導入事例
創業87年目の老舗企業がベンチャーマインドを持ち続けるためにやっていること / プレスマン
■株式会社プレスマンについて プレスマンの2018年は、WordPress、自社メディア、自社ECの領域で、18のプロジェクトに取組み中です。 当社がインターネ …
株式会社ワーク・ライフバランスは、これまで900社以上の企業に対して働き方の見直しコンサルティングを行ってきました。代表の小室氏は、産業競争力会議の民間議員として政府への提言も行うなど、「働き方改革」の第一人者であり、行政・企業からの信頼も厚い。昨今「働き方改革」がかつてないほどに注目を集める中、実際にそれを進めていくための肝はどこにあるのか、お話を伺いました。
■ゲスト(写真右)
株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役 / 小室淑恵氏(以下、小室)
■インタビュアー(写真左)
株式会社KOMPEITO 代表取締役社長 / 川岸亮造(以下、川岸)
川岸: 今回は、株式会社ワークライフバランスの小室さんにお越し頂いてお話いただきます。
小室: すごいですね。トマトですね(笑)
川岸: つい目線が上に行くと思われるんですが、OFFICE DE YASAIのサービスでいつもやらせて頂いているので(笑)
小室: わかりました。よろしくお願いします(笑)
川岸: 小室さんは様々なところでご講演や掲載記事などを拝見しているので、働き方改革を推進していることは存じていますが、実際の事業はどのようなことをされているのでしょうか?
小室: 今一番多いご依頼は、労働時間を削減して業績を上げるコンサルティングです。今まで約900社の企業様に導入していただいたのですが、以前であれば決して問い合わせがなかったようなメディアとか、建設業、不動産業、運輸業からも最近は依頼があります。「働き方改革なんて無理!」と言っていた企業様もかなりスイッチが入っています。
あとは各企業様が社内で使うプログラムを提供しています。例えば、朝、1日の仕事内容をちゃんと組み立てて、夜、それに対してズレがないかを確認する「朝メール」というプログラムなどです。チーム単位で分析ができるので、「企画部であるのに実際に“企画”に割いている時間は8%でした」とかが分かります。移動や会議ばかりで本来やりたいことができてない、ということに気付かせるプログラムです。そうすると本人たちだけで自ら働き方改革が進んでいきます。
また育児や介護からの休業・復帰のプログラムを導入することもあったり、働き方をトータルでサポートするコンサルティングをしている会社です。
川岸: なるほど。では、労働時間が単純に減っているということではなく、中身が変わることによって実際に業績・売上・働くモチベーションを改革できますよ、というコンサルティングを提供しているんですね。
小室: はい、その通りです。
川岸: ちなみに、貴社の事業開始から数年経っていると思うんですが、おそらく創業した頃は、今のように“働き方改革時代”じゃなかったと思います。なぜ、ワークライフバランス社を立ち上げようという考えに至ったのですか?
小室: 私、前職は資生堂にいたのですが、その時は育児休業者の復帰支援プログラムを資生堂の中で社内ベンチャーとして立ち上げ、企業様に販売をしていたんです。当時は、育休を取っても復帰できるという環境をサポートするのが大事だと思っていました。しかし、復帰を支援した方が数年経ったら辞めていたんです。その理由は、戻った職場の長時間労働でした。
復帰からずっと続くのは両立生活なんですよね。例え復帰できても、長時間労働が続けば働き続けることができない。それが育児女性だけかなと思ったら、介護をする男性もとても増えているし、メンタル疾患の方も男女ともに増えています。むしろ、時間に制約なくキャリアを終える人の方が奇跡なんですよね。
育児や介護、あるいは自分の病気とも戦いながらなど、多様な人がいるのに、働き方は20~30年前の「みんな均一」のまま。残業ができない人は正社員じゃない、という風潮が根付き、責任感のある仕事は時間の拘束と共にあるという。企業の考え方が変わらないと、このままでは働ける人がいなくなってしまう、という危機感を持ったのがきっかけです。
働き方改革を専門とする仕事を早くしないと、と起業したのが2006年。翌2007年は団塊の世代が60代になって定年退職をするということで、確実に人手不足が進行することが、人口ピラミッドを見て明らかでした。
最近になって、いろんな方が言いますが、実は何十年も前から人口ピラミッドは変わっていませんからね。誰が見ても予想はできたはずなのに、当時は誰も労働力不足になることに触れなかった。そこにすごく危機感を持ったんです。労働力不足に陥ったとしても、育児や介護をしながら働けるのであれば困らない。だったらその社会を早く作らないといけない、と思いましたね。働き方自体を変えないと、働ける人が増えないという問題意識です。
川岸: 資生堂さんの中で新規事業を立ち上げ、それを進めていく中で違った課題にぶち当たり、そこを解決したい、自分たちで解決しなければと危機感を持ったわけですね。
小室: はい。2007年を目前にした2005年、2006年の話だったので早くやらなきゃと。ただ、大企業の社内ベンチャーでスピード感を持つのはなかなか難しいんですよね。自分で意思決定権をどこまでも持つかっていう。私にとっては差し迫った課題という認識があったのですが、社会は全然そうではありませんでした。
川岸: なるほど。ちなみに、少し余談になるかもしれませんが、居酒屋さんでの話が事業立ち上げのきっかけになった話を記事で拝見したのですが、詳しく聞かせていただいてもよいですか?
