企業の健康経営

-2023.10.24.Tue

健康経営の実現に「健康診断」はなぜ重要?概要や受診率を上げる方法を解説

健康経営の実現に欠かせない健康診断は、従業員の健康を維持するために大きな役割を果たします。

企業は従業員の健康診断を実施する義務があり、職種によっては一般的なものに加えて、いくつかの定められた検診を受けなければなりません。

しかし、健康診断を実施しても従業員が受けてくれないという悩みを抱えている企業もあるようです。

従業員が健康を害するとモチベーション低下や休業といった事態につながり、企業の生産性が低下する恐れがあります。

今回は健康診断について、近年注目されている健康経営の観点からも解説しながら、受診率向上のために企業ができることを紹介します。

健康診断とは

健康診断とは、病気の兆候の有無などを調べ、健康状態を客観的に診断するものです。

上手に活用することで病気の早期発見や予防、健康の維持に役立つため、健康経営の取り組みとしても重要であるとされています。

法律では労働安全衛生法第66条で、従業員に対して実施することが企業に義務付けられているため、必ず行わなければなりません。

違反してしまうと労働基準監督署から指導や勧告が入る、罰金が課せられるといった事態になるので注意しましょう。

従業員側にも受診義務が課せられていますが、罰則はないということもあり、時間がないからなどの理由で受診しない人もいるようです。

しかし、従業員の未受診を放置した結果、健康障害が発生してしまうと、企業は労働契約法第5条において安全配慮義務違反となってしまう場合もあります。

また、健康経営の観点からは、従業員の健康を維持することが企業の利益につながるとされています。

従業員が不健康な状態のまま仕事をしていると、モチベーション低下や病気の悪化につながり、生産性が下がる、休業者が増加するなど労働に支障が出る事態になってしまうでしょう。

健康経営の取り組みとして従業員全員に健康診断を受けてもらい、健康管理をサポートすることは、企業の生産性や利益を向上させていくために重要なのです。

健康診断の2つの種類

企業が義務付けられているものには、「一般健康診断」と特定の職についている人が受けなければならない「特殊健康診断」があります。

健康経営の取り組みを行うかどうかに関わらず、全ての企業が実施しなくてはならないので、対象者や診断内容を把握しておくことが重要です。

2種類の健康診断について詳しく解説します。

一般健康診断

一般健康診断には、5つの健康診断が含まれます。

1つ目は「雇入時の健康診断」です。

常時働く従業員として雇う場合、雇入れの時に行う必要があります。

2つ目は「定期健康診断」です。

常時働いている従業員に対して、1年以内ごとに1回行います。

これに加えて、特定業務従事者には3つ目の「特定業務従事者の健康診断」を行い、配置換えの時と6カ月以内ごとに1回の実施が必要です。

特定業務従事者とは、著しく暑い場所や寒い場所で労働する従業員や、有害放射線にさらされる業務にあたっている従業員などのことです。

自社の従業員について該当者の有無は必ず確認しておきましょう。

4つ目は「海外派遣労働者の健康診断」です。

海外に従業員を6カ月以上派遣する場合は、派遣前と帰国後の国内業務従事前に実施しましょう。

5つ目は「給食従業員の検便」です。

給食の業務を行う食堂や炊事場の従業員に対して検便を実施します。

特殊健康診断

常時、有害な業務にあたっている従業員には、特別な健康診断を実施しなければなりません。

屋内の作業場で有機溶剤を扱う業務や鉛業務などがある場合は、対象の従業員に「特殊健康診断」を、雇入れ時や配置替えの時と6カ月以内ごとに1回行います。

また、粉じん作業を行う従業員には「じん肺検診」、塩酸や硝酸といった歯に有害なガスなどが発生する場所で働く従業員には「歯科医師による検診」が義務付けられているので確認しておきましょう。

健康診断実施の対象

健康経営の観点から企業が健康診断を行う場合、受診義務のある対象は、雇用形態によって異なります。

正規従業員は全員が健康診断の実施対象となる一方、アルバイト・パート社員においては、「雇用契約」および「労働時間」の双方の基準をもとに判断します。

具体的には、1年以上雇用を継続している、ないしは雇用期間の定めがない場合が該当します。また、労働時間については、1週間あたりの労働時間数が正規従業員の労働時間の4分の3以上勤務している場合、健康診断の受診義務を負う対象となります。

