福利厚生制度
障がい者雇用における定着率の課題とは?高めるポイントを解説
法定雇用率の引き上げもあり、障がい者雇用を行う企業が増えています。しかし、実際に障がい者を雇用してみたものの「職場になじめずにすぐに辞めてしまう…」「定着率を高 …
農福連携
-2025.03.25.Tue
障害者雇用率を達成するために、知的障がい者の雇用を検討している企業は多いのではないでしょうか。しかし、ノウハウがないと「雇用後、どのような業務を割り当てるべきか分からない」「定着率を高めるにはどうしたら良いのか」と疑問が出てくるものです。
今回は、知的障がいの概要、業種ごとの雇用状況、雇用するうえでのポイントや注意点について解説します。
目次
知的障がいとは、生まれつきまたは発達期(おおむね18歳まで)までに生じた知的機能の障がいにより、典型的な発達と比べて認知能力の発達に遅れがある状態を指します。知的障がいの方は認知能力の遅れの影響により、日常生活や社会生活、学習・理解や問題解決能力などにおいて支障が生じやすくなります。
医学的には、知的機能の程度とともに原因となる疾患の有無を調べて診断されます。ただし、知的機能の程度が必ずしも日常生活能力とイコールになるわけではありません。1人ひとりで適応能力には違いがあり、必要な支援も異なります。そのため、知的障がい者の生活・社会参加に対する支援として、以下の3つの領域が重視されています。
・概念的領域(読み書き、計算、時間の管理、問題解決など)
・社会的領域(対人関係、コミュニケーション、ルールの理解など)
・実用的領域(日常生活の自立、仕事のスキル、安全管理など)
知的障がいの程度は、厚生労働省の「知的障害児(者)基礎調査:調査の結果」によると以下の4つに分類されます。それぞれの分類で、支援の必要度が異なります。
分類 | 生活面 | 就労・活動面 |
軽度知的障がい | 基本的な生活習慣は自立していますが、学習面や社会的な適応において支援や配慮が求められることがあります。 | 通常の学校教育や職業訓練により、ある程度独立して生活や就労が可能です。 |
中度知的障がい | 基本的な日常生活は部分的に自立していますが、社会的な活動や複雑な作業には支援が必要です。 | 日常生活の一部の支援が必要であり、簡単な作業や活動に従事することが可能です。 |
重度知的障がい | 身の回りのことに多くの支援が必要で、簡単な意思疎通は可能ですが、複雑なコミュニケーションや判断は難しいことが多いです。 | 詳細な日常生活の支援と、高度に構造化された環境での特定の活動が必要です。 |
最重度知的障がい | 日常生活全般にわたり常時の支援が必要で、意思疎通や基本的な生活動作にも全面的な介助が求められます。 | 常時的な介助と全面的なケアが必要で、非常に限られた範囲の活動にのみ参加可能です。 |
障がい者雇用を進めるうえでは、企業として、まずこの分類を把握しておくことが大切です。
ただしこの分類は、知能指数のみを基準にしたものでしかありません。実際には個々の生活能力、社会適応能力によって必要な支援は異なります。そのため、実際に障がい者雇用を行うのであれば、1人ひとりの特性を見極め、適切な支援・環境整備を行うことが大切です。
厚生労働省の「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業では642,178人の障がい者を雇用し、そのうち知的障がい者を151,722.5人雇用しているとされています。
企業規模ごとの雇用状況では、従業員1,000人以上の企業において79,811人の知的障がい者を雇用しています。産業別では、製造業で41,544.5人、卸・小売業で29,712人、サービス業で17,551.5人を雇用していることが分かっています。
規模が大きい企業は、業務が多様で切り出しやすく、人的リソースが豊富でサポート担当者を割り振りやすいことから雇用数が増えていると考えられます。また、製造業は知的障がいの特性を活かしやすい業務が、他業種と比べて多いため、雇用が進んでいると推測できます。
※重度知的障がい者:1人を2人としてカウント/短時間労働の重度以外の知的障がい者:1人を0.5人としてカウント
知的障がいの方が働く業種について、さらに詳しく見ていきましょう。
厚生労働省の「平成 30 年 障害者雇用状況の集計結果」によると、知的障がいの方を多く雇用している業種のTOP3が以下の通りになっています。
1位:製造業:約32,000人
2位:卸売・小売業:約24,000人
