農福連携
合理的配慮とは?具体例や範囲、提供までの流れを詳しく解説
障がいのある方が安心して働き続けられる環境づくりは、今やすべての企業に求められる時代となりました。特に2024年4月の法改正により、民間企業にも「合理的配慮」の …
農福連携
公開:2025.04.25
更新:2025.04.29
障がい者の雇用は一定以上の規模の企業に義務づけられています。そのため、「法定雇用率達成のために障がい者を雇用しなければ」と考えている企業は多いかもしれません。しかし実は、障がい者雇用には法的義務を果たすことだけでなく、さまざまなメリットがあります。
今回は、障がい者雇用とはどのようなものなのか、障がい者雇用のメリット、雇用しない場合のデメリットやリスク、雇用方法について解説します。
目次
障がい者雇用とは、障がいのある方がその特性に応じた業務や環境で働けるように配慮し、自立した職業生活を送るための仕組みです。
企業には、障害者雇用促進法により、一定割合の障がい者を雇用する義務があり、各種の支援制度も整備されています。また、単なる法定雇用率の達成にとどまらず、多様性のある組織づくりや、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みといえます。
障がい者雇用は、一般雇用とは採用枠・契約内容・支援体制などにおいていくつかの違いがあります。特に「合理的配慮」や「雇用後のサポート体制」が重視される点が特徴です。以下に、主な違いを表にしましたので参考にしてください。
一般雇用 | 障がい者雇用 | |
---|---|---|
採用枠 | 一般求人枠 | 障がい者枠(専用求人) |
雇用契約 | 正社員・非正規社員など幅広い | 原則、特性を踏まえた雇用形態(短時間・時差出勤など) |
配慮事項 | 一般的な業務管理 | 障がい特性に応じた合理的配慮が必要 |
支援体制 | 特に義務なし | 職場適応援助者(ジョブコーチ)や相談員の配置が推奨される |
助成制度 | 原則なし | 各種助成金・支援制度の対象となる場合あり |
なお、障がい者雇用では「障がい者枠」としての採用が基本です。選考基準や就労条件も個別の特性に応じて設定されます。そのため、本人の能力を最大限に活かせるような働き方が可能になります。
障害者雇用促進法では、一定数以上の常用労働者を雇用している企業に対し、障がい者の雇用が義務づけられています。
2025年4月現在、法定雇用率は2.5%と定められており、常用労働者が40.0人以上の企業が対象です。
この「常用労働者」には、週20時間以上勤務するパートや契約社員も含まれます。また、週20時間以上30時間未満で勤務する精神障がい者については、当分の間、1.0人分として算定できる特例が適用されています(通常は0.5人分のカウント)。
法定雇用率を満たしていない企業には、障害者雇用納付金の支払いや行政指導、企業名の公表といった措置が科される可能性があります。企業規模に関わらず、早めの体制整備と制度理解が求められます。
障がい者雇用は「法的義務」であり、ルールを守ることが大切です。しかし実は、障がい者雇用には、企業にとっても多くのメリットがあります。
ここでは、企業が障がい者雇用を進めることによって得られる主なメリットを紹介します。
障がい者雇用を行うことは、ブランドイメージの向上につながります。障がい者雇用に積極的な企業は、多様性やCSR(企業の社会的責任)に配慮する企業として評価されやすいためです。
・株主や投資家からの信頼を得られる(ESG評価)
・求職者・学生に好印象を与える
・地域社会や行政の信頼を獲得できる
近年、企業の社会的価値は大いに重視される傾向にあります。そのため、「障がい者を受け入れている企業」という姿勢は、ブランド力の強化にもつながります。
障がい者雇用は、業務効率化の実現にもつながります。例えば、これまで社員が分担していた単純作業や補助業務を見直し、役割分担を最適化することも可能です。
・郵便仕分けや文書のスキャンなどを障がい者が担当
・正社員がコア業務に集中できるようになる
このように、業務を棚卸しして役割を最適化することで、社内全体の生産性向上が期待できます。
障がい者雇用は、人材不足の解消にもつながります。特に中小企業や単純作業の多い現場では、障がい者が特定の業務を担い、重要な戦力となるケースもあります。
