福利厚生制度
衛生委員会とは?目的や役割、効果的な運用のポイントを解説
衛生委員会は、従業員が長く健康的に働き続けるために必要な組織です。一定の条件を満たしている企業は設置の義務もあります。
しかし衛生委員会を設置していても、その目的や役割について正しく理解していないと、効果的に運用することができません。また形式的なものにとどめていては、従業員の健康を維持することも難しくなってしまうでしょう。
そこで今回は、衛生委員会について詳しく解説するとともに、会議の進め方などについても紹介していきます。ぜひ衛生委員会の効果的な運用に役立ててみてください。
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目次
衛生委員会とは
衛生委員会とは、業務によって従業員の健康が損なわれないよう、環境改善や健康対策をおこなうために、社内外の人間で構成する組織です。
ここでは、社内に衛生委員会を置く目的や条件、設置が義務となった背景などを紹介します。
衛生委員会の目的
前述したように衛生委員会は、職場の安全や従業員の健康を守り、維持・促進していくことが主な目的です。
具体的に挙げるならば「従業員の健康障害や労働災害の防止」や「健康の保持増進」「健康教育」などです。
事業者が一方的に指示や施策をおこなうだけでは、健康障害や労働災害を防止することは難しく、従業員一人ひとりの理解や協力を得ることが防止に繋がる不可欠な要素となります。
そのためにも衛生委員会を設置し、事業者側と従業員側が一体となって取り組むための協議の場として活用していく必要があるのです。
また衛生委員会は、事業者側から従業員に対して協力を仰ぐだけでなく、従業員の意見を反映させる場であることも求められます。
衛生委員会の設置義務
衛生委員会は、労働安全衛生法施行令第9条の条件を満たした職場の場合、必ず設置しなければならないと定められています。
衛生委員会の設置が義務付けられているのは「常時50人以上の労働者を使用する事業場」であれば、すべての業種が対象となります。上記の労働者にあたる従業員は、正社員のほかパートやアルバイトなども含まれます。
設置しなかった場合、事業者に対して50万円以下の罰金刑が課せられてしまうため、従業員が50人を超えそうな場合はすぐに設置できるよう注意しておきましょう。
衛生委員会はなぜ生まれた?
初めて労働者の健康を保護する法律が作られたのは明治時代です。
かつての日本の労働環境は劣悪なものでした。特に明治時代に発展した繊維産業や鉱業、鉄鋼業などの現場では、過酷な労働条件のもとで多くの方が働いていました。
明治初期に衛生学が日本に伝わり、疾病予防に尽力する医師たちが増えつつある中で、工場でのさまざまな職業病疾患の事例が報告されるようになると、政府でも労働者を守る動きが生まれます。
1911年(明治44年)に「工場法」が公布されたものの、産業界からの激しい反発を受けて施行は困難となりました。
しかし当時問題となっていた結核への対策を名目として整備が進み、1916年(大正5年)にようやく施行されました。この工場法が、現在の労働安全衛生法の前身と言われています。
さらに高度経済成長期以降、産業社会の変化にともなう災害防止対策の不足に対応するべく、1972年6月に労働安全衛生法が制定され、安全衛生委員会の設置が義務付けられるようになったのです。
参考:
J-STAGE|産業医と労働安全衛生法の歴史
厚生労働省|第1章 我が国における健康をめぐる施策の変遷
安全委員会との違い
衛生委員会と似た組織に、安全委員会があります。安全委員会は、安全に関する規定や安全計画、安全教育など、従業員の安全を目的とした組織です。
衛生委員会と安全委員会では、設置義務となる事業所の対象人数が異なり、安全委員会の設置は、常時100人以上の従業員規模となる製造業や運送業に対して義務付けられています。
さらに製造業や運送業のうち、木材製造業や化学工場・鉄鋼業、道路貨物運送業や港湾運送業などは基準が厳しく、衛生委員会と同じ常時50人以上の従業員規模の場合に設置が義務付けられます。
衛生委員会の構成員
