバーはよく分からない、みたいな。
伊藤: なんでこんな社内レストランが充実しているんだっけ?、なんで朝食が食べられるんだっけ?、なんで「どこでもオフィス」制度が、オフィスの引越しと共に月2日から5日に増えたんだっけ?とか。諸々の施策が伴っていたのが良かった。
川岸: トップがそういう風に発信もしつつ、それに紐付いた施策が具体的に社員の方が感じられるようになったり、場所などのハード面が整ってきたっていうことで、だいぶ皆さんが理解してきたってことですね。
伊藤: そうですね、そういった点を共有したってのいうのもありますし、みんなと話していて、少しづつ意識が変わってきているって実感はありますよね。1on1とかも、2年前に私が入ってきた時は、なんでやるんだっけ?と、意図を理解していない人もいました。
川岸: それはリーダーの方も受ける側の方も?
伊藤: そうそう。やんないといけないからやっているっていうことも、正直、前はあったと思うんです。今では、1on1がちゃんと出来ているか出来ていないかはさておき、1on1が重要じゃないよねって人はいないんですよね。浸透するっていうか、共有出来ているってことがまずデカいですよね。
で、それがどう結果に結びついているかはまだ分かりませんが。
川岸: それはこれからってことですね。
伊藤: 意識が変わって、共有して、そこに向かって回していって、やっと業績に・・・っていう。相当時間がかかると思うけど、共有感は半端なく出来てきているっていう実感はあるんだよ。
川岸: 伊藤さん先ほど、浸透じゃなくて”共有”って言い直されたじゃないですか。よく、ビジョンが浸透して〜ということは、いろんな会社さんで言われている話だと思うんですが、浸透じゃなく”共有”って明らかに違いますよね。
伊藤: 浸透って上から下に流していくんですよね。これはダメで。会社全体としてはわからないんですけど、僕らは企業理念とか、みんなでやろう、みんなで作っていこう、っていう意識を持っているんだよね。浸透していくとか、カスケードダウンしていくとか、そういう発想だと自立した人間になれないと思うんだよね。
川岸: そうですね。自分はこうやりたいのに、上から言われると逆に拒絶反応出たりとか・・・
伊藤: そうじゃなくて、共感して共有しようねっていう思いは強いですよね。
ラクビーでね「one for all. all for one.」って言葉があって、自立した個人がみんなのためにチームを考えるんですね。「all for one」って、一つのトライっていう目的に対して、ラクビー選手は監督にトライしろって言われたからトライしますよ、っておかしいじゃないですか。選手みんなが一丸となって、みんなでトライしようねって、共有してるわけですよね。監督がやれって言ったからやるってのいうことはないわけで。スポーツだったらそうなのに、仕事になるといきなり、上から言われたから〜ってのはおかしいよね。それを僕らは自立って言っているし、そういうイメージはあると思いますね。
川岸: 次に、少し意地悪な質問なんですけど・・・こういう色々な施策をやるっていうのは、やれる会社さん、やれない会社さんがあると思っていて。まあ利益が上がっているからやっているんじゃないの?という見方をされることも少なくないんじゃないかなと思うんですけど。
伊藤: うんうん。どっちが先かっていう話にも繋がるんだけど、こういう風にしているから利益が出てくるって話もあるし、利益が出てきたからこういう風にしていくのもありますね。結局、利益を上げないとできないってところはあるかもしれないんですけど、それが目的ではない。
オムロン創業者の立石一真さんが「企業は利益を追求するもんや。それは人間が息をするのと同じや。そやけど人間は息をするために生きてるんか。ちがうやろ。」っておっしゃっていて。まさにその通りだと思って。
何のために仕事をするのかというと、会社の利益を上げるっていうのは生きていくためには必要なんだけど、出た利益を投資して新たなサービスを作り出したり、利益を使って働き方改革の施策に投入できるのであれば、投入したり。それで従業員も楽しんでパフォーマンスが向上していって、結果、お客様が笑顔になっていく。それが企業の目的だよね、と思うわけです。
川岸: 利益が出れば、また自分たちの働きやすい働き方に還元される仕組みになるだろうから、そのためにはまず利益を上げるということですね。
伊藤: そうなんですよね。だから、利益があがるからできる、ではなく、働き方改革ができて、お客様に喜んでもらうために、利益をあげよう、という順番ですね。
