福利厚生制度

-2019.12.20.Fri

福利厚生の導入に活用できる助成金とは? | メリット・注意点も紹介

少子高齢化で労働人口が減少しているなか、各企業の「人材確保・定着」は大きな課題となっています。

そしてその課題解決を目的として、福利厚生に力を入れている企業は多いのではないでしょうか。

政府も労働人口減少による日本経済の衰退に歯止めをかけるため、人材の確保や定着に力を入れている企業へ助成金という形で支援を行っています。

今回は、福利厚生の導入に活用できる助成金のメリットや注意点、具体的な制度について紹介します。

 

福利厚生の重要性

人材の確保や定着を維持するために、福利厚生について真剣に取り組む必要性が高くなっています。少子高齢化で人手不足が深刻な企業は多くあり、一方で労働者は働く場所を選べる立場にあります。

「同じ職種で同じ給料であれば、より良い条件の企業へ転職する」というのは、働く者として当然の選択でしょう。

企業が社員を引き留めるためにできることは、福利厚生を見直し労働環境を整え、より働きやすい環境を心がけることではないでしょうか。

 

福利厚生といえば、家賃補助や慶弔祝いなど現金支給のイメージが強いですが、他にもさまざまな福利厚生があります。

子育てや介護のサポート、非正規社員の待遇改善、在宅ワークの推進、食事・健康サポートなど、福利厚生のバリエーションも豊富になってきました。

政府としても労働人口を一人でも多く増やすために、資金源が少ない中小企業が福利厚生に力を入れられるよう、助成金制度を設けています。

助成金を支給し福利厚生を充実させることは、労働人口の増加にもつながるため、企業だけでなく政府としても力を入れなければならない重要な課題なのです。

 

助成金とはどんな制度?

一般的に、助成金とは厚生労働省が管轄している雇用関係の助成金制度のことを指します。

政府の政策に合わせた活動を行っている企業が、厚生労働省が示す要件を満たすことで支給されます。

他にもよく耳にする制度に、補助金制度があります。

補助金は経済産業省が管轄しており、審査に通れば支給されるという仕組みですので、申請しても必ず支給されるものではないという点が大きな違いでしょう。

 

また、助成金の資金源は雇用保険、補助金の資金源は税金です。

資金源の違いから、助成金の支給は雇用保険に加入している企業に限定されている点も違いの1つです。

少子高齢化による人手不足を解消するために、厚生労働省はあの手この手で労働人口を増やそうとしています。

同じく人手不足が深刻な企業も、社員の確保・定着が大きな課題となっていますので、政府の政策に合わせた福利厚生を再構築することで、人材確保と助成金の支給の両方を目指すことができます。

注意点として、この制度は毎年少しずつ改定されていますので、最新の情報は厚生労働省のホームページで確認するようにしましょう。

 

助成金のメリット

助成金を申請するにあたって、書類作成や社内制度の整備を行わなければなりませんが、助成金が支給されると、企業の信用力やブランディング力が高まるなど多くのメリットを享受することができます。

ここでは、助成金を受けるメリットについて、具体的に紹介したいと思います。

 

返済の必要がない

大きなメリットは、銀行などの融資と違い返済の必要がないという点でしょう。

この理由としては、資金源が企業や社員が支払っている雇用保険料や税金であるからです。

離職者が雇用保険から失業手当をもらえるように、雇用保険料を支払っている企業も助成金をもらえる権利があるということです。

助成金制度は中小企業が優遇された要件になっていますので、中小企業ほど積極的に申請し、福利厚生に役立ててほしいと思います。

 

条件を満たせば受給できる

前述のとおりですが、助成金は補助金と違い、条件を満たせばほとんどのケースで受給できる制度です。

受給できないケースは、

・対象社員が途中で退職してしまった場合
・書類不備があり受理できなかった場合

などの場合です。

しかし、申請するために時間や労力をかけても「要件を満たせばほぼ受給できる助成金」は、「受給できない可能性がある補助金」に比べると、メリットが大きいのではないでしょうか。

 

職場の環境整備に使える

助成金は正社員や非正規社員に対して、福利厚生などを充実させ労働環境を整えるために支給されるものです。

自社の資金では難しい場合でも、制度を利用することで働きやすい職場へと環境を整えることができます。

福利厚生の充実を考えている企業は、助成金制度のある福利厚生に力を入れると良いでしょう。

ただし、助成金ありきで福利厚生を変更することは、あまりオススメできません。

福利厚生を選定する際は、自社の環境や社員のニーズ、資金状況などに見合っていることをしっかり確認する必要があります。

助成金については、実現したい福利厚生のための運営資金を補填するイメージ、と考えるのが妥当でしょう。

 

