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-2022.06.23.Thu

エンプロイーエクスペリエンスとは?注目すべき理由や成功事例を紹介

マーケティングの概念として、ユーザーエクスペリエンスやカスタマーエクスペリエンスなどがあります。

これは顧客を対象とした取り組みですが、さらに近年では、エンプロイーエクスペリエンスという言葉も聞かれるようになりました。

エンプロイーエクスペリエンスとはどういうもので、なぜ近年注目されているのかなど、取り組み内容や事例も上げながら詳しく紹介します。

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エンプロイーエクスペリエンスとは

エンプロイーエクスペリエンスは、直訳すると「従業員の経験」という意味になります。

ここでの「経験」とは、ただ単に仕事上・業務上での経験という意味にとどまらず、経営活動・人事施策・職場環境といった全ての場面で従業員が経験できる事柄を言います。

具体的には満足度や会社組織での経験、スキルアップはもちろん健康状態など、会社組織、人事形成の中で経験する全ての要素を含んだ考え方です。

従業員の視点から物事を捉えたもので、人事・労務・総務などの人材管理・育成・採用に関わる部門だけではなく、人材マネジメントに関わる管理職においてもエンプロイーエクスペリエンスを向上させることが重要視されています。

従業員エンゲージメントとの違い

エンプロイーエクスペリエンスは、昨今注目されている「従業員エンゲージメント」とどう違うのでしょうか。

従業員のエンゲージメントとは、会社に対する従業員自身の「企業に貢献したい」という貢献意欲を指す言葉です。

従業員エンゲージメントが高くなれば、会社への貢献度が増して業績アップにつながり、業績がアップすることで従業員のエンゲージメントも高くなります。

これに対し、エンプロイーエクスペリエンスは、従業員が企業や組織の中で経験するすべての要素の総称、つまり、従業員エンゲージメントなどを引っくるめた、全ての取り組みのことです。

従業員エンゲージメントを高めることが、すなわちエンプロイーエクスペリエンスを高めることになります。

エンプロイーエクスペリエンスが生まれた背景・注目されている理由」

近年のAIなどのテクノロジーの進歩は著しく、それに伴いさまざまな業種や市場でも大きな変化の波が起きています。企業では、進歩を続けるAIなどのテクノロジーを活用しながら、エンプロイーエクスペリエンスを向上させ、変化に適応していくことが求められるようになりました。

ではなぜ最近、エンプロイーエクスペリエンスが注目されるようになったのでしょうか。

まずは、エンプロイーエクスペリエンスの歴史や生まれた背景について見ていきましょう。

2015年以降、HR業界で「エンプロイーエクスペリエンス」という言葉が取り沙汰されるようになりました。

日本では少子高齢化の影響で、生産年齢人口が1995年をピークに減少し続け、優秀な人材確保に苦慮する企業も少なくありません。長く続いた終身雇用制度や年功序列、従来のような画一的な働き方も変化を見せ、転職に抵抗感がない世代の労働者も増えました。

2019年から政府の主導で働き方改革が進む中で、労働者一人ひとりが自分らしい働き方を選択できるようになってきたのです。

現代日本では人材が流動的になっており、エンプロイーエクスペリエンスにおいて魅力のない会社であれば、優秀な人材がキャリアの途中で離職してしまうケースも考えられます。

多様な働き方が受け入れられつつある中で、企業は従業員に長く働いてもらえるような環境を整えることが重要です。

また、インターネットの爆発的な普及によって各企業の情報開示が進み、求職者に対しても「この会社で働いてみたい」と思うようなエンプロイーエクスペリエンスを作る必要性が高まりました。

日本でも、各企業で実際に働く社員や過去に働いたことのある社員の生の声を確認できるプラットフォームが現れ、求職者がインターネットでその企業について簡単に調べることができるようになってきています。

つまり、「この会社で働きたい」と求職者や従業員が思えるようなエンプロイーエクスペリエンスを生み出せるか、そしていかに従業員一人ひとりのパフォーマンスを引き出せるかが、人材不足打開のカギと言えるでしょう。