小室: そんな細かいところまで読んでいただいて、ありがとうございます(笑)
当時、事業として黒字化する勝算なんて全く無くて。それでも「本当にやりたい仕事ってなんだ」ということを、創業メンバーの私と大塚の女性2人で話し合いました。どちらもお酒は飲めないんですけど、その日空いている店が居酒屋しかなくて(笑)互いに想いを語っていたら、そのまま「起業だ!」っていう流れになったんです。その場にはペン一本と箸袋しかなかったので、箸袋の裏に、初年度の事業はこうして、2年目にこの事業をやって、3年目にこういう事業をしたら「3年でちょっと黒字になるじゃん!」と、話をしていたんです(笑)でも実際に蓋を開けてみたら初年度から黒字になっていました。
川岸: 実はそこにちょっと、共感した部分があって。僕にも共同創業者がいるんですが、前職の同じ会社で働いていた時に「起業しようぜ」となった時、僕らも居酒屋にいて。僕らは飲んでたんですけどね(笑)飲みながらパワポいじったりしていて、盛り上がりますよね。
小室: わかります(笑)
ただ、11年前に起業した時のニーズは、主に女性の育児支援の手伝いに関する依頼だったので、ワークライフバランスは育児女性のものというイメージでした。今、私たちがやっている”男性の働き方こそ変えないと”という考えは、当時はまだビジネスになっていなかったですね。
川岸: ではなぜそれが今、企業や社会全体が取り組むべき課題と認識され「働き方改革」として推進されるようになったのでしょうか?
小室: 人口を見れば明らかです。日本は今の出生率でいくと、2100年には現人口の4割になります。そのくらいの人口で成り立つ国はたくさんあるので、人口が4割になることは問題じゃないんです。
注目すべきは、4割の人口になった時の41%が、高齢者になるということです。41%が高齢者だと、当然子供の人口もあるので、いわゆる生産年齢人口と呼ばれる人は20〜30%となります。20〜30%の人で、70%の人を支える社会というのは、基本的には財政破綻の状態です。
これを変えるために、私たちは「未来の労働力」を作らなきゃいけないんです。子育てがしやすくなければならないし、且つ、子育てをしている人が働ける社会でなければいけないんです。
川岸: このままでは労働人口が減る一方だと。
小室: そうなんです。もし、出生率2.07くらいになったとすると、2100年で現在の8割くらいの人口に留まります。且つ高齢者率が27%くらいで上げ止まるんです。ちなみに今は25〜26%です。これが実現できれば、かなり成熟した良い国の枠に入ることができます。成熟した良い国になるのか、人口減且つ労働力減で転がり落ちるのかは、今すぐに手を打たなければ2100年を救うことができない。衰退の一途をたどるしかなくなります。
これは人口ピラミッドを見れば明らかです。政治家なら、本当は何十年も前に気付かなければいけない話です。ただ、どんなに政治家がやろうと言っても、企業で実態を作らなければ変わらない。その実態作りを政策にすることで、短期間で成果を上げた企業が損をしない。このようにどちらも並行してやらなければ実現できません。
もうタイムリミットが迫っています。あと2年程で団塊ジュニア世代の女性の出産期が終わってしまいます。すると出生率は上がっても、出産数は増えません。母体数が激減してしまうわけですから。人口の母体が多い団塊世代が出産期にいるのは、最大であと1〜2年なんです。そのうちに、しっかり働き方改革ができて、両立できる社会にしなきゃいけないと思います。
川岸: 官民が連携して早急に取り組まなければ、国全体の労働力・パワーが保てなくなるのですね。それぞれが自分ゴトとして問題意識を持って対処することが重要ですね。
冒頭のお話で、これまで働き方改革に着手できるイメージがあまりなかった業種からも依頼が増えているとのことでしたが、「仕事と何か」という両立支援ではなく、フルタイムで働いている方々への改革については、いかがでしょうか?
