農福連携

-2025.03.25.Tue

【農福連携の事例15選】よくある課題と解決サービスの紹介

近年、農業と福祉を結びつけた「農福連携」が注目されています。農業分野の人手不足問題と、就労意欲のある障がい者の雇用をスムーズに解決できる点が特徴です。そうした特徴から、全国各地で農福連携の取り組みが活発化しています。

「農福連携はどのような形で行われているの?」「具体的な農福連携の成功例を知りたい」といった疑問・ご要望を持つ方もいることでしょう。

今回は、全国各地の農福連携の事例をまとめて紹介します。また、農福連携が抱える課題と、それを解決するサービスについて解説します。

農福連携型の障がい者雇用支援
『やさいサポーターズ』

農福連携とは

農福連携とは、農業と福祉が協力しあうことで、働く意欲を持つ障がいのある人々へ就労の機会や生きがい・やりがいを感じられる場所を提供し、地域社会への参加を促進する取り組みです。

農福連携はボランティアとは異なります。この取り組みは、それぞれの分野において課題を解決できるメリットがあります。障がい者を労働力として雇うことができるため、農業分野では労働力不足の解消や、荒廃農地の有効活用が実現できます。福祉分野においては、障がい者の人々に安定した職場を確保でき、社会参加や自立支援の機会を増やせます。

また、障がい者にとっても農業はやりがいを感じやすく、働きやすい分野です。農業にはさまざまな仕事がありますが、一人ひとりの特性に合わせて細分化できます。身体を動かす仕事なのでリハビリとしての効果も期待できますし、賃金を得ることで働く喜びや生きがいを見出すことができます。

さらに、農福連携は日本の農業活性化につながり、社会的にも意義があるものです。

このようなことから、農福連携は四方良しのモデルといわれています。

農福連携の事例

四方良しのモデルである農福連携は、全国各地で行われています。そのスタイルはさまざまで、地域特性やニーズに応じて幅広く実践されています。ここでは、特に注目されている農福連携の15の事例を紹介します。

参考:農福連携事例集 (令和5年度版)  農林水産省

特定非営利活動法人サトニクラスの事例(北海道)

北海道のNPO法人サトニクラスの農福連携の特徴は、一人ひとりの障がい特性に応じてチームを編成していることです。チームで作業することで、収穫適期の野菜見落とし防止などをはじめ、作業全体の正確性を向上させています。また、野菜生産から、漬物製造・販売までを一貫して行うことで、通年で安定的に作業を創出できている点も大きな特徴といえます。

⼀般社団法⼈イシノマキ・ファームの事例(岩手県)

イシノマキ・ファームでは、障がい者や生きづらさを抱える若者に対し、就労支援を行っています。津波被害などによる休耕地が増えていたこともあり、それらを活用してさつまいもやホップを栽培。自社栽培ホップにてクラフトビールの製造・販売を行っています。さらに、ホップソルトや干し芋を6次産業化商品として開発し、就労支援を進めています。

NPO法人ユアフィールドつくばの事例(茨城県)

ユアフィールドつくばでは、地域にある15haもの広大な荒廃農地を活用し、毎日およそ100名もの障がい者が農作業に従事しています。道具や作業工程を工夫することで、さまざまな障がいを持つ人達が、自分の障がい特性に合わせて働けます。また、企業の研修受け入れや体験農園、イベント開催などの交流企画を多数実施しており、社会とのつながりが強いのも特徴です。

特定非営利活動法人一粒舎の事例(埼玉県)

一粒舎では、遊休農地を活用して、ブルーベリー栽培を行っています。一粒舎のブルーベリーは無農薬・無化学肥料であり、高収益であることが特徴です。平均工賃は当初18,000円でしたが、令和5年にはおよそ50,900円と2.8倍にまで上昇しています。地元小学校にブルーベリーを植樹し、地域児童の情操教育にも貢献するなど、幅広い活動を行っています。

新宿区障害者福祉事業所等ネットワークの事例(東京都)

新宿区内の福祉事業所など30ヶ所が集まって「新宿区勤労者・仕事支援センター」事務局を設立し、養蜂事業を展開しています。都心のビルの屋上などを活用し、はちみつを使った商品の製造・販売・大手百貨店とのコラボなどを行っています。採取されたはちみつは都内ホテルや有名菓子店で使用されるなどし、商品ブランドの付加価値を多角的に高めています。

株式会社よしもと よしもとファームの事例(静岡県)