組織力を向上させるためには従業員エンゲージメントを高める施策が必要不可欠です。

従業員のやりがいや仕事に対するモチベーションを向上させ、生産性向上や離職率の低下を図れるとして、エンプロイーエクスペリエンスが注目されています。

エンプロイーエクスペリエンスを高めるメリット

エンプロイーエクスペリエンスを高めると、従業員だけでなく企業にもさまざまなメリットが生まれてくるでしょう。ここからは、エンプロイーエクスペリエンス導入によるメリットのうち、主要なものを3つ紹介します。

1つ目は、従業員の満足度が向上し離職率が低下することです。

エンプロイーエクスペリエンスを高めると、従業員は働きがいや達成感を感じることができるようになり、満足度が向上します。

従業員満足度が向上すると、会社に対する愛着や帰属意識が高まり、離職率の低下が期待できます。

2つ目は、生産性や業績の向上です。

エンプロイーエクスペリエンスを導入することで、従業員のモチベーションが向上し、一人ひとりのパフォーマンスが上がります。

個々人のパフォーマンス向上は、組織や企業の生産性向上にもつながり、結果として企業全体の業績アップが見込めるでしょう。

また、エンプロイーエクスペリエンスを通して従業員のスキルを伸ばすことも企業の業績向上につながる可能性があります。

エンプロイーエクスペリエンスの取り組みは、企業全体の生産性を高めることから働き方改革の一環とも言えるでしょう。

3つ目は採用活動でのアピールポイントになることです。

求職者の中には、インターネット上に掲載された各企業の現社員や元社員のレビューを確認する人も少なくありません。

働きがいや職場環境、離職率の低さをひとつの指標として就職先を探す人も多いでしょう。

エンプロイーエクスペリエンスに積極的に取り組んでいるということは、採用活動時にも大きなアピールポイントになります。

エンプロイーエクスペリエンスの構成要素

エンプロイーエクスペリエンスの構成要素は、「動機付け要因」と「衛生要因」があげられます。

これは、ハーズバーグの「動機付け・衛生要因理論」というものに基づいて導き出された考え方です。

それぞれどういう内容なのかを、以下で詳しく紹介していきます。

動機付け要因

働きがいやモチベーションなど、仕事への満足感につながる要因のことを「動機付け要因」としています。

従業員の動機付け要因の管理は、現場との調整が必要になる部分が多くあると考えられ、対応するのに時間が必要となるかもしれません。

しかし改善されれば、働きがいやモチベーションが向上し、組織力の向上・生産性の向上につながります。

すぐに結果が現れることではないため、長期的な視野での取り組みが必要になることを踏まえて進めていく必要があります。

衛生要因

「衛生要因」とは、従業員の心身の健康面や労働時間、賃金や休暇などの、満たされないことで不満につながってしまう要因のことを言います。

これは、長時間労働やパワハラなどにもつながる要因ですが、放置してしまうと精神疾患やコンプライアンス面にも影響が出る場合もあります。

深刻なケースに陥ることも考えられるため、人事や労務などの会社経営における衛生面を担う部門としっかりと連携して、積極的に取り組む必要があるでしょう。

エンプロイーエクスペリエンスを高める方法

エンプロイーエクスペリエンスを高めるために、現在主流となっている方法を紹介します。

エンプロイージャーニーマップの作成

エンプロイーエクスペリエンスを高めるための手法で、まず考えられるものとしては「エンプロイージャーニーマップ」があげられます。

エンプロイージャーニーマップとは、従業員が入社し退職するまでの間に、自社でどのような経験をし、成長していけるかということをまとめた設計図のようなものです。

「ジャーニーマップ」という名称からもわかるように、旅行の日程表や工程表をイメージするとわかりやすいでしょう。

働く目的を重視する人が増え、働く側が会社を選ぶ時代になってきた現代では、自社でどのような経験ができるのかを統合的に示すことは、優秀な人材を確保するうえでも大変重要と言えます。

