農福連携
障がい者雇用とは?一般雇用との違いや企業の義務、関連法令、採用の方法などを解説
法定雇用率の達成のため、障がい者雇用を検討している企業は数多くあります。しかし、「障がい者雇用と一般雇用で何が違う?」「企業にはどんな義務がある?」「どうやって …
農福連携
公開:2025.04.25
更新:2025.04.29
障がい者雇用を進めるうえで、まず理解しておくべきなのが「法定雇用率」の仕組みです。重要な仕組みではあるものの、「何人雇えば達成できるのか」「パート社員や短時間勤務の障がい者はどうカウントされるのか」など疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、法定雇用率の基本的な考え方から計算方法、罰則、採用手段までを分かりやすく解説します。
目次
障害者雇用促進法では、企業が一定割合の障がい者を雇用することが義務付けられています。その法律に基づき定められている障がい者の雇用割合のことを「法定雇用率」と呼びます。法定雇用率は障がい者の安定した就労機会を確保するために設けられており、企業規模に応じて具体的な雇用人数が決まる仕組みです。
ここでは、法定雇用率とはどのようなものなのか、条件や除外制度、雇用率の引き上げなどについて解説します。
法定雇用率とは、企業が全従業員のうち、どの程度の割合で障がい者を雇用しなければならないかを示した数値です。障害者雇用促進法に基づいて、全ての企業に遵守が求められています。
2025年4月現在、民間企業における法定雇用率は以下の通りです。
・法定雇用率:2.5%
・対象企業:従業員数40.0人以上の企業
小数点以下の人数については、一般的に切り捨てます。そのため例えば、従業員が100人の企業であれば少なくとも2人の障がい者を雇用する必要があります。
また、後述しますが、法定雇用率は段階的に引き上げられています。そのため、2026年7月以降は、現在の2.5%から2.7%に引き上げられ、37.5人以上の企業が対象となります。
前述の通り、法定雇用率は2.5%です。そのため、常用労働者が40人以上在籍している企業に障がい者の雇用が義務付けられています。この「常用労働者」には、正社員のほか、以下のように一定の要件を満たす契約社員やパート社員も含まれます。
・対象となるのは1年以上継続して雇用される見込みの労働者
・週所定労働時間が20時間以上あること
なお、法定雇用率を達成できない場合、その企業は後述する納付金の支払いや行政指導の対象となることがあります。
企業によっては、業務の性質上、障がい者の雇用が困難であることもあります。「除外率制度」とは、そうした障がい者の雇用が難しい一部の業種や職種において、法定雇用率の計算から一部を除外できる制度のことです。雇用労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者は控除されるため、障がい者雇用の義務が軽減されます。
例えば、以下のような業種では、除外率が設定されています。
・建設業や鉄鋼業
・航空運輸業、水運業など
・小学校や幼稚園、児童福祉事業など
除外率制度は、ノーマライゼーションの観点から平成16年の段階で廃止となっています。しかし、段階的な縮小を行うために、一部の業種で設定されています。対象業種の範囲や除外割合は年々減少傾向にあります。今後は、より多くの企業が実質的に法定雇用率の遵守を求められるようになります。
障がい者の就労機会をさらに広げるため、法定雇用率は段階的に引き上げられる方針が示されています。
・2024年3月末まで:2.3%
・2024年4月から:2.5%
・2026年7月から:2.7%(予定)
このように法定雇用率は段階的に引き上げられることから、企業にはより積極的な雇用計画と体制づくりが求められることになります。特に中小企業においては、採用ルートを確保することや支援制度の活用、将来を見据えた環境整備が今後のカギとなります。
障がい者の雇用率を正しく把握するためには、誰が対象となるのか・どのようにカウントするのか・具体的な計算方法を理解することが重要です。
ここでは、企業が障がい者雇用率を算出する際に必要な基本的なルールを解説します。
法定雇用率の算定対象となるのは、次のいずれかの手帳を所持している障がい者の方です。
・身体障害者手帳の交付を受けている方
・療育手帳を持つ知的障がい者
