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日本における健康経営への注目は年々高まっており、従業員の健康管理に積極的に取り組む企業が増えてきました。
企業の健康経営において重要な存在となるのが、「産業医」です。
この記事では、従業員の健康を支える産業医の、具体的な役割や業務内容について詳しく解説していきます。
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目次
産業医とは、企業で働く従業員の健康管理やケアなどを行うために選任された医師のことです。
産業医は、従業員が快適な環境で健康的に仕事ができるよう、専門的立場から指導・助言を行います。
企業は、産業医というカウンセラーを設置することにより、従業員のストレスやうつなどの早期発見や未然防止、職場環境の改善などを適切に行うことができます。
産業医になるには、医師免許を持っていることが前提です。
加えて、従業員の健康管理などを行うのに必要な医学に関する知識について、厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければなりません。(労働安全衛生法第13条第2項)
産業医は、非常に高い専門性と労働衛生に対する高度な知識が必要とされる仕事です。
2019年4月から施行された働き方改革関連法では、企業は従業員に対して産業医による面接指導や健康相談などを適切に行わなければならないとされました。
企業は事業所の規模に関わらず、メンタルヘルス対策など従業員の健康管理を行う必要があります。
しかし、従業員の健康管理を企業の内部だけで確立するのは困難と言えるでしょう。
産業医は、企業が健康経営を実施していく上で、必要不可欠な存在です。
事業所における従業員の健康の維持や職場環境の管理を行い、労働と健康の両立のために、専門的な立場から指導・助言をすることが産業医の任務です。
産業医は会社と従業員との中立的な立場に立ち、従業員の心身の健康状態や労働衛生を把握した上で、企業へのアドバイスを行います。
第三者視点で業務を行う「企業コンサルタント」のような存在です。
企業における産業医の主な役割は、健康管理、過重労働管理、メンタルヘルス対策です。
そのために、従業員の健康診断やストレスチェック、治療と仕事の両立支援、長時間労働者に対する面接指導、労働環境管理などさまざまな業務を行っています。
企業が健康経営に取り組むことで、事業全体の生産性の向上や優秀な人材の確保につながり、将来の企業価値を高める「投資」としての意義もあります。
このような健康経営の意義からも、中立的な立場で従業員の健康や労働環境を見ることができる産業医は、企業にとって重要な存在となるでしょう。
産業医は投薬や点滴などの医療行為を行うことができません。
医療法において、医療行為を行う場所は病院やクリニック、もしくは患者の自宅などでなければならないと定められています。
事業所はこれに該当しないため、医療行為を行ってはならないのです。
通常の医師は患者・病人が対象であり、病院やクリニックなどの医療施設において診察や治療を行うことが主な業務内容です。
それに対し、産業医は企業内において、その企業の従業員と労働環境が対象であり、従業員の保健や健康の促進が主な業務内容です。
就業環境や健康全般に対する指導や助言を行い、就労制限や就労可能かなどの判断を行います。
医療行為ができないので、治療が必要な場合は医療施設を紹介することになります。
また、通常の医師と産業医とでは立場にも違いがあります。
医師が患者に寄り添う立場であるのに対し、産業医は企業と従業員に対して中立的な立場です。
従業員が健康に働くことができるよう、企業と従業員の双方に対して指導・助言を行い、労働環境の改善を担うのが産業医の主な役割といえます。
企業は労働安全衛生法などの設置要件に基づき、適切に産業医を設置する必要があります。
従業員の人数によって、産業医の選任義務と選任する産業医の人数、「専属産業医」か「嘱託産業医」かが定められています。
産業医の選任義務や人数は、事業所ごとの従業員の人数によって以下のように決められています。
【産業医の選任義務(労働安全衛生法第13条第1項)】
従業員の人数 | 1~49人 | 50~999人 | 1000~3000人 | 3001人以上 |
産業医の選任義務 | 選任義務なし | 1人(嘱託でも可) | 1人(専属) | 2人以上(専属) |
従業員の人数の定義はさまざまですが、「週20時間以上の雇用保険の対象者」を常勤的な従業員としてカウントする場合が多いです。
