企業の健康経営
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何かとストレスの多い現代社会に生きる私たちには、ストレスとどう向き合っていくかを考えることが必要となってきています。
そこで役に立つのがストレスマネジメントです。
ここではストレスマネジメントの方法や、企業が取るべき対策についてご紹介します。
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目次
ストレスマネジメントとは、ストレスとの上手な付き合い方のことです。ストレスと上手に付き合うためには、2つの必要なことがあります。
それは私たちにストレスを与える要因(ストレッサー)を自覚することと、その要因に対処する方法を考えていくことです。
ストレスは日常生活で避けられないものですが、受け続けると心身の不調や病気の原因となりえます。
安定した心身状態で働き続けるためにも、ストレスマネジメントを学ぶことは大切です。
そもそもストレスというのは、外部から刺激を受けた時に心身におこる緊張状態のことです。
心理学や医学の領域では、心身に外からかかる刺激をストレッサー(要因)といい、心身がストレッサーに対応しようとして現れる反応のことをストレス反応といいます。
私たちの心身に影響を及ぼすストレッサーには、下記のストレスがあるとされています。
・物理的ストレッサー:騒音や混雑、または照明、気温の変化
・化学的ストレッサー:薬物、公害物質、一酸化炭素、酸素欠乏や過剰など
・心理・社会的ストレッサー:仕事上の問題や人間関係、家庭の問題
これらのストレッサーの中で仕事・会社において注意すべきものは「心理・社会的ストレッサー」です。
「心理ストレッサー」は、焦り、苛立ち、不安、怒り、緊張、抑うつ気分などの感情をもたらし、「社会的ストレッサー」は政治経済問題や情報過多な生活、職場の人間関係などによってもたらされます。
心理ストレッサーにはさらに2つの種類に分けられます。
1つは「時間ストレッサー」と呼ばれ、約束の期日が迫っている時に感じるようなストレスです。他の人に遅れてしまわないか、期日を守ることができるだろうかと時間に関しての焦りから生じるものです。
2つめは、課題やノルマの達成をしなければならない時に感じる「課題のストレッサー」です。
この2つは仕事をするにおいて避けて通れないストレッサーと言えるでしょう。
企業による従業員へのストレスマネジメントが求められるようになった背景には、ストレスが原因の心身の不調を訴える従業員が増えていることがあげられます。
社会の大きな変動や、技術の革新、働き方の多様化など従業員を取り巻く環境はかつてに比べて大きく変化し、順応できない従業員が心身の不調のため、退職や長期の休職に追い込まることは大きな社会問題となっています。
企業には従業員の心身の健康を守り、安全に労働できるように配慮する「安全配慮義務」があるため、企業によるストレスマネジメントはますます重要性を増していくことでしょう。
心の健康状態のことをメンタルヘルスといい、それが悪化した状態をメンタル不調と呼ぶことがあります。
適応障害やうつ病などの疾患を抱えた状態もメンタル不調ですが、強い悩みや不安感、ストレスなどの病名がない状態の精神状態もメンタル不調にあると言えるでしょう。
メンタル不調を招く原因は一つではなく、複数の原因により発生すると言われていますが、職場環境で受けるストレスはその原因の一つであると言えます。
近年、精神障害などによる労災請求件数並びに支給決定件数は増加トレンドです。
2010年度の精神障害などによる労災請求件数は1181件、支給決定件数は308件でしたが、それから10年後の2020年度の精神障害などによる労災請求件数は2051件、支給決定件数は608件とほぼ倍増。
従業員の心の健康を守ることは、健全な職場環境を守ることにも繋がります。企業によるストレスマネジメントは従業員を守るだけでなくその企業を守ることとなるのです。
参考:厚生労働省
平成22年度 脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況まとめ
2015年12月の労働衛生安全法の改正により、50人以上の労働者がいる事業所においてはストレスチェックを実施することが義務化されました。
ストレスチェック制度とは、企業が年に一回従業員に対して医師や保健師などによる心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行い、状況と必要に応じて従業員に適切な医療ケアや適切な就業上の措置を行うことを定めたものです。
この検査は従業員自身がストレスに気づくことが目的であり、内容は本人の同意なしでは会社に通知はできませんが、本人の同意のもとで通知された場合、会社は必要に応じて職場環境の改善の検討を行うこととなります。
またこのストレスチェック検査の目的はメンタル不調者を見つけるためのスクリーニング検査ではないことに注意すべきです。
従業員自身がストレッサーに気づくことと、彼らのメンタル不調を未然に防ぐこと、そしてストレスの原因となる職場環境の改善対策がストレスチェック制度の目的の一つです。
一方、このストレスチェック検査の結果である集団分析を元に労働環境の改善をはかることも企業に求められている努力義務です。
この集団とは10人以上の集団を指し、10人未満の場合は個人の情報が特定される恐れがあるため、各従業員の同意がなければ事業所には公開できません。
