福利厚生制度
障がい者雇用における定着率の課題とは?高めるポイントを解説
法定雇用率の引き上げもあり、障がい者雇用を行う企業が増えています。しかし、実際に障がい者を雇用してみたものの「職場になじめずにすぐに辞めてしまう…」「定着率を高 …
農福連携
-2025.03.25.Tue
障がい者雇用を進めたいものの、「すぐに退職してしまう」「定着率が低い……」とお悩みの企業は多いのではないでしょうか。障がい者雇用を持続的に推進するには、障がい者雇用における退職理由について理解することが大切です。
今回は、障がい者雇用で多い退職理由、継続して働いてもらうためのポイントについて解説します。
目次
「障がい者雇用をしたもののすぐに退職してしまう……」とお悩みの企業は多いのではないでしょうか。障がい者が職場を離れる理由はさまざまですが、共通する退職理由もあります。それを理解することは、障がいを持つ方の定着率を向上させるのに役立つことでしょう。ここでは、障がい者雇用において多い退職理由を紹介します。
人間関係の悩みは、障がい者雇用において特に多い退職理由の一つです。
障がいを持つ方は、コミュニケーションが苦手な方が多くいます。また、一般社員が持つ仕事や社会的なスキルとの違いから、同僚や上司との間に壁ができてしまうことがあります。
例えば、コミュニケーション不足による誤解が原因で、職場で孤立したり、居場所を感じられなくなったりすることがあります。そうした環境は、障がいを持つ方にとっては大きなストレスとなるでしょう。結果、職場にいづらくなってしまい、最終的に退職を決断してしまうのです。
人間関係の悩みを生じさせないためには、研修を通じて従業員の意識を高めるとともに、障がい者の特性に合わせた適切なコミュニケーションの工夫が必要です。
現場において、障がいに対する適切な配慮がなされないことも、障がい者の退職につながる要因です。
障がいを持つ方は一人ひとりで障がい特性が異なります。障がい者の方が円滑に業務を進めるためには、その特性を理解したうえで適切な配慮が行われなければいけません。そうした配慮がなければ、障がい者を持つ方は業務の遂行が難しくなり、結果として退職を決断することになってしまいます。
例えば、視覚障がいがある方の場合、文章のマニュアルやメールの指示だけでは内容を確認できないことがあります。そのため、視覚に依存しないような指示方法や音声マニュアルを導入するなどの取り組みが必要となります。知的障がいを持つ方であれば、マニュアルにイラストや写真を盛り込むことで、視覚的にイメージしやすくするといった工夫も良いでしょう。
障がいを持つ方の退職理由として「条件が合わない」こともよく挙げられます。ここで言う条件とは、職場の労働条件や賃金などです。
障がいを持つ方の障がい特性は人それぞれで違いがあります。例えば、精神障がいがあることからフルタイム勤務が難しい、通院があるので特定の時間帯に働けないといった人もいるでしょう。しかし、企業の規定や職場の習慣などにより、勤務時間を柔軟に変更できないという場合もあります。そのような障がい特性と職場の要求にミスマッチがあると、障がいを持つ方にとって「自分に合わない職場」となり、退職につながるのです。
定着率を高めるには、雇用する障がい者の状況に応じて、柔軟な勤務体系の導入や環境整備を検討することが重要です。
体調不良も、障がいを持つ方の退職理由として多く挙げられる要因の一つです。
特に精神障がいを持つ方は、業務のプレッシャーや人間関係のストレスが体調に大きく影響することがあります。職場でのわずかな誤解や環境の変化がストレスとなり、それが積み重なることで症状が悪化し、出勤が困難になったり、最終的に退職を余儀なくされたりするケースも少なくありません。
また、身体障がいを持つ方の場合、長時間の立ち仕事や移動が多い業務が負担となり、健康状態の悪化につながることもあります。職場の環境が整備されていないことで、通勤や業務遂行が難しくなる場合も考えられます。
障がい者社員一人ひとりの特性を確認し、定期的に相談を受けたり、必要に応じて業務負荷を調整したりといった取り組みが必要です。
障がいを持つ方が職場に定着するには、働きやすい環境づくりが欠かせません。人間関係・業務内容・職場環境・健康管理などの要因が影響し、適切な配慮がないと退職につながることもあります。