・精神障害者保健福祉手帳を所持している精神障がい者
加えて、週所定労働時間が20時間以上で、1年以上継続して雇用される見込みのある方が対象となります。
また、2024年4月からは、週所定労働時間10時間以上20時間未満の「短時間労働者」である「精神障害者」「重度身体障害者」「重度知的障害者」も対象となります。短時間労働者については、1人=0.5人として算定します。
障がい者雇用率を算出する際、障がいの種別や勤務形態に応じて、以下のように人数がカウントされます。
常勤の身体・知的・精神障がい者(週30時間以上勤務) | 1人=1.0人分 |
短時間労働者(週20時間以上30時間未満) | 1人=0.5人分 |
重度の身体障がい者(手帳等級が1級または2級) | 常勤=2.0人分/短時間=1.0人分 |
重度の知的障がい者(療育手帳がA判定など) | 常勤=2.0人分/短時間=1.0人分 |
精神障がい者の新規雇用 ※2023年3月末日までの特例措置 | 1人=1.0人分 |
超短時間労働者(週20時間未満) | 原則カウント対象外(=0人分) |
※ただし、2024年4月以降、一部の重度・精神障がい者に限り0.5人分として算定可
※複数の条件が重なる場合は掛け合わせて算定(例:重度な障がい者かつ短時間勤務=2.0×0.5=1.0人分)
障がい者の法定雇用率は、以下の計算式で求められます。
「雇用率(%)=(障がい者の実雇用数÷常用労働者数)×100」
例えば、従業員数100人の企業が、障がい者を3人(うち2人はフルタイム、1人は週25時間勤務)雇用している場合は以下のように計算します。
まず、上記の方法にて雇用している障がい者をカウントします。
・フルタイム2人→2.0人分
・週25時間勤務1人→0.5人分
これにより、障がい者の実雇用数合計は2.5人分となります。そこに、先程の計算式を当てはめると以下のようになります。
「雇用率=(2.5÷100)×100=2.5%」
そのため、この企業では、法定雇用率を達成できていることが分かります。
計算式そのものは単純ですが、雇用率を正しく算出するにはカウント方法を正しく理解することが大切です。計算式とともにカウント方法について、正しく把握しておきましょう。
障害者雇用促進法により、一定規模以上の企業(2025年4月現在は40人以上の企業)は法定雇用率の達成が義務付けられています。もしこの基準を満たさなかった場合、企業には以下のような金銭的負担や行政指導、社会的なペナルティが科される可能性があります。
常用労働者が100人以上の企業で、法定雇用率を満たしていない場合、未達の人数に応じて「障害者雇用納付金」を支払う義務が発生します。納付金額は、1人分不足あたり月額5万円です。例えば、2人分が不足している企業の場合は月10万円、年間で120万円の納付金が発生します。
この納付金は、「納付」という言葉がついているように、罰則金ではありません。納付された金額は障がい者雇用に積極的に取り組んでいる企業への報奨金や助成金として活用されて、障がい者雇用制度全体を支えるための再分配機能を果たしています。
法定雇用率を満たしていない、または障がい者雇用状況報告の提出を怠った場合、ハローワークなどの行政機関から段階的な指導が行われます。
行政指導の主な内容は以下の通りです。
・助言・指導(口頭や書面による注意)
・雇用計画書の提出命令(雇用率の達成に向けた具体的な計画の提出)
・雇用状況の報告命令および立入調査
・勧告(改善が見られない場合に、法的根拠をもとに是正を求める)
これらの対応は企業の状況に応じて段階的に行われます。度重なる行政指導をしたものの改善が見られない場合には、最終的に企業名が公表される可能性があります。詳しくは後述します。
障がい者雇用に極めて消極的で、行政からの繰り返しの指導・勧告にも応じない企業については、厚生労働省の判断により企業名が公表されることがあります。
企業名が公表されると、次のような経営リスクが発生する可能性があるため注意が必要です。
・社会的信用の低下
・取引先・株主・求職者にネガティブな印象を与える
・CSR(企業の社会的責任)やESGへの対応不足として批判を受ける
このように、法定雇用率の未達は「納付金」だけで済まない問題へと発展することもあります。そのため、対象となる企業は早めの対応が求められます。障がい者を受け入れるための環境整備や雇用をなるべく早めに進めていきましょう。