小室: 企業単位で考えると、お客様に商品・サービスが売れなければ、ビジネスは成り立たないわけですが、今の時代に売れるサービスが何かと言ったら、「高付加価値」なサービスです。今は社会が「高付加価値」を消費する社会になってきていると言えます。もう物は溢れかえっていてますからね。
では、高付加価値を生み出せる組織とはどんな組織かというと、従業員が一律に24時間同じスタイルで働く会社ではないんです。いかに考え方の違う人たちが組織の中に混在して、その人たちが対等に語り合うことで化学反応が起き、思ってもみなかったブルーオーシャンを見つけることができるか。新たな付加価値を、違う価値観の人同士が交わることで生み出す組織でないと今後は勝てない。
このようなスタンスや考えに切り替えないと、過去と同じ商品・サービスを売り続けることになります。しかし、昔みたいに売れないわけです。仮に価格を下げて売上高は上がるかもしれないけれど、利益は上がらない。日本はここ20年、そういう競争の中に入っていると思います。この状態から切り替えるためにも、組織の中に多様な人が、特に意思決定層に多様な人が存在することがビジネスの面でも重要かと思います。
川岸: 今までの働き方・時間の使い方では、勝てる商材・サービスが作れなくなってきた。時代に合わせて新しい価値を生み出すには、会社が変わらなければならないということですね。
労働時間ひとつとっても、社会の流れでは効率化を図って短縮することが大きな課題とされていますが、多様化という視点で見たら、もっと働きたいと思っている人もいると思います。一概に労働時間を短縮するのでは、働きたいと思う人にとっては、やる気を削ぐ形になってしまう。人それぞれいろいろな考え方がありますよね。具体的にはどうやって多様性を受け入れて取り組んでいくのでしょうか?
小室: 私たちがコンサルに入る際には、「労働時間はこうしましょう。こうあるべきです。」というような指導は一切ありません。コーチングの手法を徹底的に取り入れます。私たちから指摘するのではなく、本人たちに発見させて進めていきます。
チームの中には、今おっしゃられたように様々な考えの人がいるので、チーム毎にディスカッションしてもらいます。お互いに話し合う中で、大事なことに気付いてもらうのです。その光景を見続けて気付きましたが、労働時間が長いことに悩んでいると思いきや、議論のテーマになるのは「成長したい」「成果を出したい」「お金がほしい」のいずれかなんです。
何のために働きたいか話し合うと、「成長したい」と答えが出る。「長時間労働って果たして成長できるんだっけ?」と疑問が生まれる。「具体的にどう成長したい?」とチームメイトに聞かれた人が、「このスキルを身につけたい」と答える。それはむしろ、「講座を受けに行った方がいいよね、じゃあ明日は定時に帰らないと。」と講座に申し込んで、成長するためには学びが必要だったって気付いたりします。
また、「評価されたい、ほめられたい」と考えている人の場合は、企業が労働時間の長い人を評価すると思い込んでいるんです。今は国が労働時間の上限を設け、各企業に対してのコンプライアンスも厳しくなっている。むしろ労働時間の長い人が全く評価されなくなっていますよね。「時間当たりの生産性を見ているから、長時間労働は評価が落ちるよ」ということをちゃんと伝えてあげることが大切です。
「お金がほしい」については、事実、生活残業という形で自分の生活を設計していた人たちがたくさんいるはずなので、自分たちでどんなインセンティブ制度にするのかを考えるといいと思います。残業時間を減らして浮いたお金を、コスト削減により貢献した人に配分していくのが良いですね。ある企業さんは、年間16%くらい残業が減ったので、約8,000万コストが浮きました。その8,000万を約1,000人の従業員で分配したので1人あたり8万戻ってくる計算です。さらに労働時間を短くした部署には、プラス6万ほどの報奨金が入ったので、計15〜16万年収がアップしたという事例もありました。残業代で稼いでいたものを、残業を減らして筋肉質にしたことで結果、収入も生活も潤うという。
このように、チーム内がどのような問題を抱えているか、腹を割ってディスカッションすることがまずは大事ですね。
川岸: なるほど、おっしゃる通りですね。今は働き方改革が一種のブームになってきていると思うので積極的に取り組む企業も多いと思うのですが、これをブームで終わらせないためにはどうしていけばよいのでしょうか?