ここでは、障がいを持つ方が安心して長く働けるためのポイントを紹介します。
まずは、コミュニケーションを取りやすい環境を整えましょう。
前述の通り、障がいを持つ方の退職理由として人間関係が多く挙げられています。職場において、明確でオープンなコミュニケーションが取れるようになれば、障がいを持つ方も自分の意見を伝えたり、悩みを相談したりしやすくなります。その結果、「障がいがあっても働きやすい職場」になるでしょう。
・研修などで一般社員の理解を深める
・定期的に意見交換の機会を設ける
こういった取り組みを行うことで、コミュニケーションが活性化され、定着率向上を実現しやすくなります。
障がいを持つ社員が仕事にやりがいや達成感を得られるようにすることは、定着率向上に大きく貢献します。そのためには、一人ひとりの障がい特性やスキル、個性、興味に合った業務を割り振ることが大切です。
具体的な取り組みとしては、以下のような点が挙げられます。
・障がい者社員の特性に合った業務を創出・切り出す
・適切な目標を設定し、達成度が分かる評価基準を設ける
目標が明確で評価が分かりやすい環境を整えることで、モチベーションが高まり、企業への愛着も生まれやすくなります。結果的に、障がいを持つ社員の長期的な雇用実現につながることでしょう。
障がいの種類やその程度に配慮して、適切な労働環境を用意することも、定着率向上において重要なポイントです。
物理的な環境や作業プロセスが適切に調整されていれば、ストレスが軽減されて障がいを持つ社員にとって働きやすい職場となります。例えば、以下のような取り組みを検討してみましょう。
・精神障がい者に対してフレキシブルな勤務スケジュールを提案する
・知的障がい者に向けて、視覚的に分かるマニュアルを作成する
・業務の流れをホワイトボードなどにフローチャートで分かりやすく示す
こうした労働環境への配慮により、障がいを持つ社員は自身の能力を最大限に発揮しやすくなり、安定した長期雇用へとつながっていきます。
障がいを持つ社員の定着率向上を目指すなら、調子が悪くなった際に、休みを取りやすい環境を用意することも検討しましょう。
障がいを持つ方は、さまざまなシーンでストレスを感じることがあり、それが心身の健康を乱すきっかけになります。休みを取りにくい環境だと我慢してしまって、長期休暇や退職につながってしまう可能性があります。
・体調が悪いときは柔軟に休みを取れる
・通院が必要であれば半休を取れる
・リモートワークや時短勤務の選択肢を用意する
企業側にこうした柔軟な姿勢があれば、障がいを持つ方も無理することなく、長期的かつ健康的に働けるようになります。
障がいを持つ方の定着率について、まずは以下の業種別の表をご覧ください。
業種 | 1年後定着率 |
金融・保険業 | 85.1% |
複合サービス業 | 68.4% |
研究・専門技術サービス業 | 67.8% |
宿泊・飲食サービス業 | 47.8% |
建設業 | 44.8% |
農業・林業 | 36.8% |
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の就業状況等に関する調査研究」
この表から、金融・保険業は定着率が圧倒的に高いことが分かります。次いで複合サービス業、研究・専門技術サービス業と続きます。
業種ごとに、労働環境や社員に求められるスキルは異なります。そのため、上記の表のように、社員の定着率・離職率も大きな違いがあるものです。特に、障がい者雇用においては、業種ごとの特性を踏まえたうえで障がいを持つ社員一人ひとりの特性を理解し、適切なサポートを行うことが大切です。
また、離職に至る理由を把握して、それに合わせた改善策を実施することも重要です。
前述の表からも分かるように、もっとも離職率が高い業種は「農業・林業」とされています。離職率が高い理由として、以下のような要因が挙げられます。
・体力的な負担が大きい(特に炎天下での作業や長時間の肉体労働)
・季節による繁閑の差が大きい(仕事量が安定せず、収入も変動しやすい)
・労働環境の厳しさ(天候や自然環境に左右される)