「従業員をいかに管理するか」というこれまでの人事施策ではなく、「従業員にどのような経験をして、どのような感情を持って成長して欲しいか」という従業員視点で作成することが大切です。

従業員の職種や職場によって、エンプロイージャーニーマップの内容も異なるため、1種類だけとは限りません。

経験の種類によって従業員を分類し、それぞれの経験価値を整理して作成する必要があり、さらにその後、各部署と共有・連携してブラッシュアップすることも重要です。

エンゲージメントサーベイの実施

エンプロイーエクスペリエンスを高めるために、エンゲージメントサーベイの活用も有効です。

エンゲージメントサーベイとは、従業員に対して行うアンケートのことで「従業員意識調査」や「従業員満足度調査」などがあげられます。

このアンケート結果から、従業員が抱えている問題にいち早く気づき、対処・改善していくことが可能となります。

従業員が何を好ましいと感じているかや、満足度の高い事柄を知ることができ、その分野をサポートし成長させることで、エンプロイーエクスペリエンスの向上につなげるのです。

こうしたことから考えても、エンゲージメントサーベイは1度実施して終わりではなく、定期的な実施がカギと言えるでしょう。

実際に最近では、1週間〜1ヶ月と高頻度でエンゲージメントサーベイを実施する企業が多くなってきています。

また、「エンプロイーエクスペリエンスを高める」という目的をもってエンゲージメントサーベイを実施する際は、早めに対処・対応ができる機能や項目を備えていることも重要です。

エンゲージメントの向上に取り組む

従業員エンゲージメントの向上によって、エンプロイーエクスペリエンスを高めることもできます。

採用が決まり入社するまでの間は、誰しも期待に胸を膨らませているものでしょう。

そのため、従業員エンゲージメントも非常に高い状態であると考えられますが、入社して実際に会社生活が始まると、期待とずれている部分が出てくることがあります。

入社後の業務内容やメンバーの雰囲気などによって、良くも悪くもエンゲージメントに変化が現れるのが普通ですが、その変化をいち早く知り対処することが重要です。

適材適所の人員配置、入社後のキャリアパスと育成によってエンゲージメントを維持するために、企業と現場との距離感がポイントと言えるでしょう。

エンプロイーエクスペリエンスにおける従業員エンゲージメントの考え方は、「会社と従業員が、お互いに高め合うもの」とされています。

従業員が自社でどのような経験ができるのかを考え、そしてその経験が会社の生産性を高めることにつながるように取り組むことが大切です。

従業員エンゲージメントとエンプロイーエクスペリエンスは、切り離せない直結した関係性と言えるでしょう。

健康経営への取り組み

エンプロイーエクスペリエンスの向上のために、健康経営にも注目するべきでしょう。

健康経営とは、経営的視点から企業が従業員の健康管理について考えることを言います。

現代社会ではストレスを感じる場面が多いとされ、従業員が心身ともに健康な状態で、業務に従事できる環境を整えることが重要視されています。

従業員が心身ともに不健康な状態では、生産性の低下や離職などの経営リスクが高くなることが考えられ、そうした経営リスクを抑えるためにも、積極的に健康経営を推進するべきでしょう。

エンプロイーエクスペリエンス向上への取り組み事例

実際にエンプロイーエクスペリエンス向上に取り組み成功している企業を、その内容とともに紹介します。

Airbnb

民泊の仲介サイトとして有名なAirbnb社は、いち早くエンプロイーエクスペリエンスの向上に取り組んできた企業の一つです。

Airbnb社では「人事部」が「エンプロイーエクスペリエンスチーム」と名付けられていて、そのことからも、エンプロイーエクスペリエンスを積極的に取り入れている姿勢が感じられます。

Airbnb社サイトによると、エンプロイーエクスペリエンスチームは、会社・社員の面倒を丸ごと見る部署で、会社の健康と幸せの向上のために日夜働く部署であると明言しています。