よしもとファームは、エンターテインメント企業の吉本興業が運営しているファームです。地域の高齢農家などから農地を借り受け、知的障がい者や精神障がい者を中心に、菌床しいたけ栽培を行っています。さらに、茶農協と連携し、茶農協が運営している茶園の1割程度を障がい者の方が管理しています。生産物は、しいたけの作業所を活用し、直売しています。

金沢市農業協同組合の事例(石川県)

金沢市農業協同組合では、農家・集出荷場と障害福祉サービス事業所とのマッチングを行っています。事前に農家や集出荷場での作業内容や障がい者が行える作業内容、労働条件について把握することで、適切なマッチングを実現させます。マッチング後は、写真入りの作業マニュアル作成や現場での作業説明などを行い、継続的な農福連携が行えるようにサポートしています。

社会福祉法人無門福祉会の事例(愛知県)

福祉事業者である無門福祉会では、自然栽培により水稲や野菜の生産、さらに出荷調整、加工、販売まで行っています。米、にんじん、白菜など30品目の作物を無農薬・無肥料で栽培し、およそ300羽もの鶏を飼育、菌床栽培と幅広く農業に従事。当初は軽作業のみを障がい者の方に割り当てていましたが、難度の高い作業を割り当てて就労意欲向上を実現しています。

社会福祉法人青葉仁会の事例(大阪府)

青葉仁会では、高齢・過疎化が深刻化する地域において、障がいの有無にかかわらず地域の人々みんなが活躍できる、持続可能な農山村地域づくりを目指しています。各地の荒廃農地にて米、さつまいもをはじめ、夏野菜から冬野菜まで20種類以上を栽培。さらに、ブルーベリーや栗などの果樹も栽培しています。収穫物は法人で運営するカフェレストランの食材として活用するだけでなく、企業のOEMを受託するなど幅広く活用されています。

社会福祉法人太陽福祉会の事例(和歌山県)

太陽福祉会は塩づくりに関する遺跡がある地にて、化石燃料を使わない釜炊き自然塩づくりに取り組んでいます。地域の廃材を活用して海水を釜炊きしているため、化石燃料は使われません。釜炊きされた自然塩はホテルや飲食店などへ販売し、塩を用いた生食パンの製造も行っています。さらに、地域の学童などを対象に釜炊き体験も実施し、地域交流も図っています。

株式会社八天堂ファームの事例(広島県)

八天堂ファームは、障がい者をはじめとする就労困難者をサポートする公益ソーシャルカンパニーです。主力商品はぶどうで、後継者不在となったぶどう園を受け継ぐことで事業をスタートしています。収穫したぶどうは令和2年の4,000房から令和5年には13,000房にまで増加するなど、成果をあげています。収穫物は、八天堂ブランドを活かし、自社ECサイトでの販売や生産者と連携した商品開発に活かしています。

特定非営利活動法人香川県社会就労センターの事例(香川県)

香川県社会就労センターでは、にんにく、たまねぎ、青ネギなど幅広く栽培しています。就労継続支援B型事業所の平均工賃が全国平均より安価であったこと、高齢化により県内の農作物生産量の低下していたことなどを背景に事業を開始。農福連携に取り組む新規の福祉施設に、マニュアルを作成するなどの取り組みを行い、令和4年度には1,750万円の作業工賃総額となっています。

一般社団法人社会福祉支援協会の事例(福岡県)

社会福祉支援協会は、人手不足に陥っていた水産加工会社を事業承継し、障がい者が戦力として定着できる分野を創出しています。初期は軽作業のみですが、スキルアップすることで専門業務に携われるような仕組みにし、評価シートも導入することでモチベーションアップを図っています。また、障がい特性に合わせて作業分担することで、離職率低下も実現しています。

社会福祉法人白鳩会の事例(鹿児島県)

白鳩会では、20種類以上の農作物を生産し、繁殖牛や養豚などの畜産、解体精肉、食肉加工、自社直売所・レストランでの販売・提供と幅広く行っています。通年作業を行えることや生産物の収益化の流れがスムーズであることから、安定した高賃金を実現しています。また、障がい者だけでなく、矯正施設出所者・少年院出院者も受け入れています。

社会福祉法人みやこ福祉会の事例(沖縄県)

みやこ福祉会では、水耕栽培により葉物野菜を通年栽培しています。障がい者の安定雇用とともに、離島地域における野菜の安定生産体制を確立しているところが特徴的です。LED照明やソーラーパネルを活用した低コスト栽培で収益を伸ばしています。また、安定的な価格で葉物野菜を入手できるとして、地域の食ニーズにも応えるなど、理想的な農福連携を実現しています。