・雇用の流動性が高い(短期間の雇用が多く、安定しづらい)
これらの要因を見てみると、人間関係や業務内容そのものに課題があるわけではなく、環境や雇用条件が大きな要因と考えられます。そのため、障がいを持つ方に継続して働いてもらうには、作業の細分化や適切なサポート、年間を通して働ける環境の整備が必要だといえます。
また、離職率が高いということは人材不足が慢性化していることの裏返しでもあります。改善や対策を進めることで、むしろ農業・林業は、障がい者雇用の可能性に広がりがある業種となるでしょう。
農業分野においていま、「農福連携型障がい者雇用支援サービス」が注目されています。農福連携は、農業分野の人材不足と障がい者の安定雇用を両立でき、農業者・障がい者・企業の三者にとってメリットのある仕組みです。
ここでは、農福連携型障がい者雇用支援サービスについて解説します。
障がい者雇用における農業分野の就労形態には、大きく分けて「農福連携型」と「農園型」の2つがあります。それぞれの特徴と違いは以下の通りです。
・農福連携型:人手不足の農業者と就労意欲のある障がい者をマッチングして、農業に従事する
・農園型:農園を運営する業者から借り受けた農園に企業から障がい者を派遣する
似たような形態ではありますが、導入・運用コストを抑えやすいなど、農福連携型のほうがメリットは多いです。
農福連携型には、農業者・障がい者・企業の三者にメリットがあります。
立場 | メリット |
農業者 | ・慢性的な人手不足の解消・農地の活用や維持が可能になる |
障がい者 | ・シンプルな作業が多く定着しやすい・細分化された業務で働きやすい・地域とのつながりを持てる |
企業 | ・障害者雇用率の達成につながる・低コストにて導入できる |
こうしたメリットがあることから、農福連携型は多くの企業で導入が進んでいます。
農福連携型の導入を検討しているなら「やさいサポーターズ」をご検討ください。農福連携と健康経営・福利厚生が掛け合わさったサービスで、企業にとってより魅力的な選択肢といえます。
「やさいサポーターズ」はJAグループの農協観光と食の福利厚生サービス「OFFICE DE YASAI」が共同で提供する、農福連携型の障がい者雇用支援サービスです。以下のような特長やメリットにより、農業業種はもちろん全業種を含めても類を見ない定着率92%※という「持続可能な障がい者雇用」を実現しています。
※令和5年4月〜令和6年3月までの実績
・障がい者の安定雇用:年間を通じて農作業を提供できる仕組みがあり、安定して障がい者の雇用機会を創出できます。
・日本の農業の活性化:人手不足の農業分野に障がい者をマッチングさせることで、農業の活性化を実現します。
・健康経営と福利厚生の強化:生産された新鮮な野菜を活用し、「OFFICE DE YASAI」にて健康社食としてオフィスにお届けします。
・定着率の向上:農福ポートという活動拠点で専門スタッフが寄り添い、障がい者にとって働きやすい環境をサポートすることで、定着率向上を実現します。
・低コストで導入できる:農園型と比較すると、初期投資やランニングコストを抑えられるので、負担を軽減できます。
こうした特長・メリット以外にも「やさいサポーターズ」は、農業分野の人材不足解消や障がい者雇用の創出、日本の農業支援などを通して、企業のCSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)経営の推進にも寄与できます。
障がい者雇用をお考えでしたら、ぜひ「やさいサポーターズ」の導入をご検討ください。
今回は、障がい者雇用でよくある退職理由や、長く働いてもらうためのポイントについて解説しました。
障がいを持つ社員が退職を決断する理由としてもっとも多いのは、人間関係・現場の配慮・条件・体調などです。障がいを持つ方の定着率を向上させるには、これらの課題を解決することが必要です。本記事を参考に必要な施策を行って、障がい者雇用を促進していきましょう。
障がい者雇用をスムーズに進めたい、定着率を高めたいとお考えでしたら、農福連携✕健康経営の「やさいサポーターズ」の導入をご検討ください。
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