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障がい者雇用のメリットとは?雇用しない場合のデメリット・リスク、雇用方法を解説
障がい者の雇用は一定以上の規模の企業に義務づけられています。そのため、「法定雇用率達成のために障がい者を雇用しなければ」と考えている企業は多いかもしれません。し …
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公開:2025.04.25
更新:2025.04.29
障がい者雇用は、企業にとって「配慮」の問題であると同時に、「法的な義務」でもあります。その根拠となるのが「障害者雇用促進法」です。
しかし、「障害者雇用促進法ってどういう法律?」「改正された内容を知りたい」といった疑問、ご要望をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、障害者雇用促進法の目的や理念、企業に求められる義務、近年の法改正、違反時の罰則までを分かりやすく解説します。
目次
障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)は、障がいのある方がその能力を十分に発揮し、安定した職業生活を送れるように支援するための法律です。企業に対して一定割合の障がい者を雇用することを義務づけるほか、雇用環境の整備や差別の禁止、合理的配慮の提供など、多角的な支援を求めています。
ここでは、目的や理念、歴史、対象となる人について解説します。
障害者雇用促進法の目的は、障がい者が職業生活を通じて自立し、社会の一員として参画できるようにすることです。
その理念として、以下のような考え方が定められています。
・ノーマライゼーションの実現:障がいの有無にかかわらず、誰もが同じように暮らし、働ける社会を目指す。
・機会の平等と公正な評価:障がい者に対して不当な差別をせず、その能力や成果に基づいて公平に評価する。
・合理的配慮の提供:障がいのある方が働きやすいよう、業務内容や環境を適切に調整する。
企業においては、障がい者を受け入れる体制づくりや雇用後の定着支援を含めた取り組みが求められます。
障害者雇用促進法の前身となるのは、1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」です。「身体障害者雇用促進法」は第二次世界大戦により身体障がい者となった人に向けて制定されました。その後、対象者の拡大や内容の充実を経て、1987年に現在の名称に改称されました。
主な制度の変遷は以下のとおりです。
・1960年:「身体障害者雇用促進法」制定(身体障がい者が対象)
・1987年:「障害者雇用促進法」に改称(知的障がい者も対象に)
・2006年〜2013年以降:精神障がい者の法定雇用率の算定対象へ追加
・2016年:「障害者差別解消法」との連動により、差別禁止・合理的配慮の義務化
・2023年:法定雇用率の引き上げや制度の見直しを含む改正が施行
こうした流れから分かるように、障がい者雇用の制度は「就労機会の提供」から「働き続けられる環境づくり」へと重点がシフトしています。
障害者雇用促進法では、「職業生活における自立を図るために就業及びこれに伴う日常生活又は社会生活上の支援を必要とする障害者」を対象者としています。具体的には、主に以下の3つの区分に分類される方たちが対象者となります。
・身体障がい者:視覚・聴覚・肢体などの身体機能に障がいがある方。身体障害者手帳を保持している。
・知的障がい者:発達期に知的機能に障がいが生じた方。療育手帳や診断書による証明が必要。療育手帳は、地域により名称が異なることがある。
・精神障がい者・発達障害者:統合失調症、うつ病、発達障害など。精神障害者保健福祉手帳を所持している方。
障害者雇用促進法では、企業が障がい者を受け入れるうえで果たすべき4つの義務が定められています。これらの義務は、障がいのある方の就労機会を保障し、職場での活躍を後押しするために非常に重要なものです。それぞれ、解説していきます。
一定規模以上の企業には、法定雇用率に基づいて障がい者を一定割合以上雇用する義務があります。これは「雇用率制度」と呼ばれ、障害者雇用促進法の中心的な制度です。
2025年4月現在の法定雇用率は以下のとおりです。