・定型業務や補助作業を丁寧かつ安定してこなしてくれる
・作業を適切に切り出すことで、既存社員の負担を軽減できる
就労支援機関や民間サービスを活用すれば、自社にマッチする人材の紹介や業務設計のサポートも受けられます。
軽作業や事務補助などの業務を外部業者に委託していた場合、社内で障がい者に担当してもらうことでコスト削減が可能になることもあります。
・日々発生する簡単な業務を内製化
・一定の業務範囲を継続的に任せる体制を整備
結果として、業務の質を保ちつつ、外注費や物流コストの削減にもつながるケースがあります。
障がい者雇用に取り組む企業は、国や自治体からの各種助成金や税制優遇措置を受けられる場合があります。これらを活用すれば、初期導入や定着支援にかかるコストを抑えることが可能です。例えば、以下のような制度や優遇があります。
・特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース):障がい者など就職が困難な方を継続して雇用する企業に支給。
・キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース):障がい者の有期雇用を正規雇用に転換した場合に支給。
・障害者雇用納付金制度による調整金・報奨金:法定雇用率を上回る障がい者を雇用した企業に対して支給。
・税制優遇措置:事業所税の軽減、助成金の非課税化など、雇用促進のための税制上の優遇が設けられています。
制度を正しく理解し、適切に活用することで、より良い雇用環境を整えていきましょう。
障がい者雇用は、企業にとってのメリットだけでなく、障がいのある方ご本人にとっても働きやすく、安定した就労を実現できる制度です。一般雇用では得られにくい「配慮」や「支援」が前提にあるため、働きながら自信をつけ、将来的なキャリアを築く足がかりにもなります。
障がい者雇用枠は、企業が法定雇用率の達成を前提に求人を出しているため、就職のチャンスが得やすいというメリットがあります。
・一般枠と比べて応募条件が緩やかであることがほとんど
・就労移行支援事業所やハローワーク、支援団体からの推薦がある場合も
・定型業務や得意分野に特化した求人も多く、能力を活かしやすい
また、就労支援員や学校関係者がサポートに入ることも多いため、自力での就活が難しい方でも安心して就職活動ができることでしょう。
障がい者雇用では、企業に合理的配慮の提供が義務づけられており、個々の特性に応じた働き方ができます。
・精神障がい者への通院配慮、静かな作業環境の確保
・身体障がい者へのバリアフリー対応、補助器具の導入
・筆談や支援者の同席など、コミュニケーション支援
障がいに理解のある職場で働けるため、不安の少ない環境で仕事をスタートしやすくなっています。
障がい者雇用は、制度上の義務であると同時に、企業の持続可能性や社会的信用にも深く関わる取り組みです。しかしもし、企業が障がい者雇用を怠たれば、法令違反であることはもちろん、経済的・社会的なリスクを抱えてしまいます。
ここでは、障がい者雇用を行わない場合に起こり得る主なデメリットとリスクを紹介します。
法定雇用率を満たしていない企業には、「障害者雇用納付金制度」に基づいて、1人不足あたり月額5万円(従業員100人超の企業の場合)の納付金が課されます。未達人数が多い、長期間にわたって雇用率を下回るといった場合、累積額が大きくなり財務面でのリスクが生じます。
障がい者雇用に消極的な姿勢は、企業の社会的評価に直結します。特に、行政からの指導や企業名の公表があった場合には、取引先や消費者、株主からの信頼を損なうリスクがあります。また、採用活動においても学生や求職者から「多様性への配慮が足りない企業」と見なされ、人材確保に悪影響を及ぼす可能性もあります。
では、企業が障がい者雇用を進めるに当たり、ハードルとなるのはどのような点なのでしょうか。
障がい者を受け入れるためには、バリアフリー設備の導入、業務の切り出し、指導体制の整備など、さまざまな準備が必要です。また、社内の理解や協力を得るための研修や啓発活動も行うことになります。これらを実施するには初期コストや人的リソースを要するため、負担に感じる企業も少なくありません。
こういった部分を理由に受け入れが消極的となり、対応が後手に回ってしまうと、結果的に障がい者雇用がなかなか進まないといったことになりがちです。また、準備不足のまま雇用しても、早期離職やその他のトラブルの原因につながります。