企業と直接雇用契約を結んでいない派遣スタッフは、在籍する派遣会社と労働契約を結んでいるため、派遣元企業に実施義務があります。

また、正規従業員の中でも役員については「実際に業務に従事して、従業員と同様の健康リスクに晒されている」労働者性の高い役員が対象です。

例えば、支店長や工場長のようなケースがこれに当たりますが、代表取締役社長など役員である場合は、健康診断の実施義務がないとされています。

ただし、健康経営の観点では法律上の義務がないとしても、労働者性のない役員にも健康管理の重要性は見逃せません。

企業経営を担う役員の健康が損なわれると、健康経営にも悪影響を与える可能性があるため役員にも健康診断の受診を奨励することが望ましいでしょう。

健康経営の観点において、企業が負うべき健康配慮義務はあくまで従業員に対してのみであり、従業員の家族や配偶者については、健康診断の対象外となります。

企業は従業員の健康をサポートすることに重点が置かれており、その範囲を超えることは法的にも実務的にも求められません。

しかし、健康経営は経営視点で戦略的に従業員の健康管理を実施することが目的ですので、広い視野で考えるとその家族も対象と捉えても良いかもしれません。

健康診断の重要性

健康診断は法的に義務付けられているだけでなく、健康経営の観点からも企業と従業員の双方に大きなメリットがあるものです。

いかに重要なものであるか、企業側と従業員側の視点に分けて解説します。

企業側の視点

企業側の重要性としては、まず健康診断は法的義務であるため、実施しなければ罰則の対象となるので注意が必要です。

労働安全衛生法第66条にて、違反した企業には労働基準監督署から勧告や指導があったり、50万円以下の罰金が課されたりといった罰則が定められています。

また、健康経営の観点からも欠かせない取り組みで、企業の利益を向上させる活動につながるものです。

健康経営を行う企業が受けられる健康経営優良法人の認定条件にも健康診断に関する評価項目が含まれています。

従業員が心身の不調を抱えていると、労働意欲や集中力低下の要因となり、出勤していても職務遂行能力が十分に発揮できないプレゼンティーイズムの状態に陥ることも問題です。

東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット「健康経営評価指標の策定・活用事業成果報告書」によると、プレゼンティーイズムの影響は大きく、健康関連のコスト要因として77.9%を占めています。

健康診断を適切に実施すればプレゼンティーイズムを予防することにつながり、コスト削減になるでしょう。

また、従業員一人ひとりがモチベーション高く仕事を行えてパフォーマンスが高まれば、企業全体の生産性向上につながるので、健康診断の実施は企業にとって大きなメリットがあるものなのです。