小室: 時間を短くすることだけに目を向けて焦る企業さんは、必ずそのあとリバウンドしています。従業員が何を理由に残業をするか、本質的な原因を探らず、電気を消したり鍵を閉めたり、一方的に締め出しているので被害者意識を持ってしまう。やりたいのにやらせてもらえない。自由でなくなった、という仕事の成果が出せない環境に追い込まれてしまうので、最初に定量的な数字を追い求めることをしない方がいいんです。
そして、ぜひ注目していただきたいのは定性的な変化です。残業の最大の要因って、どの企業さんも社員間のコミュニケーション不足なんですよね。私たちは「関係性の質」と呼んでいるんですが、「関係性の質」を上げることを第一目的にして、そこを通過していく段階で必然的に「結果の質」に結びついていきます。コンサルティングしていると、だいたい4カ月目くらいに「感受性が良くなってきて、豊かになってきたね」とか、「最近家族との関係性がいいね」、「愚痴が減ったね」とか。顔色が良くなり、風邪をひく回数が少減ったなど、定性的な変化が現れはじめます。この状態を保ち、対話によって残業の原因をチームで潰していく。そうするとだいたい8カ月目で、部署も巻き込んで大きな「働き方改革」ができてきています。すると、定量的な変化もグっと20〜30%減ってくるってことが起きます。
川岸: いきなり時間で「定量的に下げましょう」っていう運動をするのではなくて、まずは仕事の中身を見つめ直して、コミュニケーションの取り方から始めるんですね。取り組みから約1年、成果が出たところで管理者や経営層が動くことがカギなんですね。
小室: そうですね。短期的な施策で改善しようとするから無理が生じるんですよね。20〜30年続いた働き方を変えるわけですから、ゆとりのあるタイムスパンでスケジュールを引いていくっていうことが大事かなと思います。
川岸: そのためにも、コミュニケーションをしっかり取らなければいけないってことですね。では最後になりますが、マストで“こんなことから始めたら良い”ということがあれば教えてください。
小室: 今、「長い期間かけてやらなきゃダメだよ」と話をしたんですけど、その間、経営層が黙って見守っていればいいかというとそうではなくて、経営層は自分たちの意識が変わったっていうことを、しつこいくらい発信しないとだめです。「働き方改革」の取り組みをしているチームの皆さんは、いつか自分たちがやっていることについて、はしごを外されるんじゃないかと不安を感じているんです。現状維持をしていれば楽ですから。そこからやり方をチェンジしていくには、その「チェンジは正しいんだよ、その方向で続けてね」って背中を押し続けることが重要です。
一方、経営層の人たちは、これが経営戦略なんだということを、社内に向かって発信し続けることですね。できれば、特に残業の多いチームに経営層が向き合い、削減に対して自らも「コミットするから」って言ってあげるのがいいと思います。何が問題で、自分は経営者としてどこと交渉してきたらチームのためになるのか。
そのような動きを取りつつ、実際にいくつかのチームが変化していく様子を社内に見せる。これを同時にやっていかないと急には変わらないものです。地道にやっていくことが大事かなと。できれば評価形態も変え、労働時間が短いチームの管理職を最も評価する。現場の事業部長や課長、部長クラスの人たちに対して、まず時間当たりの生産性を評価基準の中に入れていくことが大切になると思っています。
川岸: ありがとうございます。経営層がしつこく発信し続ける姿勢、これを必ず持たなければいけないということですね。
そういった上司・部下のコミュニケーションも含め、OFFICE DE YASAIが改めて社員間コミュニケーション活性の一助として、「働き方改革」の確実な実行に少しでも貢献できればと今日のお話を通じて思いました。
本日はありがとうございました。
小室: ありがとうございました。
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