自由に使える

助成金は、使い道が自由です。

例えば、20万円支給され15万円使用した場合、残りの5万円を返金する必要はありません。用途についても、福利厚生費に充てることも可能ですし、それ以外の目的に使っても構いません。

しかし、売上ではなく雑収入となるため利益と同じ扱いになります。

使いきれずに決算を迎えると、せっかく支給されても一部を税金として納めなければなならなくなります。

そのため、助成金を受け取ったら、福利厚生の運営費などで使い切ることをオススメします。

 

企業に対する信用度が増す

制度を利用するためには、さまざまな要件をクリアしていかなければなりません。

国の政策に合わせた労働環境や就業規則、労働基準などの福利厚生を整えますので、支給決定は「一定のレベルを満たしている企業」と国からお墨付きをもらえたと同じことです。

助成金を支給されることは福利厚生が充実するだけでなく、企業のブランディングにもつながりますので、企業に対する信用度が増し、内外へのアピールとなります。

 

助成金の注意点

福利厚生を充実させたい企業にとって、助成金はうれしい制度ですが、申請する前に知っておくべき注意点があります。

注意点を充分に理解し、企業の業績や資金状況を考慮して申請するようにしましょう。

 

対象制度は廃止が難しくなる

例えば、福利厚生として正社員や非正規社員に関係なく、賞与や家族手当、住宅手当、食事手当などの各手当を支給するため、キャリアアップ助成金の諸手当制度共通化コースを申請した場合を例に挙げます。

数年後に「正社員のみに支給。非正規社員の支給制度は廃止」となると、非正規社員のモチベーションや信頼に影響が出るでしょう。

最悪の場合、業務のパフォーマンスが落ち、結果として企業の業績が下がるといったことにもなりかねません。

このように、一度導入した福利厚生制度を廃止することは、社員の反発なども考えられるため難しくなります。導入以降もしっかりと維持できるよう、事前の計画が重要です。

福利厚生の充実が企業の課題となっているとしても、目先の助成金を得るために、「申請後の資金繰りを見誤ってしまう」という事態は避けるようにしましょう。

 

実際に支払われるタイミングが遅い

助成金は基本的に後払いになり、長いと申請してから1年以上かかることもあります。

福利厚生を充実させるために、社内規定を改定して申請したとしも、実際に支払われるのは、数カ月以上先になるということです。

その期間、企業は自社の資金で福利厚生の運営していくことになるので、ある程度の余裕を持った資金繰りを考えておかなければなりません。

すぐに資金が必要な場合は、銀行などの融資制度を利用して運営し、助成金を返済に充てるという方法があります。

このケースでは、確実に助成金を受給されることがわかってから、融資を受けた方が無難でしょう。

 

申請に関わる書類作成等が大変

申請をするにあたって、さまざまな書類を準備し、福利厚生の制度を整えなければなりません。

そういった労力に加えて、

・申請後5年間は書類の保管義務
・緊急の立入調査に対応
・申請後に追加書類の提出の可能性がある
・問い合わせの対応

など、申請後や受理後にもさまざまな対応をする可能性があります。

福利厚生を充実させることは企業の人材確保に必要な重要項目となりますが、申請時の書類作成や管理、申請後の対応などがあることも念頭に置いておきましょう。

 

福利厚生関連で活用できる助成金

福利厚生関連で活用できる助成金は、さまざまなものがあります。

正社員や非正規社員に関わらず、安心して生活ができる福利厚生を提示している企業に、政府は助成金を支給する仕組みを作りました。

これから紹介する助成金は、大企業だけでなく中小企業が申請しやすい要件となっている場合もありますので、ぜひ参考してみてください。

 

キャリアアップ助成

キャリアアップ助成金は、非正規社員のキャリアアップを促進するために設けられた助成金で、7つのコースがあります。

1.正社員化コース
2.賃金規定等改定コース
3.健康診断制度コース
4.賃金規定等共通化コース
5.諸手当制度共通化コース
6.選択的適用拡大導入時処遇改善コース
7.短時間労働者労働時間延長コース

どのコースも、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者のような非正規社員に対して、企業内でのキャリアアップを促進するために実施した事業主を対象とした制度です。

