農福連携

 公開:2025.04.25

 更新:2025.04.29

合理的配慮とは?具体例や範囲、提供までの流れを詳しく解説

障がいのある方が安心して働き続けられる環境づくりは、今やすべての企業に求められる時代となりました。特に2024年4月の法改正により、民間企業にも「合理的配慮」の提供が法的義務として課され、企業側の理解と対応がますます重要になっています。

しかし、合理的配慮とは具体的にどのような支援を指すのか、どこまで対応すべきか分からず、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では、合理的配慮の基本から、実際の対応例、さらには実務に役立つ支援サービスまで詳しく解説します。

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合理的配慮とは

合理的配慮とは、障がいのある人が他の人と平等に社会参加できるよう、不利益を受けないために行われる調整や支援のことを指します。

日本では、2013年に制定・2016年に施行された「障害者差別解消法」に基づき、行政機関や民間事業者に対して、障がい者に対する合理的配慮の提供が求められてきました。

さらに2024年4月の法改正により、民間企業を含む全ての事業者に対して、合理的配慮の提供が「法的義務化」され、対応の重要性が一層高まっています。

障害者差別解消法とは

障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は、障がいを理由とする不当な差別をなくし、共生社会の実現を目指すための法律です。

この法律の主な目的は、以下の2点です。

・不当な差別的取扱いの禁止

・合理的配慮の提供の義務化

改正法では、これまで「配慮をするよう努めること」とされていた民間企業の立場が見直され、明確に「提供しなければならない」と義務化されました。以下で、それぞれについてさらに解説します。

不当な差別的取扱いの禁止

「不当な差別的取扱い」とは、障がいがあることを理由に、本来受けられるはずのサービスや機会から排除する行為を指します。

・障がい者であることを理由に、面接や入社を断る

・車いすユーザーに対して、出入口の利用を制限する

・視覚障がい者に対して、情報提供を怠る

こうした行為は、障害者差別解消法で明確に禁止されており、行政機関・民間事業者ともに対応が求められます。

合理的配慮の提供

合理的配慮とは、「障がいのある本人から要望があった場合に、過重な負担にならない範囲で、必要な調整や支援を行うこと」を意味します。

・聴覚障がい者に対して筆談や手話通訳を行う

・精神障がい者に対して、静かな場所で面談を実施する

・通勤時間帯をずらすといった柔軟な勤務制度の導入

重要なのは「一律の対応ではなく、本人の状況に応じた柔軟な対応」が求められるという点です。

対象となる障がい者

合理的配慮の提供対象となるのは、以下のような障がいのある人です。

・身体障がい(視覚・聴覚・肢体不自由など)

・知的障がい

・精神障がい(うつ病、統合失調症など)

・発達障がい(自閉症スペクトラム、ADHDなど)

・その他、難病に起因する障がいが対象になることも

法的には、障がい者手帳の有無にかかわらず、「日常生活や社会参加において制約がある人」も合理的配慮の対象となります。

対象となる事業者

合理的配慮の提供が義務化される対象は、以下のとおりです。

・行政機関・公的機関(市区町村、役所、学校など)

・民間事業者全般(企業、店舗、医療機関、教育機関など)

2024年4月の改正により、民間企業においても義務化がスタートしました。

「障がい者に対して合理的配慮をしなければならない」ことが明文化されたことにより、対応しない場合には法令違反とみなされてしまいます。

合理的配慮の例

合理的配慮の内容は、障がいの種類や個々の状況によって大きく異なります。ここでは、政府広報や内閣府の資料などに基づき、3つの観点から実際に提供される合理的配慮の具体例を紹介します。