川岸: それで利益が上がれば、また自分たちに返ってくるし、過ごしやすい働き方、生きやすい生き方にプラスになるんだなっていうことを、みなさん理解されてきたってことなんですかね。
伊藤: それで、ちゃんと良い循環にするためにも僕らは安心安全、才能と情熱を解き放つって言ってるんだけども。安心安全、これは絶対にやらなきゃだめだし、そうじゃないと絶対いやですよね。利益が上がっている上がっていないというのは、状況によって違うんだろうけど、安心安全、才能と情熱を解き放つ方向感を持ち続ける、というのは必要だと思いますよね。
川岸: その通りだと思います。そういった点では、先ほどコンディショニングとありましたけど、僕らのサービスも、働く人のコンディションを整えるために野菜とかフルーツをしっかり摂ろうよ、ということを伝えるサービスをやっていますので、今回対談させていただきながら、自分たちの方向感っていうのも間違ってないんだな、と確信させていただく形になりました。
伊藤: やっぱり食事と運動、睡眠、オフィス環境、っていう要素が必要だと。そういう意味では、食事をすごく気にしてますし、本当においしいんですよ。
川岸: 栄養を摂るっていうのは大事だとは思うんですけど、その前に美味しいっていうのは大前提ですよね。
伊藤: どのくらい美味いかっていうとね、話しているだけでよだれが出てくるレベル。(笑)
川岸: お昼の時間近付いてきていますしね。(笑)
伊藤: まあ味はひとそれぞれなので、あまり好きでない人もひょっとしているかもしれないですけど、まあまあ大したもんだなと。
あとは、睡眠。睡眠をとるためには、時間を確保しないといけないし。
あと運動は、適宜自分でやってくれっていうのが基本ですが、例えば自転車通勤なんかも認めてるんですよ。自転車通勤ってヘルシーでいいじゃん、みたいなね。
あと、オフィス環境。新オフィスはかなり色んなことが考えられて設計されています。この4要素を整えていくのが、大前提だよねってところになっていくと思いますね。
川岸: オフィス環境といえば、社内だけじゃなく、「LODGE」という場所を通じて、ヤフーさんの社員じゃない方たちも使用できたりするとか。
伊藤: そうですね。ヤフーってこんなことを考えているんだよ、ってことに触れていただくキッカケにもなると思っています。
また、ビジネスを通じて社会に貢献していくには、ヤフーだけでできることが限られていて、既存の関係だけじゃなくて、新しい関係がどんどん生まれていくことが必要。そのためには、「LODGE」みたいなスペースが会社の中にあるっていうのはすごく重要なことと思いますね。
川岸: 先ほどおっしゃっていた「UPDATE働き方」をまずは社内でやっているけれど、それを通して、ヤフーさんだけじゃなくて、in東京、in日本みたいな形で、働き方が広がっていくイメージ。それが最初の「UPDATE JAPAN」っていうところにも繋がっていくのかな、とお話聞いて思いました。
伊藤: そうですね。僕自身、”安心安全の後に才能と情熱を解き放て”っていうのは、心の底からそう思っているので、いろいろなところでお話しているし、「LODGE」などを通じて知ってもらえる人も増えたし。まあ、これが世の中に広がっていけばいいな、っていう意識はあります。
川岸: これからどんどんヤフーさんから日本を席巻していくんだと思いましたね!
伊藤: そうなったらいいですよね。大げさな言い方になりますけど、みんなの笑顔が一つでも増えていくような流れを、ヤフーもやるし、OFFICE DE YASAIさんもやるし、どこそこもやるし、っていう。
川岸: 日本全国でそういうことができていけば、日本全体が良くなっていくという。
伊藤: そうなんですよ。そんな簡単じゃないですけど、それを信じないとできないし。
昨今・・・というか、これから日本は厳しい。人口が減っちゃうとか、平均年齢上がっていくとかね。そういう厳しい環境の中で、働く人の幸せを徹底的に追求していくことは大事だと思う。
川岸: ぜひ日本をよくしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします!ありがとうございました。
伊藤: よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
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