非正規社員にとって仕事への意欲をアップさせるような制度であり、政府も力を入れていますので、企業としても充実させたい福利厚生の1つではないでしょうか。

出典:厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

 

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金は10のコースに分かれています。

1.雇用管理制度助成コース
2.介護福祉機器助成コース
3.介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
4.中小企業団体助成コース
5.人事評価改善等助成コース
6.設備改善等支援コース
7.働き方改革支援コース
8.雇用管理制度助成コース(建設分野)
9.若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
10.作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)

この制度は、企業が離職率の低下に取り組んだ場合に助成するものです。

特に、介護事業や保育事業は人手不足が深刻ですので、厚生労働省はそれらの事業を行っている企業が、人材確保や職場への定着のために取り組んだ福利厚生に利用できる助成コースを設けています。

出典:厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292.html

 

両立支援等助成金

両立支援等助成金は6つのコースに分かれています。

1.出生時両立支援コース
2.介護離職防止支援コース
3.育児休業等支援コース
4.再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)
5.女性活躍加速化コース
6.事業所内保育施設コース

この助成金の目的としては、

・男性の育児休業取得を促進
・仕事と介護または育児の両立支援
・退職者の再雇用

上記のように労働者を増やす努力をした企業に対し、助成金が支給される制度で、社員にとっても活用したい福利厚生です。

またこちらの助成金は、中小企業への支給が高く設定されています。

出典:厚生労働省「両立支援等助成金」のご案内
https://zentoren.or.jp/download/20190723oshirase.pdf

 

人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)

人材確保等支援助成金についてはすでに述べましたが、その中のひとつである「働き方改革支援コース」は、働き方改革に取り組む上で、人材確保が必要な中小企業が、新たに労働者を雇い一定の雇用管理改善を図る場合に助成するものです。

ただし要件として、

・2019年度(平成31年度)の時間外労働等改善助成金の支給決定を受けた中小企業事業主
・2017年度(平成29年度)の旧職場意識改善助成金の支給決定を受けた事業主

上記及び、その他の要件を満たした企業が申請できることとなっており、全ての企業が申請できるわけではありません。

参照:厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199313_00001.html

 

具体的にどんな福利厚生や取り組みを検討すべき?

ここまででは、実際に福利厚生で活用できるさまざまな助成金をご紹介しました。

では、助成金を活用するためにはどのような福利厚生や取り組みの導入を検討すべきなのでしょうか?

助成金の活用のための具体的な例をご紹介します。

 

仕事と家庭・育児の両立を支える仕組みの導入

両立支援等助成金に関連する福利厚生や取り組みを検討する場合、web会議システムの導入やテレワーク支援を充実させることも一つの施策です。

男性、女性に関わらず、育児や介護のために時短勤務が必要な場合、毎日オフィスに出社することは大きな負担になってしまいます。そこで、自宅にいながら仕事ができるよう環境を整えることも企業側に求められる取り組みの一つでしょう。

育児中の家庭では、子供の急な体調不良によって急に会社を休まなければならないことが多々あります。そんな時に、自宅で仕事ができる環境が整っていれば、有給を消化して休みを取る必要が無くなります。

その他、保育園や幼稚園への送迎、介護施設への送迎などの時間に縛られて勤務しなければならない社員にとって「通勤時間」を他のことに充てられるのはとても効率的でしょう。

時短勤務が必要な社員にとって、Web会議ツールの導入や、テレワーク支援の充実が、継続的な就労の大きな支えとなります。

働き方の多様性が広く浸透してきたなかで、仕事と家庭・育児の両立を支える仕組みや福利厚生は、助成金活用の為にも積極的に導入していくべきでしょう。

 

女性の活躍を推進する取り組み

女性の活躍を推進する取り組みは、両立支援等助成金の「女性活躍加速化コース」での支援対象になります。

女性の活躍に関する取り組みを実施し、女性活躍推進法に基いた数値目標を達成した場合に支給される助成金です。

女性の積極採用や配属、教育育成制度の充実や、女性の雇用形態を見直す取り組みを目的とした助成金の活用も多くの企業で採用されています。

女性の採用活動は積極的にしていても、継続的な就業が難しいことも課題の一つです。

それらの課題を解決する為に助成金を活用するという方法もあります。

妊娠、出産などで継続的な就労が難しい場合に「カムバック支援助成金」の制度を利用した出産後の再雇用も多くの企業で取り組まれています。

「カムバック支援助成金」とは、妊娠・出産などで一度退職した女性社員が、就業可能な状態になったタイミングで復職することができ、適切な人事評価を受けることができる再雇用制度です。