従業員側の視点

従業員の場合は健康診断を受診しないことで発生する法的な罰則はありませんが、企業は受診を拒否する従業員を懲戒の対象にできるので、必ず受けるようにしましょう。

従業員が健康診断を受けると病気の早期発見やウェルビーイングに役立てることができるメリットがあります。

ウェルビーイングとは心身の健康に加えて社会的にも満たされた状態であるということです。

仕事においてもプライベートにおいてもモチベーション高く活動するためには、健康は重要です。

企業で行われる健康診断を上手に活用して健康管理に役立てることは、従業員が豊かな人生を送るために重要だといえるでしょう。

健康経営と健康診断の関係

健康診断は健康経営の取り組みを行う上でも重要な役割を果たします。

健康経営とはどのようなものかということにも触れながら関係性を解説します。

健康経営とは

健康経営とは、経済産業省が推進している「国民の健康寿命の延伸」の取り組みのひとつで、日本再興戦略や未来投資戦略に位置づけられたものです。

健康経営では、企業が経営的な視点から従業員の健康管理を捉え、戦略的に実践していきます。

会社全体で健康に投資する健康経営は、従業員の活力や生産性を高めていくことが狙いです。

健康経営の取り組みを進めて組織を活性化すれば、業績や株価の向上につながることが期待できると近年注目されています。

健康経営優良法人の認定条件になっている

経済産業省は健康経営を行う企業を認定する制度として、健康経営優良法人認定制度を設けています。

健康経営優良法人に認定されれば、従業員の健康を大切にしている企業であると社内外にアピールできるのが大きなメリットです。

採用などの人員確保や企業イメージの向上によい影響が期待できるので、健康経営を行う企業は認定を目指してみるとよいでしょう。

健康経営優良法人の認定条件は大規模法人部門と中小規模法人の部門で少し異なりますが、どちらにも健康診断に関する項目があります。

従業員の健康の課題を把握して必要な対策を検討するために、健康経営優良法人の認定条件では受診率実質100%を目指すことが重視されているのです。

実質100%とは、病気休職や育児休業などやむを得ない理由がある従業員を除き、直近の定期健康診断を100%の従業員が受診していることを指します。

もし100%でない場合であっても、95%以上なら未受診者に対して適切な受診勧奨を行えば要件を満たすことができるので、早期受診を促すようにしましょう。

健康診断の受診率は?

健康診断は実施しても従業員に受けてもらえない場合があり、実施率と受診率に差が出てしまうことが少なくありません。

平成24年の厚生労働省の労働者健康状況調査によると健康診断の実施率は、500人規模以上の企業では100%、30人規模以上でも96%を超える高い値となっています。

しかし受診率は会社規模に関わらず、80%台に抑えられてしまっています。

従業員の受診率が低いと健康診断実施によるメリットを十分に得ることができず、健康経営を進める上でも支障が出てしまうので、受診率を100%に近づけることが重要です。

まずは自社の受診率を調査し、受診率が低い場合は対策を整える必要があるでしょう。

健康診断の受診率を高めるために企業ができること

時間が無いなどの理由で健康診断を受診しない従業員がいる場合、受診率が低下してしまいます。

従業員の健康状態を把握して健康経営を行っていくためには、受診率100%を目指すことが重要です。

全ての従業員に受診してもらうために企業ができる工夫を紹介します。

受診のメリットを紹介する

従業員に健康診断を受診するメリットを説明すると、受診してもらえるようになるかもしれません。

健康診断を受けることで早期に発見できる病気のことや、健康管理への役立て方などを紹介し、従業員の関心を引き出すようにしましょう。

費用の面でのメリットを説明することも効果がありそうです。

個人で健康診断を受診するとなると、一万円ほどの費用がかかります。

企業が福利厚生として提供している機会を活用すれば無料で受診ができるので、大きなメリットでしょう。

受診しない場合のリスクを伝える

企業が社員に健康診断を受けさせる義務がある一方で、従業員も健康診断を受ける義務があるというのが健康経営における考え方です。

従業員によっては業務の忙しさや保健指導を拒否したいとの理由から、健康診断を受診しない人もいますが、健康経営を目指す上で個々の健康状態を把握し、病気の予防や早期発見を行うことは重要です。

そういった従業員には、健康診断を受診しない場合のリスクを伝えていくと良いでしょう。

さまざまなリスクがありますが、一番のリスクは健康診断を受けないことで、自身の健康状態を把握できなくなることです。

健康診断を通じて自覚症状のない病気や体の異常に早期に気づき、病気の発覚が遅れて重篤な状態に至る可能性を避けることができます。

このように健康診断は生活習慣の問題点を自覚する機会でもあり、中長期的に健康経営を実現させる一手なのです。

医師からの指摘がなければ、生活習慣を改善しようという意識が低くなりがちですが、定期的な健康診断を通じて生活習慣の改善が促されれば、生活全体の質を向上させることも期待できます。

企業が目指す健康経営の観点から見ても、社員の健康状態を把握しておくことは重要です。

健康経営において従業員の健康と仕事の生産性は密接に結びついており、労働時間や業務内容に問題があれば、適切な人事異動によって健康状態の改善へとつなげることもできます。

従業員が健康診断を受けることは、自身のリスク回避だけでなく、企業全体の持続的な発展や健康経営にもつながります。ぜひ社員に健康経営のメリットや健診を受診しないメリットを伝え、受診を促進しましょう。