・民間企業:2.5%(2026年7月から2.7%に引き上げ予定)
・対象となる企業規模:従業員40.0人以上(2026年7月からは37.5人以上)
例えば、従業員が100人の企業の場合、少なくとも2人の障がい者を雇用する必要があります(小数点以下は切り捨て)。法定雇用率を達成できない場合、障害者雇用納付金の支払い義務が発生することもあるため、計画的な雇用が求められます。
障害者雇用促進法では、差別禁止と合理的配慮の提供義務を企業に対して明確に課しています。
・差別の禁止:障がいを理由に、採用・昇進・給与・配置などにおいて不利益な取り扱いをしてはならない。
・合理的配慮の提供:障がいのある方がほかの社員と同様に働けるよう、業務内容や職場環境を適切に調整する。
例えば、聴覚障がい者を雇用する場合は筆談対応を、精神障がい者を雇用するならば静かな作業スペースを確保することなどが該当します。これらは法的な義務であるため、未対応であれば法令違反となる可能性があるので注意が必要です。
従業員50人以上の事業所には、「障害者職業生活相談員」を1名以上選任する義務があります。障害者職業生活相談員は、障がい者が職場で安定して働き続けられるように、以下のような支援を行います。
・職場内でのコミュニケーションサポート
・業務上の困りごとの相談対応
・上司・同僚との橋渡し
障害者職業生活相談員は、厚生労働省が指定する講習を受講することで資格を取得できます。義務であるとともに、障がい者の定着を支える重要な役割を担うため、該当する企業では早めの対応が求められます。
企業は、障がい者の雇用状況について、毎年6月1日時点の内容をハローワークに報告する義務があります。これは「障害者雇用状況報告」と呼ばれ、法定雇用率の達成状況を把握する重要な制度です。
ほかにも、法定雇用率を満たしていない企業には「雇用計画書」の提出が求められることもあります。また、報告義務を怠った場合には、ハローワークから行政指導や指摘が行われることもあります。
2023年4月以降、障害者雇用促進法には複数の重要な改正が加えられました。
この改正は、障がい者雇用の実効性と継続性を高めるための内容で構成されており、特に雇用率の見直しや就労支援の拡充に重点が置かれています。
企業は、今後の法改正に対応するためにも、改正内容を正しく把握し、制度整備や人事体制の見直しを進めていくことが重要です。
先にも少し触れましたが、今回の改正の中でも最も大きな変更のひとつが、法定雇用率の段階的な引き上げです。
・2024年4月から:2.5%(従業員40.0人以上の企業が対象)
・2026年7月から:2.7%に引き上げ予定
この改正により、障がい者の就労機会はさらに広がります。しかしその一方で、企業にはより積極的な障がい者の雇用計画と受け入れ体制の整備が求められるようになります。
特定の業種・職種では、その業務の性質上、障がい者の雇用・配置が難しいことがあります。「除外率」とは、そうしたケースにおいて、雇用率の計算から除外できる割合のことです。
しかし、ノーマライゼーションの観点から、除外率は段階的に廃止される方向となっています。今回の改正でも、除外率の対象業種の見直しと段階的な引き下げが進められています。例えば、2023年時点で除外率が10%以下の業種は、2025年4月以降、除外率の対象外となります。
そのため、今後はより多くの企業が実質的に雇用率達成に取り組む必要が出てきています。
今回の改正では、精神障がい者の算定特例が延長されました。
これは、「週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働」を行う精神障害については、1人を1カウントとして算定できる特例です。この算定特例制度は2023年以降も当分の間、延長されて適用されることとなりました。そのため、企業は精神障がい者の雇用をより柔軟に進めることができ、トライアル的な雇用も行いやすくなっています。
短時間勤務における雇用率の算入についても改訂がありました。
従来、障がい者の短時間勤務(週20時間未満)は、雇用率の対象とならない場合もありました。しかし今回の改正により、週10時間以上20時間未満であっても、重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を雇用した場合は1人あたり0.5カウントとして雇用率に算入可能となります。これは2024年4月から開始されています。