その他にも、産前産後や育児休暇中に利用できる制度の周知に取り組んだり、働き方の相談ができる窓口を社内に設置したりする取り組みも注目されています。

女性が出産や育児を機に働く機会が減ってしまわないよう、女性の雇用や就業環境の見直しを行うことで助成金を活用することができます。

 

お互いをサポートしやすい体制づくりも重要

せっかく福利厚生を充実させても、利用率が低ければ福利厚生の制度が機能しているとは言えません。

福利厚生の休暇の取得率をあげるための施策も必要です。

業務が属人化してしまっていて「なかなか休めない」「他に対応できる人がいない」という状況も多いでしょうが、それでは福祉厚生としての休暇制度を導入しても制度を利用する社員が増えません。

休暇制度などの福利厚生を利用しやすくなるよう、仕事の効率化やサポート体制を整備するために助成金を活用しましょう。

 

チャットツール

メールでのやりとりでは返信までに時間がかかってしまったり、多くのメールの中に重要なメールが埋もれてしまったりすることもあります。

そこで、ビジネスチャットツールを導入する企業が増えてきました。

チャットツールを利用することで、メールに比べより気軽にコミュニケーションを取ることができます。

さらにスマホやタブレットからでも使いやすい手軽さのあるチャットツールは、オフィス以外の場所からでも連絡を確認できたりと柔軟に対応することができます。

ビジネスチャットツールは個人のSNS比較して、セキュリティ対策が取られているものも多く、SlackやChatwork、Talknote、LINEWorksといったツールを導入している企業も増えてきています。

他のツールと連携できる拡張機能やファイル管理機能など、コミュニケーションの円滑化だけではなく、業務効率化にもつながります。

また、チャットツールの活用で業務状況を常にチームで共有することができます。

ひとつの仕事もチームでサポートできる体制を作っておくと、代わりに業務を任せられる人がいるので休暇を取りやすくなるでしょう

 

タスクマネジメントツール

タスクマネジメントツールを利用することで、個人で抱えるタスクの進捗状況をチームで可視化することができます。

個人の業務量や進捗状況をチームで共有していれば、休暇のための業務引き継ぎもスムーズに行うことができるので休暇も取りやすくなるでしょう。

これまで属人化してしまっていた業務をタスクごとに分解して管理することで、チームでサポートできるようになります

タスクの可視化は様々なタイミングでの依頼に対して重要度や緊急度を整理することや対応漏れの対策にも役立ちます。

個人の業務効率化にも繋がるので、ぜひ導入してみることをおすすめします。

 

コミュニケーションの活性化

普段からチーム内でのコミュニケーションを取りやすい環境を作っておくことも大切です。

業務以外のことも適度に共有できる環境があれば、個人的な事情についての理解も得られやすくなるでしょう。

オフィス内でのコミュニケーションの場を提供することも企業の福利厚生や取り組みのひとつです。

福利厚生として社食サービスの導入を通して社内でのコミュニケーションの場所をつくる取り組みも、多くの企業で注目されています。

業務に関するミーティング以外でも、気軽にコミュニケーションを取りやすい場所としてランチや休憩時間を活用することができます。

ですが、社員食堂などはスペースの確保や設備の設置コストもかかり、気軽に導入できるものではありません。

オフィスに冷蔵庫を設置するだけで、商品が定期的に届く「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」などの社食サービスも福利厚生として人気です。

野菜を中心とした健康的な食品がオフィスに届き、毎月新商品が追加されるのでランチや休憩時間での会話のきっかけにもなるでしょう。

「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」などの福利厚生サービスを通して、コミュニケーションの活性化をはかるのもおすすめの取り組みです。

 

まとめ

人材の確保や定着を目指す企業にとって、様々な助成金制度は活用したい制度です。

福利厚生を充実させることで、社員の満足度や業務のパフォーマンスが向上することも期待できますので、福利厚生を見直し、導入すことはメリットが大きいでしょう。

しかし、助成金ありきで福利厚生を検討すると、その後の資金繰りが難航することもありますので注意が必要です。

企業にとって無理のない福利厚生を検討し、結果として受給できたという形を目指すことが理想的でしょう。

 

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