3位:医療・福祉:約21,000人
これらの業種は知的障がい者だけでなく、他の障がい者においてもTOP3の業種です。つまり、知的障がい者に向いている業種というよりは、障がい者が働きやすい・障がい者を雇用しやすい業種であるといえるのかもしれません。
例えば、製造業は他の業種に比べると、業務を細かく切り出すことが比較的容易です。そのため、知的障がいをはじめとした障がい者の方の特性に応じて、遂行しやすい業務を割り当てやすくなります。こうした仕事環境から、製造業は障がい者の方が働きやすい業種となっていると推測できます。
では、知的障がいがある方の得意分野と、向いている仕事について考えていきましょう。知的障がいの分類ごとに、向いている仕事を表にしてまとめました。
分類 | 特徴 | 向いている仕事 |
軽度知的障がい | 基本的な生活習慣は自立しており、適切な支援のもとで就労が可能。 | ・製造業・加工業・卸売・小売業(棚卸し・在庫管理)・清掃業・飲食業(飲食製造・調理補助) |
中度知的障がい | 基本的な日常生活は部分的に自立しているが、社会活動や複雑な作業には支援が必要。 | ・製造業・加工業(簡単なライン作業)・清掃業・農作業・パッケージ作業 |
重度・最重度知的障がい | 身の回りのことに多くの支援が必要で、簡単な作業に従事することが可能。就労継続支援事業所で働くケースが多い。 | ・清掃業務・簡単な製品の製造・紙容器や段ボールの箱折り・手作業によるシンプルな作業 |
知的障がいの分類ごとに向いている仕事を整理すると、上記のようになります。しかし、知的障がいといっても人それぞれで個性や得意なこと・苦手なことには違いがあります。
例えば、変化が苦手な方であれば人の入れ替わりやルール変更が少なく、コツコツと積み上げられる仕事が向いているといえます。軽度知的障がいの方でもそうした個性を持っているならば、ライン作業を担当してもらうのも良いかもしれません。また、人と接するのが得意でないタイプであれば、棚卸しや在庫管理など、裏方の仕事を行ってもらうのも良いでしょう。
このように、まずは分類ごとの基本的な特性を把握します。そして1人ひとりの個性・得意なこと・苦手なことを見極め、適切な仕事を担当してもらうことが大切です。
知的障がいがある方を雇用するならば、安心・安定して働けるように、企業として適切なサポートや環境整備を実施することが大切です。ここでは、知的障がいの方を雇用するうえで注意すべきポイントを3つの観点から解説します。
知的障がいの方1人ひとりの理解度に合わせて業務を割り当て、具体的に指示を与えましょう。
知的障がいの分類とともにそれぞれの個性などによって、理解度には個人差があります。また、知的障がいのある方は、抽象的な表現や曖昧な指示を理解するのが難しいことがあります。そのため、以下の点に注意しましょう。
・適切な業務を割り当てる:業務開始後も適性を確認し、過度な負担とならないように配慮し、必要に応じて柔軟に調整を行う。
・具体的な指示を行う:曖昧な表現を避け、ときには図やメモなどを用いて視覚的に分かりやすく指示する。(例:「きちんと並べてください」→「商品の向きを前に揃えてください」)
これらに注意することで、業務における障がい者の方にかかる負担が減り、前向きに働きやすくなります。
知的障がいの方を雇用するにあたって、「5S」を意識することも大切です。5Sとは、以下のことを指します。
・整理:不要なものを捨て、無駄な情報を排除することで混乱を防ぐ。
・整頓:ものを使いやすく並べる、表示を工夫する。探す手間を減らし、業務をスムーズに進められる。
・清掃:掃除・点検を行って、職場へ愛着を持ってもらえるようにする。
・清潔:衛生的な状態を維持し、快適に働ける職場環境を整える。
・しつけ:正しく備品を扱い、きれいに使う習慣をつけ、ルールを守る習慣を定着させる。
この5Sに加えて「作業を円滑に進められる」ようにするために、作業の可視化を行うことも大切です。例えば、マニュアルや業務指示書は文字だけでなく、写真やイラストを用いて視覚的に分かりやすくすると、混乱せずに作業を進められます。他にも、ホワイトボードを活用して今日の作業を色分けで指示する、棚やファイルにラベルを付けて認識しやすくするといった工夫もおすすめです。
知的障がいの方をはじめ、障がい者の方は仕事の定着率が低い傾向にあります。定着率を高めるために、以下の点にも注意を払いましょう。
一般社員でも障がい者社員でも、業務を円滑に進めるためには報告・相談などのコミュニケーションが欠かせません。気軽に相談できる環境を整えましょう。