物理的環境への合理的配慮

障がい者が安全かつ円滑に移動・行動できるよう、施設や設備の調整・整備を行うことが求められます。

・車いす利用者のために、建物の段差をスロープなどで補助

・視覚障がい者向けに音声案内の設置や筆談を活用

・会議室やトイレの配置を、移動しやすい位置に変更

こうした配慮は「特別扱い」ではなく、誰もが使いやすい環境を整える「ユニバーサルデザイン」の一環ともいえます。

意思疎通への合理的配慮

聴覚障がい・言語障がい・発達障がいなど、情報の受け取りや伝達に制約がある人に対する配慮が必要です。

・聴覚障がい者に対して筆談や音声認識アプリを用いた対応

・発達障がいのある人への図解やチェックリストによる説明補助

・読み書きに困難がある人へ、口頭や画像を中心とした情報の提供

意思疎通に関する合理的配慮は、情報格差の解消と、安心して対話できる環境づくりに直結します。

ルールや慣行の柔軟な変更

業務上のルールや運用慣行を、障がいのある人の状況に応じて柔軟に変更することも合理的配慮の一つです。

・精神障がい者に対して、通勤ラッシュを避けるための時差出勤の許可

・医療的ケアが必要な場合、通院のための中抜けや時間調整の許可

・発達障がい者に対して、マルチタスクではなく単一業務に限定

・面接時に緊張しやすい方へ、事前質問の提示や面接時間の短縮

これらの配慮は「障がいに合わせた働き方」ではなく、「その人が最も力を発揮できる働き方」を引き出すための工夫ともいえます。

合理的配慮の範囲

合理的配慮は「できることは全てやる」という意味ではなく、現実的に提供可能な範囲で調整することが原則です。つまり、事業者にとっての負担が過大すぎる場合には、その配慮は「合理的」とはみなされません。

ここでは、合理的配慮と認められる範囲の考え方について解説します。

3つの条件

内閣府のガイドラインでは、合理的配慮として認められるために、次の3つの条件を満たす必要があると示されています。

・本人からの意思表明があること(求められていること):配慮は原則として、障がい者本人からの申し出や希望に基づいて行われます。

・社会的障壁の存在が明らかであること:障がいのある人が、現に困難を感じている状況(制度・設備・態度など)があることが前提です。

・過重な負担でないこと:提供する側にとって、財政的・物理的・人的・運営的に極端な負担がかからないことが求められます。

過重な負担かの判断

合理的配慮を行うにあたって、それが過重な負担にあたるかどうかは、個別の状況に応じて総合的に判断されます。

・事業者の規模や財政状況(中小企業と大企業では異なる)

・配慮に要する費用や労力

・業務運営上の支障の程度

・利用者全体への影響の大きさ

・同様の配慮をすでに行っているかなどの実績

例えば、1人のために高額な設備投資が必要で、事業継続に影響を及ぼすようなケースでは「過重な負担」に該当する可能性があります。

反対に、配慮内容が簡単な工夫や調整で済む場合には、たとえ申し出が少数でも対応が求められるのが原則です。

合理的配慮を提供しなかった場合の罰則は?

障がいのある人からの申し出に対し、合理的配慮を提供しないことは、障害者差別解消法に違反する可能性があります。ただし、合理的配慮の不提供そのものに対して、直接の刑事罰や罰金が科されることはありません。

しかし、事業者が合理的配慮を怠った結果として、以下のような行政的・社会的・法的リスクが生じるおそれがあります。

・行政機関(所管省庁)による助言・指導・勧告(法第12条)

・勧告を受けても是正されない場合、企業名の公表

・不適切な対応による民事訴訟や損害賠償請求のリスク

また、報告義務を怠った場合には、法的な罰則が科されることがあります。

障害者差別解消法第26条では「第12条の規定による報告をせず、または虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処する。」とあります。

つまり、「合理的配慮をしなかったこと」に対して直接罰則があるのではなく、行政からの調査や報告要請への不誠実な対応に対しては、法的な処分が科される可能性があるという点がポイントです。加えて、例えば採用時に合理的配慮がされなかったことで不採用となったケースや、在職中の不適切な対応により退職に至ったケースでは、企業側が損害賠償責任を問われるケースもあるようです。

