インタビュー

-2018.07.24.Tue

経営戦略としての健康経営、DeNA流「見える化健康経営」とは〈後篇〉

今回は、CHO(Chief Health Officer)室を立ち上げ、いち早く「健康経営」に取り組まれてきたDeNAのCHO室 室長代理、平井孝幸氏を訪ね、前篇では、DeNAのパフォーマンスアップを目的とした取り組みについてお話を伺いました。本篇では、健康経営の見える化についてさらに深掘りしていきます。

■ゲスト(写真左)

株式会社ディー・エヌ・エー CHO(Chief Health Officer)室 室長代理

健康経営アドバイザー

渋谷ウェルネスシティコンソーシアム理事長 / 平井 孝幸 氏(以下、平井)

■インタビュアー(写真右)

株式会社KOMPEITO 代表取締役 / 川岸 亮造(以下、川岸)

 

川岸 :前編では、株式会社ディー・エヌ・エーさんでのパフォーマンスに特化した取り組みについてお伺いしてきました。その他にも、平井さんご自身は、いろいろな場所でご講演されたり、他社さんでお話をされる機会があると思います。社外を見ていて、健康経営と出会った頃と今って、流れが変わったりしていますか?

平井 :そうですね。やはり以前に比べると、変わりましたね。今までは、どうしてもやっぱり、”ザ・健康”みたいな「健康診断結果をよくしましょう!」的な感じで。直球で面白味に欠けると感じるものが多かった印象です。それが、だいぶ”楽しいことによって健康にしていく”っていう企業様が増えているのかなと思っています。今は、そういう企業様をどんどん増やしたいと思い、講師活動なども行ったりし ています。

川岸 :渋谷あたりでも、いろんな企業様を集めてご講演されたりしていらっ しゃるんですよね?

平井 :まずはやっぱり、渋谷の企業から、「経営戦略としての健康経営」を広めていきたいと考えています。

川岸 :やはり、パフォーマンスを出すことが目的であり、それが繋がって土台になってくということですね。

平井 :あとは、パフォーマンスを上げることは 1 番理想ですけど、食生活をどうやって変えたらパフォーマンスが上がるのか?って、なかなか伝えるのは難しいじゃないですか?

川岸 :難しいですね。

平井 :やっぱり血糖値だったり、普段食後に眠気を感じている人たちが減っていったら、結構大きい変化ですよね。そういう伝え方であれば、難しくないじゃないですか。それこそ、野菜の量を増やすとかベジファーストとか。少しは役立つ行動が出来ると思うので、社内には伝えていますね。

川岸 :ちなみにプレゼンティーズム(出勤しているけど 100%のコンディションが出せないために失われているコスト)を0に近づけるっていうのは、”これだけ コストが浮いたよね”っていうの算出されているんですか?

平井 :設立当時に専門家の協力を得て DeNA 社内で試算したプレゼンティーズムコストでいうと、運動、食事、睡眠、メンタルの 4 つの面だけで、20 億円と算出しています。その他も、花粉症や二日酔いなど全て含めた算出方法を昨年夏より試みているところですが、損失額は更に大きなものになります。現在、半年に一回実施している、全社アンケートで様子を見ている感じですね。

川岸 :損失を、活動によってどれだけ減っていくのかを効果として見ているということですね。

平井 :はい。健康に対する意識の変化、行動の変化というところも同時に見て、CHO 室の存在意義というのをちゃんと見える化させていこうというところですね。

川岸 :DeNA さんだけではなく、渋谷全体、日本全体で、というのを考えられているという感じですね。

平井 :健康経営銘柄やホワイト500に選定され、やり尽くしたという企業様もいらっしゃるんです。プレゼンティーズムという視点などを抜きでやり尽くしたいう企業様がいらっしゃった時は、まだまだやることたくさんありますよという話をしたり。

川岸 :そうですよね。うちも今、企業様とお話をしていて、食事を改善するだけで生産性がどれだけ上がるのか?っていうのを実際に検証したいと思っています。ただ、オフィスで働いていてもなかなか測りづらい。だからあえて、工場でプロセス改善などを行わず、食事だけを変えてみた時に、工場での生産性がこれだけ変わった!って言えれば、それはオフィスでも同じようなことが言えるよね、ってことを今、お客様と画策しているところです。我々のサービスもそうですが、見える化をしないと、存在意義というか、導入するとこによってどれだけの効果があるのかを言えないとなかなか続かないかなと思っていますね。