つまり、正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・アルバイトなどの非正規雇用の従業員も従業員数に含まれます 。
また、従業員の人数が50人未満の事業所には産業医の選任義務はありませんが、「医師等による健康管理等の努力義務」が課せられています。(労働安全衛生法第13条第2項)
産業医には専属産業医と嘱託産業医の2種類があります。
【専属産業医】
専属産業医とは、企業に所属し、常勤する産業医のことです。週3〜4日ほど勤務が多く、複数の事業所で兼任している場合もあります。
常勤的な従業員が1,000人の場合、専属産業医を1人選任しなければなりません。
また、3,001人以上の場合は、専属産業医を2人以上選任する必要があります。
【嘱託産業医】
嘱託産業医とは、企業を訪問する非常勤の産業医のことです。月1回〜数回ほどの訪問日数が基本となりますが、企業から所定の情報を記した必要書類を毎月提出することによって、2ヶ月に1回~数回と頻度を落とすこともできます。
嘱託産業医は、常勤的な従業員が50〜999名の場合に選任可能です。
ただし、有害業務に500人以上の従業員を従事させる事業所においては、専属産業医の選任が必要となります。
産業医の設置による主なメリットは4つです。
【メンタルヘルス不調の発生を予防できる】
産業医を設置することでメンタルヘルスの不調を防止できるとは限りませんが、メンタルヘルスの不調を早期に発見するなど、出来る限りの予防ができます。
産業医は、従業員の健康相談や長時間労働管理、ストレスチェック、休職者の職場復帰サポート、職場環境の確認など、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐためのさまざまな対策を行います。
【従業員の健康意識を向上させる】
従業員自身の健康に対する意識を向上させることができるのも、産業医を設置するメリットの一つです。
従業員へ定期的な声かけを行い、産業医による面談や指導、衛生講話などでメンタルヘルスに関する知識を得ることによって、従業員が自分自身の健康について考える機会が多くなります。
健康を意識し、自己管理ができる従業員が多い職場は、職場に活気が出て雰囲気も明るくなるでしょう。従業員同士のコミュニケーションの機会が増えて円滑な人間関係を保ちやすくなります。
職場の雰囲気や人間関係が良好な仕事は退職者が少ない傾向にあることからも、従業員の健康意識の向上が平均勤続年数の長期化にもつながると言えるでしょう。
【生産性の向上が期待できる】
産業医の設置により従業員の健康を維持・向上させることは、企業の生産性アップにつながります。
従業員が心身ともに健康であり、モチベーションを高く保って取り組むことができれば、業務をこなす集中力の向上やケアレスミスの減少につながり、従業員の労働生産性が向上します。
生産性をアップさせることが、企業の事業全体の業績アップや事業の安定につながりやすいことは言うまでもありません。
【企業のブランドイメージを向上させる】
企業が産業医を設置するなど健康経営を実施していくことによって、経済産業省が促進する「健康経営優良法人」に認定される可能性があります。
健康経営優良法人認定制度は、優良な健康経営を実践している大企業や中小企業などを顕彰する制度です。
健康経営優良法人に認定されるということは、「従業員の健康維持や推進を経営的な視点で戦略的に取り組んでいる法人」として政府から認められるということです。
社会的に優良な評価を受けることで、企業のブランドイメージの向上につながり、社会的な信用や信頼を高めることができます。
また、企業のブランドイメージが向上すれば、求職者や取引先からの評価も高くなり、企業の業績アップにつながる可能性もあります。
産業医の具体的な業務内容として、下記の8つが挙げられます。
産業医は、従業員の健康診断結果をチェックして適切に判断し、必要に応じて従業員との面談を実施して助言や指導をする必要があります。(労働安全衛生法第66条4項)
合わせてストレスチェックの結果や面談の内容から、就業制限や就業の可否判定、治療が必要な従業員がいないかどうかの「就業判定」を行います。
これ以上の労働が困難な従業員に対しては、さらなる健康被害の悪化を防ぐためにも、就業制限や就業判定を適切に行うことが非常に重要です。
また、企業が労働基準監督署に提出する「定期健康診断結果報告書」の確認を行うことも、産業医の業務です。
産業医は、ストレスチェック結果に基づき、高ストレス者に対しての面談や指導を行います。
