企業の健康経営
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経済産業省(経産省)は、健康経営度調査を毎年行っています。
この調査の名を、健康経営に興味を持っている企業の経営者や企画室、総務部門を担当しているのなら1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
健康経営度調査に興味を持っている方は、この調査に取り組むことで自社に何が得られるのか知っておきましょう。
この記事では、健康経営度調査や取り入れる理由などを解説しています。実施方法やフレームワークが理解できるため、実践での悩みも解決できるでしょう。
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目次
健康経営度調査は、企業が取り組む「健康経営」についての進捗度合いを調べる調査です。
経産省がこの調査を実施する目的は、大きく分けて以下の3点にまとめられます。
1.企業の健康経営への取り組み状況と経年変化を分析
2.健康経営銘柄へのエントリー
3.健康経営優良法人(大規模法人部門のみ)の情報収集
調査目的のうち「1.」は、どのような調査でも該当しますが、「2.」や「3.」の目的は、経産省独自といえるものです。
健康経営銘柄や健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定を取得するためには、健康経営度調査への回答を要します。
「2.」に挙げた健康経営銘柄とは、株式を売買している方ならピンとくるかもしれませんが、株式の「銘柄」のことです。健康経営銘柄とは、東京証券取引所へ上場した企業(ただし、TOKYO PROMarketを除く)から選定します。
企業が健康経営銘柄に挑戦する際は、健康経営度調査への回答が必要です。
「3.」の健康経営優良法人とは、経産省の認定制度で、本来は大規模法人部門と中小規模法人部門の2部門制です。
しかし、この調査の回答は、大規模法人部門の認定審査時に活用されます。大規模法人部門の上位法人は「ホワイト500」の冠が付加され、健康経営に取り組む法人として公的に認められます。
このように、経産省が行う健康経営度調査とは、単に調査を行うのではなく、経産省の他の施策・制度にも関連づけて活用しているのです。
健康経営度調査は企業でも活用できます。この調査の回答は、専門家が組織する委員会で確認され、その後、企業にはフィードバックシートが返されます。具体的な評価項目については以下の通りです。
【健康経営度調査・フィードバックシートの評価項目】
・経営理念・方針
・組織体制
・制度・施策実行
・評価・改善
・法令順守・リスクマネジメント
フィードバックシートは、企業の健康経営の取り組みを評価する、いわば成績表のようなものです。自社の取り組み状況が偏差値と、表やグラフなどで示されます。単年度だけでなく、直近5回分のデータ変遷を見ることも可能です。
さらに、自社だけでなく、同様に調査に回答した企業の中での総合順位や上記の評価項目についても他企業との比較ができます。
第三者目線で健康経営の状況について、客観的なフィードバックが得られる貴重な機会といえるでしょう。
また、各部門だけでなく、時には経営層などと調整し回答する必要があるため、企業経営の中で健康経営の状況について把握する機会になる可能性があります。
健康経営に取り組んではみたいものの、何から着手したらいいか分からないといった企業などは、この健康経営度調査に回答しようと試みることで取り組むべき内容を知ることができるでしょう。
健康経営度調査の結果は、健康経営に関する取り組みを推進する企業であることの証明にもなります。健康経営度調査に参加すると具体的にどういったメリットがあるのか、3つに分けて見ていきましょう。
まず、健康経営度調査に参加すると、健康経営の取り組みで何をすべきなのか、何を重視すべきなのかをより理解することができます。健康経営に取り組んでみたいと思っていても、具体的に何から着手すれば良いかわからない企業にとっては大きなメリットです。
健康経営度調査は主に大企業を対象としていますが、中小企業についても健康経営で重視すべきポイントがまとめられています。