「健康診断を受診する日」を設定する

健康診断の受診日を会社全体や部署ごとに定めるのも、受診率向上に効果があるとされています。

同僚などの身近な人がみんな受けている、健康経営の取り組みとして上司から受診を促されるといった職場環境を整えれば、受診しようと思う人が増えるでしょう。

健康経営を行う会社全体で、健康診断を受診する雰囲気を作ることは重要です。

受診を促す仕組みを作る

従業員が健康診断を受診したいと思えるように、仕組みや制度を整えている企業もあるようです。

自発的に健康管理を行う従業員にポイントを付与する、家族も受けられる検診や学習会を実施するなど、企業によってさまざまな工夫がされています。

健康経営に取り組みたい企業は、従業員が受診したくなるような仕組みを考えてみるとよいでしょう。

法的義務であることを説明する

健康経営実施の有無に関わらず、健康診断の受診は法的義務であるため、受けなければならないと伝えることも必要です。

法律での罰則には従業員に直接与えられるものはありませんが、企業が拒否する従業員に懲戒処分を行うことは認められています。

雇用契約で「業務命令に従わない場合の取り決め」を定めておき、健康診断の受診を業務命令として扱えば、従業員に処分をくだすことができます。

どうしても受診を拒否する従業員がいる場合は、法律や企業の雇用契約の内容について説明して対処するとよいでしょう。

健康診断の結果はどのように活かす?

健康診断の結果を健康経営に活かす方法を、企業と従業員それぞれの視点から解説します。

まず、企業側は労働安全衛生法の第66条の6項に基づき、健康診断の結果を受診者全員に通知しましょう。

健康診断の内容は個人情報であるため慎重に取り扱い、書面または電磁データで保存します。保存期間は5年間と決まっているので気をつけましょう。

健康診断の結果報告書は、所轄労働基準監督署に企業が提出する必要があります。これは労働安全衛生法の規定に基づくもので、提出に関する詳細情報は厚生労働省のホームページで確認してください。

健康診断の結果、異常の所見がある場合、企業は3ヶ月以内に医師または歯科医師の意見を聴く必要があります。労働安全衛生法第66条の4項に基づき医師のアドバイスを元に、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの適切な措置を講じます。

なお、医師の意見を無視した場合、企業は安全配慮義務違反になる可能性があるため、慎重な対応が求められます。

医師のアドバイスを受ける際、通常は産業医が担当しますが、従業員が50人未満の事業所では産業医の選任は必要ないため、地域産業保健センターの相談窓口などを利用しましょう。

一方、健康診断の結果に二次検査の勧めがある場合でも、労働者には受診義務がありません。

しかし、産業医は労働安全衛生法13条第5項により、勧告権をもっています。産業医は労働者の健康を守る必要があると認めた場合、事業者に対して労働者の健康管理に関する必要な勧告を行うことができます。企業はこの勧告を受けた場合、それを尊重し遵守しなければなりません。従業員にとっても早期発見が治療や症状進行を抑制する機会となりますので、企業の勧めに従い、できるだけ早く二次検査を受けるよう心がけましょう。

健康診断の結果に異常所見がなくても、結果は将来の体調変化を見守る重要なデータとなります。定期的に結果を確認し生活習慣の改善に努めるよう企業が促すことで健康経営への意識が高まります。健康経営の視点からみても健康診断の結果に基づく適切な行動は、労働者と企業の双方にとって利益となることでしょう。

まとめ

従業員の健康状態を把握できる健康診断は、健康経営を行う企業にとって重要なものです。

健康経営優良法人の認定でも重視されるので、健康診断を適切に実施し、受診率を上げる工夫を行っていきましょう。

健康経営の取り組みとして従業員の健康管理を企業全体で行うことは、従業員の生産性を高めることができるので企業の利益向上が期待できます。

従業員の健康維持のために企業ができることは複数ありますが、特に健康に大きく影響する食事面の取り組みは重要です。

食事に関することは、忙しいとおろそかになりがちであるため、企業でのサポートがあると従業員にも喜ばれる傾向があります。

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