「社食を整えること」「最新テクノロジーを整えること」「一流の人材を引き抜くこと」「最高の職場環境になるよう手配すること」といったものが、エンプロイーエクスペリエンスチームの業務だと位置付けているのです。

会社の人事部や総務部というと、実際は見えないバックヤードの仕事が多く、従業員がそれらを目にする機会も少ないのが通常でしょう。

しかし、エンプロイーエクスペリエンス向上のための取り組みによって、現場との距離が縮まり組織力の向上にもつながることが考えられます。

Airbnb社は、社外に向けてエンプロイーエクスペリエンスに取り組む様子をアピールするだけではなく、従業員に対しても、寄り添った責任ある人事施策に取り組む姿勢を明確に伝え成功している事例と言えるでしょう。

Adobe

Photoshopなどのソフトウェアを提供していることで有名なAdobeでも、Airbnbと同じく、人事部を「エンプロイーエクスペリエンス」と名付けています。

意外なことかもしれませんが、Adobe本社があるアメリカでは、日本のように産休や育休などの有給休暇制度が整っている企業は多くありません。

そうした中Adobeでは、他社に先駆けて10日間の出産有給休暇や、産後26週間の有休制度を設立しました。

また、従来までの年次評価を撤廃し、代わりに「チェックイン制度」というものを設けています。

チェックイン制度とは、マネージャーが定期的に従業員と面談を行い、キャリアの相談に乗ったり部下の成長度合いをチェックしたりする制度です。

こうした独自の価値観を、従業員だけではなく採用候補者にも伝え、Adobeカルチャーを浸透させることで、エンプロイーエンゲージメントを高めることに成功している事例と言えるでしょう。

会社の価値観を従業員に浸透させ、従業員の働きがいや成長をサポートしていることが特徴で、こうした取り組みを始めてから株価が大きく成長しています。

スターバックスコーヒー

スターバックスコーヒーでは、エンプロイーエクスペリエンスの一環として、従業員に​​学びの機会を提供しています。

大学の学費支給や、アリゾナ州立大学と提携して80コース以上の授業をオンライン受講など、従業員の能力を伸ばせるような取り組みが特徴です。

これにより従業員満足度やエンゲージメント向上に加え、従業員のスキルアップに成功しています。

衛生要因の向上につながるサービス

先ほど紹介したように「満たされないことで不満につながってしまう要因」のことを衛生要因と呼びますが、エンプロイーエクスペリエンスの向上を考えるとき、この衛生要因の改革は着手しやすい部分と言えるでしょう。

健康管理や賃金・休暇といった、いわゆる福利厚生と言われる部分で、変えようと思えばすぐにでも変えられる比較的レスポンスの速い項目であるのが特徴です。

中でも人気がある食の福利厚生は導入もしやすく、衛生要因の向上に大きく貢献できるものではないでしょうか。

そこで、近年人気の社食サービスについてご紹介したいと思います。

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「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」は、設置型の社食サービスで、累計10,000拠点以上(2024年2月時点)の導入実績があります。

専用の小型冷蔵庫を設置すると、定期的に新鮮な野菜やフルーツ、無添加のお惣菜や軽食が届けられるサービスです。

金額の一部を企業が負担することで、従業員に1個100円からという低価格で健康的な食事を提供することができる仕組みとなっています。

また、しっかりとボリュームのある食事を提供したい場合は「オフィスでご飯」というプランも用意されています。

「YASAI PAY」という電子決済アプリが利用でき、社食サービスの管理・運用面でも手間がかからず好評です。

まとめ

エンプロイーエクスペリエンスは、これからますます注目が高まっていくことが予想されます。

従業員のモチベーションや働きがいが向上することで定着率が上がり、さらに生産性もアップすることで企業は大きく成長できるでしょう。

これからの時代、会社と従業員の幸せのために、エンプロイーエクスペリエンスの導入をぜひ検討してみてください。

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