例えば、定期的な面談を実施し、仕事の悩みを確認する/連絡ノートなどを用意して、口頭でのコミュニケーションが難しい社員でも簡単・気軽に報告できる仕組みを整える、といった方法があります。
知的障がいの方は複数の人から異なる指示を受ける、相談することが苦手です。「今日は誰の指示を聞けば良いのか分からない」となってしまうと、業務が滞ってしまうだけでなく、ストレスにより離職につながることもあります。
まずは、業務指導や相談窓口の担当者は1人に統一しましょう。そして、指示内容も統一して、業務の進め方を一貫させることが大切です。
業務や職場環境の整備は企業で対応できます。しかし、生活面や医療面までサポートするのは困難です。専門機関と連携すれば、知的障がい者をあらゆる角度からサポートできるようになり、結果的に定着しやすくなります。
企業が対応できない生活面や医療面について、支援機関と連携してサポートを受けられるように、入社時には支援機関に登録してもらいましょう。
知的障がいの方をはじめ、障がいを持つ方の雇用をお考えなら、「やさいサポーターズ」がおすすめです。「やさいサポーターズ」とはどのようなサービスなのか、特徴やメリットについても解説します。
「やさいサポーターズ」は、JAグループの農協観光と、食の福利厚生サービス「OFFICE DE YASAI」が共同で提供する、農福連携型の障がい者雇用支援サービスです。
農福連携とは、農業と福祉を組み合わせることで、障がい者の就労機会を創出し、安定した雇用を支援する取り組みです。農業はルーチンワークが多く、作業が細分化できるため、障がいのある方の特性に合わせた仕事を提供しやすい環境が整っています。「やさいサポーターズ」は、この農福連携を活用し、障がい者が生産した農作物を企業の福利厚生として提供する仕組みを構築しており、以下のような特徴・メリットがあります。
・障がい者の安定雇用を創出:障がいのある方でも働きやすい。農業分野における障がい者雇用の機会を増やします。
・サポートによる定着率向上:専門スタッフが継続的に支援し、障がい者の職場定着を促進します。
・障がい者雇用義務をサポート:一定規模の企業には障害者雇用率制度にもとづき、雇用義務があります。やさいサポーターズを活用すれば、障がい者雇用をスムーズに進められて、法定義務を果たしやすくなります。
・健康経営を実現:生産された農作物は、オフィス向けの健康社食の食材になります。そのため、社員の健康促進・企業の健康経営の推進に役立ちます。
・低コストで導入できる:農園型と比べて低コストで導入でき、企業にとって継続しやすいモデルです。
このように「やさいサポーターズ」にはさまざまな特徴・メリットがあります。農業分野と福祉分野の課題解決、日本の農業活性化、企業の障がい者雇用促進に加え、健康経営も実現できる五方良しのモデルです。知的障がいがある方の雇用を検討しているなら、ぜひ「やさいサポーターズ」の導入をご検討ください。
今回は、知的障がいのある方を雇用するうえでのポイント・注意点などについて解説しました。
知的障がいは大きく4つの程度に分類され、それぞれで支援の必要度が異なります。しかし、知的障がいのある方それぞれに個性があり、得意・苦手なことが違います。そのため、1人ひとりの特性を理解し、それに合った業務を担当してもらうことが重要です。本記事で紹介した雇用における注意点を参考に、知的障がいを持つ方の雇用を進めていきましょう。
知的障がいを持つ方をはじめとした障がい者雇用を促進したいとお考えなら、農福連携×健康経営の「やさいサポーターズ」もおすすめです。比較的低コストで導入できる五方良しのモデルで、定着率向上も実現できます。ぜひご検討ください。
福利厚生制度
法定雇用率の引き上げもあり、障がい者雇用を行う企業が増えています。しかし、実際に障がい者を雇用してみたものの「職場になじめずにすぐに辞めてしまう…」「定着率を高 …
農福連携
日本では障害者雇用促進法により、一定以上の規模の企業には、障がい者の雇用義務があります。経営層の方や人事担当の方は、法定雇用率を正しく理解し、なるべく速やかに障 …
農福連携
障がい者雇用を検討しているものの「ノウハウや経験がない」「社員が不安を感じている」という理由でなかなか進められない企業は多いのではないでしょうか。「他の企業では …
農福連携
「障がい者雇用を進めたいけど、何をすれば良いか分からない」とお悩みの人事担当者、企業は多いのではないでしょうか。障がい者雇用は、法定雇用率だけを見て人数重視の雇 …