障がい者雇用をスムーズに進めるには、「どこで人材を見つけるか」と同時に、「どのように働きやすい環境を整えるか」が重要です。
ここでは、障がい者の採用につながる代表的な方法を紹介します。
もっとも基本的かつ公的な採用ルートとなるのが、ハローワーク(公共職業安定所)です。
・専門の相談員が、障がい者向けの求人作成やマッチングを支援
・障がい者専用の「就職面接会」などのイベントも定期開催
・採用後の助成金やトライアル雇用制度などの紹介も可能
このような特徴があることから、ハローワークは初めて障がい者を採用する企業にとって、制度面から具体的なアドバイスを受けられる貴重な窓口といえるでしょう。
障がいのある若年層の採用を希望するのであれば、特別支援学校(高等部)への求人票の送付がおすすめです。
・学校との連携により、本人の特性や希望を把握したうえでマッチングが可能
・インターンや職場実習を通じて、相性を確かめながら採用できる
・進路指導担当の先生がサポート役として関わってくれるケースも多い
若年層の雇用は、企業にとって将来的な繁栄にもつながります。特別支援学校への求人票送付は、若手の人材をじっくり育てていきたい企業にとって、有望なルートとなることでしょう。
近年では、障がい者専門の求人サイトや就職情報サービスも充実しています。そのため、他の雇用ルートとあわせて活用するのがおすすめです。
・障がい者の求人に特化した実績ある媒体が多数ある
・オンライン面談や動画説明会など、採用活動の幅が広がっている
・自社ホームページでの募集情報掲載もあわせて活用可能
求人情報の出し方や表現を工夫することで、マッチする人材からの応募が集まりやすくなります。担当者と相談しながら、より良い雇用を目指していきましょう。
「どのように受け入れ体制を整えれば良いか不安」「採用しても定着しない」といった悩みを抱える企業も多いかもしれません。そのような企業には、民間の障がい者雇用支援サービスの活用がおすすめです。
・採用計画や求人設計の支援
・面談・マッチング・職場定着のフォローアップ
・業務切り出しや合理的配慮のサポート
また、近年は、農園型や農福連携型の障がい者雇用支援サービスが注目されています。法定雇用率を達成しやすいだけでなく、定着率も高いことがその理由です。
障がい者雇用において、採用することはもちろんですが、採用後の「定着」も非常に重要です。単に雇用率を満たすだけでなく、安心して働き続けられる環境づくりが、企業と本人の双方にとって大きな価値を生み出します。
「やさいサポーターズ」は、定着支援に力を入れた農福連携型の障がい者雇用支援サービスで、JAグループの農協観光と「OFFICE DE YASAI」が共同で運営しています。育てた野菜はオフィスに届けられるため、福利厚生にもつながるのが特徴です。
「やさいサポーターズ」の定着率が高いのは、以下のような理由があります。
・安定した作業内容:農作業はルーティン性が高く、繰り返しの作業が得意な方に適しています。
・自然の中での就労:屋外作業により、ストレスを感じにくい環境を提供します。
・支援スタッフの常駐:専門スタッフが日常的にフォローし、相談やトラブルにも即対応。
・やりがいの「見える化」:育てた野菜が社員の元へ届くことで、社会とのつながりを実感できます。
さらに、「やさいサポーターズ」は企業にとっても以下のようなメリットがあります
・自社に農園を持つ必要がなく、初期投資が抑えられる
・法定雇用率の達成だけでなく、健康経営やESG推進にも貢献
・福利厚生の一環として社員満足度の向上にも寄与
障がい者の定着や雇用継続に不安がある企業にとって、「やさいサポーターズ」は、雇用支援を超えて企業価値の向上につながる選択肢です。ぜひ、導入をご検討ください。
本記事では、障がい者雇用における法定雇用率の基本から、計算方法などについて解説しました。
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「やさいサポーターズ」は農業を通じて、定着支援・健康経営・地域貢献を一体化させた新しい雇用モデルです。法定雇用率の達成だけでなく、企業の持続可能性やCSRにもつながります。
障がい者雇用にこれから取り組む方も、見直したい方も、自社に合った仕組みづくりのためにぜひ導入をご検討ください。
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