障がい者雇用を進めるにあたっては、事前に積極的な姿勢で情報収集を進め、必要な準備を怠らないことが重要です。
障がい者雇用を進めたいと考えても、「どこから始めれば良いか分からない」「どんな採用ルートがあるのか分からない」といった悩みを持つ企業も多いのではないでしょうか。
ここでは、企業が障がい者雇用を実施する際に活用できる主な方法を紹介します。
障がい者雇用の最も基本的な手段が、ハローワークの活用です。
・障がい者専門の窓口があり、求人票の作成から応募者とのマッチングまでサポートしてもらえる
・就職面接会や職場実習といった支援メニューもあり、ミスマッチを防ぎやすい
・採用後の助成金制度についても案内を受けられる
初めて障がい者雇用を行う企業でも、ハローワークの支援を受けながら段階的に進めていくことができます。
若年層の障がい者を採用したい場合は、特別支援学校への求人票送付も有効です。
・学校側が生徒の特性や希望を把握しているため、企業とのマッチングもスムーズ
・職場体験やインターンを通じて、適性を見極めやすい
・教員が企業との橋渡し役となり、安心して受け入れ準備を進められる
特別支援学校との連携にはこのようなメリットがあります。さらに、パイプをつなげることで、継続的な人材確保にもつながります。
現在では、障がい者専門の求人サイトや転職エージェントも多数存在し、企業と求職者の橋渡しを行っています。
・障がい者雇用の実績やノウハウを持つサービスが多数ある
・専門のキャリアアドバイザーによる障がい特性に合ったマッチングをサポートがある
・オンライン面接や動画説明会など、多様な採用手法を利用できる
企業の採用条件に合う候補者を効率的に探したい場合に向いています。
障がい者雇用をより安定的、かつ定着まで見据えて行う場合には、民間の障がい者雇用支援サービスの活用がおすすめです。
・採用だけでなく、業務設計、定着支援、社内体制づくりまでサポート
・法定雇用率の達成だけでなく、企業のCSRや健康経営にも貢献できるモデルもある
・支援付きの職場実習や外部農園との提携モデルなど、柔軟な運用が可能
例えば、後述する「やさいサポーターズ」は、農業を活用した定着率の高い障がい者雇用支援として注目を集めています。
「障がい者を雇用したいが受け入れ体制の構築が難しい」「採用しても定着しない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。そこで注目されているのが、農福連携型の障がい者雇用支援サービス「やさいサポーターズ」です。
「やさいサポーターズ」は、JAグループの農協観光とオフィス向け社食サービス「OFFICE DE YASAI」が共同運営しているサービスです。農業を通じた継続的な就労と、企業側の負担軽減を両立します。障がい者は全国の提携農園で農作業に従事し、育てた野菜はオフィスに届けられるため、企業は雇用と同時に健康経営・福利厚生の向上も実現できます。そのため、多方面にメリットのある五方良しのモデルです。
「やさいサポーターズ」の導入には、以下のようなメリットがあります。
・ルーティン中心の作業で安心して働ける
・農業支援と障がい者雇用の両立
・野菜の社内提供で健康経営にも貢献
・専門スタッフが定着支援をサポート
・初期費用・運用負担が少なく導入しやすい
障がい者雇用は単なる法令に対する対応ではなく、企業の価値向上にもつながるものです。障がい者雇用に本気で向き合いたいとお考えでしたら、ぜひ「やさいサポーターズ」の導入をご検討ください。
本記事では、障がい者雇用の基本から企業・本人のメリット、雇用しないリスク、採用方法までを解説しました。
障がい者雇用は法的義務にとどまらず、多様性ある組織づくりや社会的責任の実現にもつながる取り組みです。そのため、障がい者の肩を雇ったあとに、どう定着してもらうかまで含めて考えることが重要です。しかし実際には、制度の複雑さや準備の難しさに悩む企業も多いのが現実です。
そうした課題の解決につながるのが、農業を活用した雇用支援モデル「やさいサポーターズ」です。働く場の提供と健康経営の推進を両立できるモデルで、これからの障がい者雇用の新しい形といえます。ぜひ導入をご検討ください。
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