このようなことから、トラブルを未然に防ぐという観点からも、誠実な対応と体制整備が求められます。

合理的配慮を提供するまでの流れ・ステップ

合理的配慮は「申し出があったら即対応」という単発の動きではなく、日常的な環境整備や対話の積み重ねによって実現されるプロセスです。

ここでは、企業が合理的配慮を円滑に提供するための基本的なステップを解説します。

環境整備

まず大切なのは、誰もが「声を上げやすい」雰囲気や体制を整えておくことです。

・バリアフリー設備や視認性の高い掲示物の導入

・社内の障がい理解に関する研修・啓発の実施

・人事・管理部門による受け入れ体制の明確化

これにより、障がいのある方が不安なく「配慮してほしい」と申し出やすい環境が生まれます。

情報公開

配慮の窓口や考え方を社内外に分かりやすく示すことも大切です。

・採用ページや社内報に「合理的配慮に関する方針」を掲載

・障がいのある方や支援機関向けに、相談窓口の情報を周知

・社内の対応事例を共有し、理解を促進

こうした情報を公開することによって、障がい者本人はもちろん、同僚や支援者との信頼関係づくりにもつながります。

意思表明・声かけ

合理的配慮は、原則として「本人の意思表明」に基づいて行われます。しかし、本人が自ら申し出るのが難しいこともあるため、企業側の丁寧な声かけも重要です。

・採用面接や入社時の面談で「困っていることはありますか?」と確認

・定期面談などで配慮ニーズの変化をヒアリング

・第三者(家族や支援員)との連携による情報共有

こうした声かけは、信頼関係の土台となり、安心して働ける環境づくりに不可欠です。

対話

合理的配慮は、障がい者と企業どちらかの都合だけが優先されるものではありません。そのため、現実的で建設的なすり合わせをするための対話も必要です。

・「どこで困っているか」「どのように対応すれば働きやすいか」をヒアリング

・事業上の制約や、他社員とのバランスも含めて話し合う

・配慮の実現可能性を共有し、双方で納得できる形に調整

このプロセスを丁寧に行うことで、一方通行ではない「相互理解」の合理的配慮が実現します。

事例の共有・検証・改善

合理的配慮を実施した後は、継続的な見直しと組織内への共有、そして改善が大切です。

・提供した配慮が実際に役立っているかの確認

・社内での好事例や反省点の共有

・制度やマニュアルのアップデート

合理的配慮は一度きりの対応ではなく、柔軟に見直し続ける姿勢が信頼構築と組織全体の成熟につながります。

障がい者雇用なら「やさいサポーターズ」

合理的配慮の提供は、障がいのある方が安心して働き続けるために欠かせない要素です。しかし実際には、「どこまで配慮すべきか判断が難しい」「職場に受け入れの余裕がない」といった悩みを抱える企業も少なくありません。

そうした中、定着率の高い障がい者雇用支援サービスとして注目されているのが「やさいサポーターズ」です。

やさいサポーターズは、JAグループの農協観光と健康社食サービス「OFFICE DE YASAI」が共同で提供する、農福連携型の障がい者雇用支援モデルです。障がいのある方に農作業の仕事を提供し、企業にはその野菜を福利厚生として届けるという仕組みを通じて、雇用と健康経営の両立を実現しています。

「やさいサポーターズ」には以下のような魅力があります。

・個別の特性に配慮した就労機会:農作業はルーティン業務が中心で、障がい特性に合った業務設計がしやすい

・定着支援の体制が充実:専門スタッフが就労前後をフォローし、合理的配慮に関する相談や調整にも対応

・農業と福祉のマッチング:人手不足の農業分野と、働きたい障がい者をつなげ、双方にとってメリットのある仕組み

・福利厚生の向上:収穫された野菜はオフィスに届けられ、社員の健康づくりにも貢献

このような特徴から「やさいサポーターズ」は、合理的配慮をしながら、障がい者雇用や定着率向上を実現できます。さらに、企業価値や従業員満足度の向上にも寄与するサービスです。

合理的配慮に対応した障がい者雇用を持続的に・安心して進めたいとお考えであれば、ぜひ「やさいサポーターズ」の導入をご検討ください。

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まとめ

今回は、合理的配慮について解説しました。

合理的配慮は、障がいのある人が社会の中で他者と同様に暮らし、働くために必要な配慮です。2024年から民間企業にもその提供が義務化されています。本記事でも解説したように、障がい者を雇用するだけでなく、合理的配慮をしたうえで働きやすい環境を整えていくことがこれから重要となっています。

とはいえ、現場では「どんな配慮が必要か分からない」「どう支援すれば良いのか迷う」といった声も少なくないのではないでしょうか。そうした課題を解決し、定着まで見据えた障がい者雇用を実現したいとお考えなら、「やさいサポーターズ」がおすすめです。ぜひ、導入をご検討ください。

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