この見直しにより、より柔軟な雇用形態が認められ、障がい者の働き方の幅が広がると同時に、企業側の雇用ハードルも下がることが期待されています。
これまで、「適当な雇用の場の提供」「適正な雇用管理」が企業の責務とされてきました。2023年4月以降は、さらに、「職業訓練や能力開発支援」に関する義務が課されています。
・スキルアップ研修の実施
・資格取得支援
・成果に基づく評価制度の整備
例えば、このようなことを行うことで、障がい者をただ「雇う」だけでなく「育てる」姿勢が求められるようになっています。
障害者雇用に関連する調整金・報奨金制度についても、実態に合わせた見直しが行われています。
・調整金:支給対象人数が10人を超える場合、超過人数分への支給額=2万3,000円(6,000円の減額)
・報奨金:支給対象人数が35人を超える場合、超過人数分への支給額=1万6,000円(5,000円の減額)
障害者雇用促進法では、障がい者の雇用を義務として定めています。それと同時に、法定雇用率を満たさなかった場合や報告義務に違反した場合の措置も明確に規定されています。
企業がこの法律に違反した場合には、金銭的なペナルティだけでなく、行政指導や社会的な信用リスクを負う可能性があるため注意が必要です。以下に主な罰則を紹介します。
障がい者の法定雇用率を達成していない企業は、「障害者雇用納付金制度」に基づく納付金の支払いが求められます。
・対象:常用雇用労働者101人以上の企業
・納付金額:未雇用1人あたり月額5万円
例えば、不足している雇用障がい者数が2人いる場合、年間で120万円の納付金が発生します。
なお、納付金は企業側としてはペナルティと感じられるかもしれませんが、実際は異なります。この制度は、「再分配機能」を担っているもので、未達成企業から納付された納付金は、雇用率を上回る企業への報奨金や助成金などに活用されます。
障がい者の法定雇用率を満たしていない、届出を怠っている、あるいは差別や合理的配慮の不提供が確認された場合、企業には行政から段階的な指導が行われます。
まずは「障害者雇入れ計画書」の作成が命じられ、実施状況が不十分な場合には「適正実施の勧告」、さらに「特別指導」が続きます。それでも改善が見られない場合、企業名が公表されることもあります。
また、差別や配慮義務の不履行については、報告徴収や助言・指導・勧告といった措置が取られます。こうした指導は、企業の信頼性にも影響するため、早めの対応が重要です。
障がい者雇用に関する重大な違反や、法定雇用率の長期的な未達が続く場合、厚生労働省などの行政機関によって企業名が公表されることがあります。
企業名が公表されると、採用活動や取引先からの信用低下、CSR(企業の社会的責任)への批判が高まるなど、経営面にも影響を及ぼす可能性があります。
そのため、「納付金を払えば済む」といった考えではなく、法定雇用率を達成することが大切です。そして、法令を遵守して障がい者が安心して働ける環境づくりに積極的に取り組むことが求められます。
障害者雇用促進法への対応を進める中で、「どう雇用すれば良いか」「どんな職場環境を整えれば良いか」と悩む企業は少なくありません。
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障がい者雇用は法的に定められた「義務」であるとともに、「企業価値の向上」にもつながるものです。障がい者雇用を進めたいとお考えでしたら、ぜひ「やさいサポーターズ」の導入をご検討ください。
今回は、障害者雇用促進法の目的や理念、企業が果たすべき義務、法改正のポイント、違反時の罰則などについて解説しました。
障がい者雇用は、法的義務を果たすだけでなく、多様性のある職場づくりや、持続可能な社会の実現にもつながる重要な取り組みです。近年の法改正により、企業にはより実効性のある雇用体制や支援体制の構築が求められています。
一方で、「どのように採用し、どう定着させるか」といった課題を抱える企業も少なくありません。そうした課題に対して、農福連携×健康経営という新しいアプローチを提供する「やさいサポーターズ」は、有力な選択肢です。ぜひ導入をご検討ください。
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