衛生委員会の話し合いが一方的なものにならないよう、衛生委員会のメンバーの選び方も法律で定められています。具体的な構成は以下のとおりです。
・総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者(議長)1名
・衛生管理者
・産業医
・衛生に関し経験を有する労働者
企業は、各部署の部長や工場長などを統括安全衛生管理者として選任する義務があります。衛生委員会を構成する際は、この統括安全衛生管理者を1名置き、議長とします。
統括安全管理者を一員としない場合は、部長や工場長のほか、副部長など代理を務めることができる方を議長とします。統括管理する者なので、社長を議長としても問題ありません。
議長以外のメンバーは、事業者が選任します。ただし公平性を期すため、事業者に有利になるような人選は禁止されており、また選任するメンバーの半数は、労働組合の推薦した方を選ばなければなりません。
任期は定められていませんが、1年〜2年でメンバーを入れ替えるケースが一般的なようです。また議長以外の人数についても定めはなく、事業規模や審議の内容などに合わせて決めることができます。
衛生委員会の役割と調査審議事項とは
衛生委員会の役割は、従業員の心身の健康や衛生に関する事柄を、従業員の意見を反映しながら調査審議事項に基づいて審議をおこなうことです。
衛生委員会で取り扱う調査審議事項は、労働者の健康や衛生・労働災害、それらに関するさまざまな規定や対策についてなど、全部で14種類あります。
調査審議事項については、こちらの記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
【月別&通年】衛生委員会のテーマの例を一挙紹介!決め方のポイントも解説
従業員の抱える問題やニーズを知るためには、社内ネットなどを活用してアンケートを実施するなど、従業員が自由に意見を伝えられるような方法がおすすめです。
従業員からの意見を施策に反映する際は、施策をおこなうことによってどのような効果が期待できるのかを事前に周知しておきましょう。
また施策後には、改善された点と課題点を社内で共有して、従業員の健康に対するモチベーションを高めることも衛生委員会の役割のひとつです。
衛生委員会の進め方
衛生委員会は、労働安全衛生規則第23条において、毎月1回以上開催するよう定められています。また、開催するごとに議事録を作成しなければなりません。
ここでは衛生委員会の進め方と、開催後の注意点について説明していきます。
なお、衛生委員会の議事録については、こちらの記事でも詳しく説明しています。
会議の進め方
衛生委員会の進め方は、一般的な会議と同じような流れで進めていきます。まずは協議事項に基づいて現状の課題や問題点を共有し、意見やアイデアを出し合いましょう。
出た意見やアイデアは判断基準を軸に協議し、絞り込んでまとめます。最後に決定事項や施策など、社内で周知するべき内容についての確認をおこないます。
また前回の振り返りをおこなったり、次回取り扱う内容についての検討をおこなったりもします。
衛生委員会で取り扱う内容はさまざまですが、以下の4つに分けられます。
・長時間労働やハラスメントなど、年間を通して協議するべき議題
・健康診断や防災訓練など、定期イベントに関する内容
・ストレスチェックや講話内容など、産業医による報告や提案
・月毎に設定しているテーマについて
開催後の注意点
衛生委員会を開催した後は、議事の内容を社員に周知しなくてはなりません。周知の方法は以下の3つのうちいずれかでおこなうよう法律で定められています。
・社内の誰でも閲覧できる箇所に掲示する
・社員に直接書面を配布する
・PDF等の電子データで保管する場合、従業員がいつでもアクセス/閲覧できるようにしておく
また、作成した議事録の保管は3年間と定められています。管理しやすい場所であれば、紙か電子データ、どちらの形式であっても構いません。
衛生委員会のメリット・デメリット
ここでは、衛生委員会を設置することで得られるメリットや、発生しやすいデメリットについて紹介します。
まずは衛生委員会を設置した場合のメリットについて考えてみましょう。
【メリット】職場環境の改善に役立つ