ストレスチェック制度は、従業員のストレスレベルを把握しメンタルヘルス不調を予防するための施策で、2015年12月に導入されました。
メンタルヘルス不調者や職場復帰者に対するフォローはもちろん、メンタルヘルス不調者が発生しないよう、企業に対し職場環境の改善などの適切な措置の指示を行うことも必要です。
また、ストレスチェックは、従業員常時50人以上の事業所において年1回の実施義務があります。
メンタルヘルスの不調により休職していた従業員の職場復帰の可否を診断することも、産業医の大切な業務です。
復職を希望する従業員について、主治医(医療機関)は日常生活における回復レベルによって「復職可」の診断を行うことがあります。
それに対し、主治医の診断や職場の業務内容等に基づいて、「職場で求められる業務遂行能力まで回復しているのかどうか」を見極めるのが産業医です。
診断の結果次第では、「ドクターストップ=職場復帰に反対する」場合もあります。
産業医は、企業にも従業員にも偏りすぎることなく、中立的な判断をすることが重要です。
従業員が50人を超えた事業所では、衛生委員会を開催しなければなりません。(労働安全衛生法第18条)
衛生委員会は、毎月1回の頻度で定期的に行われている場合が多いようです。
産業医は衛生委員会へ参加し、従業員の健康や安全を守るための意見を積極的に出すことが求められます。
働き方改革に伴う労働安全衛生法の改正により、長時間労働者への面接指導が義務化されました。(労働安全衛生法第66条第8項)
時間外・休日労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、メンタルヘルス不調やうつ病の発症など、健康に関するリスクが高まると考えられています。
産業医は健康診断の結果やストレスチェックの結果などを活用しながら該当者との面談を行い、心身の状況や勤務状況を把握した上で本人に対する指導を行うことが大切です。
必要に応じて、企業に対し職場環境の改善などの適切な措置を行うよう指示します。
産業医は職場の安全配慮の観点と、作業環境管理・作業管理・健康管理の観点から、適切な指導を行うことが大切です。
少なくとも2ヶ月に1回職場を巡視し職場環境の確認を行う、「職場巡視」を行わなければなりません。(労働安全衛生法第15条)
職場環境を全体的に見て、「健康的に働き続けられる職場かどうか」を医学的な視点を持って確認します。
職場巡視で何らかの問題が確認された場合、衛生委員会などで報告し、職場環境の改善を図ります。
衛生委員会や職場において健康管理や衛生管理を目的に、産業医が従業員に対して研修を実施することを、「衛生講話」といいます。
衛生講話は頻度や開催方法などが法律に定められておらず、健康教育の一環として企業からの自発的な要望により開催されます。
衛生講話を実施する場合には、インフルエンザや熱中症、職場で防ぎたい疾病についてなど、季節やそれぞれの職場の課題に応じた衛生講話の目的や内容を考えることも、産業医の業務の一つです。
健康診断やストレスチェックの結果などをもとにしながら、従業員に対して「健康相談」を行います。
また、復職した従業員に対してのフォロー面談を実施することも大切です。
病気やケガ、メンタルヘルス不調など、従業員それぞれが抱える状況に合わせて助言を行い、場合によっては医療機関の紹介を行うこともあります。
健康に関するリスクマネジメントの観点からも、従業員が産業医による健康相談を気軽に受けやすい環境を整備することが大切です。
従業員の健康管理や職場環境の管理を行う産業医は、健康経営を目指す企業にとって非常に重要な役割を担う存在です。
企業は産業医の役割をしっかりと把握したうえで、従業員が健康で快適に働くことができるよう連携していくことが重要であると言えるでしょう。
産業医に活躍してもらうためには、企業が従業員の健康管理に対する高い意識を持ち、産業医が円滑に活動できるようなシステムや環境を整えることが必要不可欠です。
健康経営を目指す多くの企業が食の福利厚生として取り入れているのが、食事補助のサポートです。
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オフィスの中でいつでも購入できるため、ランチにサラダを追加したり、小腹が空いた時にフルーツを食べたりと、健康的な食生活を自然にサポートでき、従業員の健康意識を高めることが期待できます。
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