集団分析とは、ストレスチェックの結果を事業所内の10人以上の集団(部や課、グループなど)ごとに集計して、その集団のストレスの特徴と傾向を分析することを言います。
高ストレス者が多い集団を他の集団と勤務時間や業務内容を絡めて比較。さらに、産業医などの産業保険スタッフの助言を得ながら職場環境の改善をはかり、ストレッサーの軽減に努めることが事業所側に求められています。
ストレスマネジメントを行うことで、次のような効果が見込めます。
・メンタル面での健康維持
ストレスマネジメントを行う一番の目的は、従業員の心身を健康に保つことです。
とくにメンタル面の不調はストレスと大きく関係するため、ストレスマネジメントを適切に行うことで心の不調を緩和し、健康に保つ必要があります。
ストレスマネジメントを実践することで、メンタル面の不調が深刻化する前に対処することができます。
・職場内コミュニケーションの正常化
ストレスを抱えることで、他者にきつく当たるなどコミュニケーションに影響が出る可能性があります。
ひどい場合には、パワハラやセクハラといったハラスメントの原因にもなりかねません。
このようなコミュニケーションの問題は、同時に大きなストレッサーでもあるため、改善しないまま放置してしまうと、悪循環となってさらなるコミュニケーションの悪化を招いてしまいます。
ストレスマネジメントを行うことで従業員一人ひとりのストレスが軽減されれば、職場内のコミュニケーションも円滑になり、ハラスメントが起きにくい職場づくりに繋がるでしょう。
・職場の環境改善
コミュニケーションが正常化し、メンタル面の不調に気づきやすい環境を作ることで、従業員は働きやすくなりモチベーションもアップします。
やる気のある従業員が増えることで、職場は明るく活気のある状態を維持することができ、結果として企業の生産性アップも期待できるでしょう。
ストレスマネジメントを行うことで職場の環境が良くなれば、従業員の休職や離職の防止にも繋がります。
具体的に企業が行えるストレスマネジメントについてご紹介します。
従業員自身がストレッサーを自覚した時、従業員自身にストレスマネジメントの知識があれば適切に対応できます。
また、自覚がなくとも、ストレスチェックなどでその兆候を把握した時に知識があれば戸惑うことも少ないでしょう。
加えてストレスマネジメントの知識があれば、メンタル不調の前にストレッサーを自覚することも容易になります。
そのために重要なのは、普段からのストレスマネジメントの学習です。
企業が積極的にストレスマネジメントやメンタルヘルスの研修や情報提供などのサポートを日頃から行うことが、従業員自身による適切なセルフケアのサポートとなります。
厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によれば、企業が従業員に対して支援を求められていることは以下の3つです。
・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
・ストレスチェックなどを活用したストレスへの気づき
・ストレスへの対処
企業が研修などで上記の理解を深める活動を行うことはとても重要です。
ストレッサーも多種多様なら、ストレス解消法も多種多様です。
自分に合ったストレス解消法を見つけることができるように、普段からセルフケア研修なども含んだストレスマネジメント研修を実施することも大切でしょう。
一方、セルフケアだけでは根本的な解決ができないこともあります。
そのため、従業員には1人で抱え込まず、周囲にも助けを求める必要があると言うことをストレスマネジメント研修などで伝えておくことも大事です。
従業員自身が主体のセルフケアとは異なり、ラインケアの主体は従業員の上長である管理監督者です。
管理監督者に求められることは、まずは不調に陥った部下に気づいてあげることです。
普段と様子が違う、行動パターンが何か変わってきたなど、不調の兆しにいち早く気づいてあげるためには、普段から部下に関心を持って接し、その行動様式を認識しておくことが大事です。
不調の兆しが見えたとしても、それを判断するのはあくまで産業医や保健師、看護師、カウンセラーなどの産業保険スタッフであるので、連携が取れるように社内環境の整備をすることも必要です。
また、部下からの相談に対応することも管理責任者に求められていることです。部下が相談しやすいように、風通しの良い職場づくりも普段から心がけておきましょう。
相談を受けている時、管理監督者は部下の話をきちんと聞き、部下の状況に対する理解を深めることが求められますが、この時に有効なものは「積極的傾聴」という技法です。
積極的傾聴は聴き手の積極的な働き方により、話し手の本音や思考を引き出し、話し手をより深く理解するための方法ですが、独学で習得するには難しいスキルでしょう。
企業には管理責任者がラインケアを適切に行えるように、積極的傾聴の技法を習得できる機会や、ラインケア研修を含んだストレスマネジメント研修を受ける機会などを提供することが求められています。
参考:厚生労働省
ストレスマネジメントにおける専門家の対応は、主に2つあります。
・社内の専門家における対応
厚生労働省では、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」として、セルフケア及びラインケアが効果的に実施されるよう支援を行うほか、健康づくり計画の中心的な役割を担うよう勧めています。
事業場内産業保健スタッフには、産業医のほか衛生管理者や保健師、カウンセラーや精神科医師なども含まれます。