衛生委員会を設置することで、職場環境を見直す機会を得ることができます。
衛生委員会がない職場の場合、就業中の健康管理や安全管理が、個人の判断や注意力任せになってしまうケースも少なくありません。たとえ職場環境に問題があったとしても、従業員同士の愚痴で終わってしまうこともあり、改善につながるきっかけを得られません。
衛生委員会を設置した場合、職場の問題点や課題を定期的に議論して対策することができます。また意識的に職場環境を見直すことで、問題が小さいうちに注意喚起や対策をおこなえます。
【メリット】健康や安全に対するリテラシーが高まる
衛生委員会を設置し、健康や安全に対する活動が活発になることで、従業員それぞれの健康リテラシーや安全への意識が高まります。
従業員の健康維持や促進には、本人の意識が大きく関係するものです。しかし、現状どこか問題を抱えていたり、不調を感じていたりしない場合、全ての従業員が積極的に健康を意識した行動を取れるとは限りません。
問題や不調を感じていなくても健康を意識してもらうためには、普段から健康や安全に関する情報を提供し続けることが大切です。
衛生委員会を設置することで啓発活動の基盤ができ、社内全体の意識向上につながります。
次に、デメリットについて考えてみましょう。衛生委員会を設置することで、以下のようなデメリットが発生する可能性があります。
【デメリット】従業員からの不満
メンバーに選ばれた従業員は、定期的に委員会業務に時間を割かなければなりません。繁忙期などで業務量が多い場合は、メンバー以外の従業員に分担してもらうなど、周囲の協力も必要となるでしょう。
ただでさえ忙しい中で、日々の業務に直結しない衛生委員会の仕事に時間を割かなければならないことに、従業員から不満が出ないとは言い切れません。
衛生委員会の活動を理解してもらうためには、衛生委員会について学ぶ機会を設けるなど、必要性を周知することが大切です。
【デメリット】業務を圧迫する可能性
衛生委員会の開催は、就業時間内におこなうことが原則であるため、通常業務を圧迫してしまう可能性があります。
就業時間内に通常業務を終わらせることができない場合、残業や休日出勤で補う必要があるかもしれません。残業や休日出勤が発生することで従業員の負担が増えるだけでなく、残業代や休日手当による人件費の増加も考えられます。
衛生委員会を設置する際は、業務量を調整したり業務フローを見直したりといった対策をおこない、通常業務への影響が少なくなるよう職場環境を整える必要があります。
まとめ
衛生委員会の目的や運営の方法、メリット・デメリットなどを紹介してきました。衛生委員会の必要性を正しく理解することで、設置によって目指したい職場の状態やゴールをはっきりと設定することができます。
ゴールが設定できれば、課題や改善点を見つけやすくなり、適切な対策を取れるようになるでしょう。
また衛生委員会を効果的に運営していくとともに、福利厚生などを活用して従業員の健康をサポートすることも大切です。
たとえば、健康の維持や促進をおこなう際は日々の食事にも気を配る必要があります。そこで従業員の健康的な食事の継続をサポートするために、多くの企業が食事補助などの福利厚生を活用しています。
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福利厚生として導入することができるため、従業員は1つ100円からといったリーズナブルな価格で利用できます。
OFFICE DE YASAIは社内に専用の冷蔵庫を設置するだけでよいため、社員食堂のように広いスペースを確保する必要がありません。
企業規模に関わらず導入しやすい点は、OFFICE DE YASAIを導入するメリットのひとつと言えます。
従業員の健康を守るために、企業側は正しい知識や情報をもとに対策をおこなっていく必要があります。
今回紹介した衛生委員会の効果的な活用や健康に役立つ福利厚生の導入は、数多くある施策のうちの1つでしかありません。
健康対策の効果を十分に得るためにも、ぜひさまざまな角度から、従業員の健康と安全をサポートしていきましょう。
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