農福連携の課題

紹介したように、農福連携は全国各地でたくさんの成功事例を生み出しています。その一方で、いくつかの課題があることも事実です。ここでは、農福連携に具体的にどのような課題があるのかを解説していきます。

定着率

農福連携における課題の一つは、定着率が低い場合があることです。

障がい者はそれぞれで障がい特性が異なるため、一人ひとりに合った作業を割り当てる必要があります。しかし、ノウハウがないと「どのように業務を切り出せば良いか分からない」といった課題が生じます。かといって、軽作業ばかりを割り当てていると、障がい者の労働意欲が低下してしまいます。また「サポートスタッフがいない」「送迎バスなどを用意できない」といった環境的な課題もあります。

このようなさまざまな問題をクリアして定着率を高めていくことが、農福連携において重要な課題となっているのです。

能力を発揮させる機会の創出

障がい者一人ひとりの能力を十分に発揮させる機会を適切に生み出すことも、農福連携において重要な課題です。

障がい者雇用の基本方針は「本人の適正・希望を考慮し、能力を正当に評価してさまざまな業務を経験させる機会を提供する」ことにあります。しかし、能力に応じたトレーニング環境が整っていない場合や、ノウハウが不足している場合は、障がい特性に合わせて作業を割り当てることが困難です。

だからといって簡単な作業ばかりを割り当ててしまうと、一人ひとりの能力を発揮させる機会を失わせてしまいかねません。この部分も、適切なノウハウをもって運営される必要があります。

定着率の高い農福連携「やさいサポーターズ」

「やさいサポーターズ」は、農福連携をはじめとした障がい者雇用の取り組みにおいて大きな課題である、定着率の課題を解決できるサービスです。JAグループの農協観光と、福利厚生サービス「OFFICE DE YASAI」が共同で提供しています。

「やさいサポーターズ」の基本的な仕組みは農福連携と同じです。しかし、障がい者が生産した農作物を活用し、企業の健康社食として還元できる点が特徴であり、大きな強みといえます。農福連携は、就労意欲のある障がい者、人手不足の農業者、障がい者雇用を実現したい企業をつないでそれぞれの課題を解決し、日本の農業を活性化する四方良しのモデルといわれています。「やさいサポーターズ」はそれに加えて「健康経営」を実現できることから、いわば五方良しのモデルといえます。

そんな「やさいサポーターズ」には、以下のような特徴があり、定着率向上を実現しています。

・サポート体制の充実:専門スタッフが障がい者に寄り添ってサポートするので、障がい者が職場へスムーズに適応できる。さらに、送迎バスなど働きやすい環境が整っている。

・企業との連携:企業との連携で雇用が安定。さらに、生産された農作物は企業の社食へと活用されるため、障がい者自身もやりがいを感じやすい。

・低コストで活用できる:農園型障がい者雇用サービスと比べ、低コストで導入可能。そのため、企業にとっても無理なく継続できて安定した雇用を創出できる。

農福連携は、四方良しのモデルとされていますが、定着率の低さが大きな課題です。しかし「やさいサポーターズ」には、上記のような取り組みを行うことで定着率92%という驚異的な定着率を実現していて、定着率の課題を解決する独自の仕組みがあります。単なる障がい者雇用の枠を超え、五方良しの持続可能なモデルとして機能します。

※令和5年4月〜令和6年3月までの実績

障がい者雇用をお考えでしたら、ぜひ「やさいサポーターズ」の利用をご検討ください。

やさいサポーターズについて詳しくはこちら

まとめ

今回は、農福連携の事例とよくある課題について解説しました。

農福連携は、四方良しのモデルとされ、近年注目を集めています。実際に、全国各地で農福連携の取り組みが行われており、本記事で紹介したように多くの成功事例があります。その一方で「定着率の低さ」が大きな課題となっています。

「やさいサポーターズ」は、四方良しの農福連携に「企業の健康経営」という要素を加えた、五方良しのモデルです。障がい者の社会参加の支援、農業の活性化だけでなく、専門スタッフのサポート体制、企業との連携による安定雇用、低コストでの導入などのメリットがあります。それらを活かすことで、連携する企業の健康経営を実現でき、関係者すべてがWin-Winになれる仕組みです。

障がい者雇用と健康経営を両立したい企業様は、ぜひ「やさいサポーターズ」をご検討ください。

やさいサポーターズについて詳しくはこちら

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