中小企業などの場合は人事労務担当者がストレスマネジメントの社内専門家として兼任するケースもあります。
参考:職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~
・社外の専門家における対応
厚生労働省では「事業場外資源によるケア」として、地域産業保健推進センターなどの活用も勧めています。
社内専門家だけではストレスマネジメントの対応が難しい場合や、社内専門家を置くことが難しい従業員50人未満の小規模事業場などは積極的に活用しましょう。
社外専門家は主にメンタルヘルスを含む健康管理の相談や、健康診断結果についての医師からの意見を徴収するほか、高ストレス者への面接指導などを行ってくれます。
ストレスマネジメントにおける事業場外資源はほかにも、健康保険組合や労災病院、地域保健機関や医師会なども含まれます。
ストレスマネジメントの具体的な手法は、2段階に分けて進めるのが一般的とされており、「セルフモニタリング」で自分自身のストレスを理解し、「ストレスコーピング」を用いて対処します。
・セルフモニタリング
セルフモニタリングは、さまざまな視点から自分自身のストレスを可視化させていく作業です。セルフモニタリングを行う上で注意するべき点は、「具体的かつ客観的」に事実のみを書き出すことです。
この注意点を踏まえて、次の5つを書き出しましょう。
1.ストレッサー、あるいは状況
ストレスの大小に関係なく、多少なりとも嫌な気持ちになった出来事を書き出します。
2.ストレスが生じた際に頭に浮かんだ考え
ここではストレスを感じた際に浮かんだ「考え」を書き出します。あくまで「考え」であり、「感情」や「気分」ではありません。
3.ストレスが生じた際の感情や気分
ここで「感情」や「気分」を書き出します。
4.ストレスが生じた際の身体的な反応
ストレスを感じた直後、あるいはストレス後の身体的な反応を書き出します。動悸がした・眠れない・胃痛や頭痛を感じるなどのほか、些細な変化でも書き出しましょう。
5.ストレスが生じた際の行動
ここでは、他者から見てもわかるような行動の変化を書き出します。ストレス発散のために行った行動も含まれます。自分だけでわからない場合は、家族や同僚などに確認しても良いでしょう。
・ストレスコーピング
ストレスが可視化できたら、ストレスコーピングで対処しましょう。ここではストレスコーピングのうち「問題焦点型コーピング」「情動焦点型コーピング」の2つをご紹介します。
「問題焦点型コーピング」は、ストレッサーそのものに対してアプローチすることで解決を図る方法で、職場環境を改善したり、業務内容を見直したりといった外的要因を調整することが挙げられます。
「情動焦点型コーピング」は、自分自身の考え方や感じ方に対してアプローチする方法で、ストレッサーに対する見方を変えて良い面に注目する、誰かに愚痴を聞いてもらうなど、自分の内面を調整することでストレスの軽減を図ります。
より良い環境のづくりのために企業ができることは多くありますが、2つに絞ってご紹介します。
大勢の人が働く企業において、コミュニケーションの潤滑さは重要です。職場でのコミュニケーション不足は、それがそのままストレッサーとなって従業員を苦しめる原因にもなり得ます。
職場に何か従業員にとってのストレッサーがある時に上長にすぐ相談できる環境づくりが重要です。オフィス内のレイアウトを工夫したり、上長と気兼ねなく1対1で話すことのできるスペースを確保したりなど、コミュニケーションが生まれやすい環境を企業が整備するのはストレスマネジメントの第一歩とも言えるでしょう。
企業による従業員のストレスマネジメントには、福利厚生の整備も不可欠です。
ストレスマネジメントのために、外部のカウンセラーによるカウンセリングサービスなどは直接的に効果があるでしょう。
また、社内で無料マッサージを受けられるようにしたり、運動場やジムなどを整備するなどして執務中のストレスを解消できる場所を提供したりすることでストレスマネジメントの一助としている企業もあります。
また、最近注目を集めている福利厚生がオフィスコンビニです。
オフィスコンビニとは、オフィス内に設置された無人販売スペースから飲み物や食べ物を従業員が自由に購入し、食事や軽食が取れる福利厚生です。
冷蔵庫を設置して美味しいお惣菜やお弁当を購入できるものや、小さなコンビニエンスストアがそのままオフィスに現れたようなものまで、近年はバラエティに富んだサービスが提供されています。
オフィス内に設置するため、24時間オフィスにいる時であればいつでも利用できるのも魅力の一つです。
執務中の息抜きに役立つ飲み物や軽食、栄養バランスに優れたお惣菜などは、執務中のリフレッシュメントとしてストレス解消の手助けとなることでしょう。
数あるオフィスコンビニの中でも、ストレスマネジメントのためにお勧めしたいのが、 「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」 です。
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ストレスマネジメントは、これからの企業経営には欠かすことのできないものです。
従業員の心身の健康を守るだけでなく、企業の健全な発展のためには、従業員が心身ともに健やかに働き続ける環境を提供する必要があります。
ぜひストレスマネジメントを導入して、健全な企業経営に役立ててみるのはいかがでしょうか。
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