平井 :弊社ももっと数値化できればと思っています。あとは数字が全てではないので、うまくバランスを取りながらですね。一番は、社員が喜ぶ取り組みが大事だと思っています。強制的に禁煙とかではなく、喫煙者にはその人に寄り添った取り組みというのを行っていくなど。

川岸 :喫煙によってリラックスしている人もいるわけで、その人達を全否定すると、その人がすごく虐げられちゃうというか。なので、それぞれの人たちがパフォーマンスを出すための健康的な取り組みってなんだろう?みたいなことを考えたいですよね。

平井 :健康経営を実施していく上で、「ストレスが最大の敵だ」と肝に銘じています。

川岸 :何か強制にやらされるというのは、非常にストレスですよね。

平井 :なので、社員一人ひとりが自分流の健康スタイルを見つけるための”選択肢を広げる”ということを意識して行っています。

川岸 :従業員の方がそれぞれ選べるという…

平井 :そうですね。

川岸 :選んだ結果、健康につながり、パフォーマンスアップにつながる選択肢を揃えていくということですね。

平井 :そうですね。会社にいる間に身に付けた健康に関する行動変容が、プラ イベートにも影響を及ぼすとなると、たとえもう DeNA で働いていないとして も、10 年後 20 年後、DeNA で働いた時に身につけた生活習慣が活きるかなあ と。DeNA の健康経営があったおかげで、自分たちは生き生きした老後を過ごせているという風に思ってくれたらいいなと思っています。

川岸 :なるほど。平井さんはご自身でも実践されているので、すごく説得力がありますよね。

平井 :やっぱり実践しないと良いか悪いかってわからないので、社内の取り組みは、一度自分や CHO 室メンバーが試すようにしています。食べ物やグッズも一回行ってみた上で、本当に良かったものだけを伝えるようにしています。

川岸 :非常に共感しますね。血糖値などの話をよくするのですが、本を読んだだけだとよくわからなくて。朝から何も食べずに、限界にお腹が空く夕方ぐらいまで我慢してから、ラーメンを食べた日。きっちり朝からタイミングや、食べるものに考慮した日。仕事終わりのスッキリ感など、実際にどう違うかを試してみたんですけど、前者の日はやばいですね・・・ 食べた後、やる気なくなっちゃって(笑)それこそさっきおっしゃっていた通り、眠くなったりしますよね(笑)

平井 :そう言うことをわかっていてやるならいいんですけど、知らないでやる人も多いじゃないですか。

川岸 :忙しくて朝食を食べ忘れて、そのまま昼過ぎまでいて、打ち合わせがのびちゃって、13-14 時になってすごくお腹が空いているから糖質がっつり系のもの食べて・・・みたいな感じですよね。あえて、そういう状態をつくりだすのは、僕や平井さんとか変な人しかいないと思うんで・・・(笑)

平井 :確かに(笑)それこそこの前、市販の血糖値の自己検査キットを使って、実際に自分の血糖値を常に測ってみました。今まさに話されていたことが数値でわかります。それでベジファーストを実践してみると、同じものを食べ続けていても血糖値がゆるやかになったりするんです。最近自分の体を通してやってみたりしていて、本に書いてあることって本当だったんだ!とか検証しています。本に書いてあることを、身近な人が自分の体を使って実証していたら、関心を引きますし、説得力も高まるのではないかと思っています。

川岸 :平井さんご自身がイキイキして働いているのが、側から見ていれば伝わりますよね。

平井 :そうなんですよね。健康経営を実践すると生産性が上がると言っている以上、自分自身の生産性を高めなきゃいけないと常に意識していますね。それで、あいつ生産性低いじゃん!ってなったら、健康経営を提唱している人 がダメだと思われてしまうので、そこはいつも頑張んなくちゃいけないなと思 っています(笑)

川岸 :わかります。僕も OFFICE DE YASAI というサービスをやっていて、太れないんですよね。この人、OFFICE DE YASAI やってるのに太いじゃん!ってなったらダメですよね(笑)

平井 :そういう意味でも、自分の体でまず体現するって大事ですよね(笑)

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