健康経営優良法人「ホワイト500」の認定条件として、健康経営度調査の回答やフィードバックシートの一部の公開を承諾することが含まれており、その内容は経済産業省のウェブサイトで公開されています。そちらでは他社の取り組みや回答企業の順位、業種平均なども閲覧可能ですので、ぜひ自社の取り組みとの比較分析の参考としてみてください。
2つ目のメリットとして、自社の健康経営に対する取り組みで実際にどのような効果が現れたのかを客観的に評価できることが挙げられます。
毎年継続的に健康経営度調査に回答していくと、回答内容やフィードバックシートから年ごとの変化を知ることができます。健康経営の取り組みは効果が可視化しにくい場合もありますが、健康経営度調査の結果によって自社の取り組みからどのような効果が得られたかを分析できるようになるでしょう。
3つ目のメリットは、社会全体の健康に関する取り組みを知ることができる点です。
健康経営度調査には「社会全体の健康に関する取り組み」に関する設問があり、自社だけではなく社会全体でどのような取り組みを行っているか知るきっかけにもなります。健康経営優良法人の認定を目指す企業であれば、SDGsやESG投資など企業が負うべき社会的な責任も求められます。
社会全体での取り組みを知ることで自社の取り組み内容に還元し、今後の健康経営に活かしていきましょう。
実際に健康経営度調査に取り組むには、まず調査票を入手する必要があります。調査票を入手する方法は、上場企業の場合と非上場の場合で異なりますので、健康経営度調査の機会を逸してしまわないよう、よく確認をしておきましょう。
上場企業には調査が開始される際に、郵便やメールにて案内が届きます。
非上場の企業は、健康経営優良法人認定制度の ID発行サイトのホームページで、企業の名称やメールアドレスなどを登録した後に健康経営度調査のページにアクセスできるようになり、調査票もダウンロード可能です。
非上場企業であっても、以前、調査に回答した実績がある場合は、すでに登録されているメール宛てに案内が届きます。
調査に回答したら、専用サイトに電子データをアップロードすることで提出を完了できます。
「健康経営度調査・フィードバックシートの評価項目」でもお伝えした通り、評価項目は「フレームワーク」とも呼ばれています。
この5つのフレームワークがこの調査の内容に占める割合と、その内容を大まかに伝えます。
1.経営理念・方針:30%
2.組織体制:20%
3.制度・施策実行:20%
4.評価・改善:30%
5.法令順守・リスクマネジメント:0
健康経営度調査の5つのフレームワーク、1つ目は「経営理念・方針」です。調査に占める割合は30%と、健康経営度調査の中では重要な項目とされています。
企業の健康経営への理念や方針を明らかにしないと、全社的に動き出せないためでしょう。
健康経営度調査では健康経営について、社内だけでなく社外にも発信しているかどうかという点も評価の対象となっています。
健康経営度調査の5つのフレームワーク、2つ目は「組織体制」です。最重要割合を占める理念や方針を実現するためには組織や体制が築かれていないとなりません。
企業が取り組む健康経営を推進する最高責任者は経営トップかどうか、産業医や保健師の関与について、40歳以上の従業員に対して行った健康診断のデータを健康保険組合などへ提供しているかなどがチェックされます。
健康経営度調査の5つのフレームワーク、3つ目は「制度・施策実行」です。
制度・施策実行は、組織体制と同様に割合は20%ですが、組織体制とは異なり、健康経営の具体的な状況を問う内容です。
従業員の健康課題を捉え、健康経営の推進計画等を作成や健康意識の向上に向けての教育、研修、支援などが行われているかなどが問われます。
健康経営度調査の5つのフレームワーク、4つ目は「評価・改善」です。健康経営度調査の割合は30%で、経営理念・方針と同様に重要とされています。
健康経営の方針や制度、施策を1度定めたら終わりではなく、PDCAサイクルを回しながら向上していくことが求められているのです。
健康経営度調査の5つのフレームワーク、5つ目は「法令順守・リスクマネジメント」です。
法令順守・リスクマネジメントは、法に適合しているかなどをチェックする項目のため、割合は設けられていません。
具体的には定期健診の実施、労働基準法や労働安全衛生法に違反し送検されていないことなどをチェックします。
健康経営度調査では健康経営に関するさまざまな設問が問われますが、ただ調査を受けるだけでなく、その内容をどう活かすかも重要です。
健康経営度調査を次の健康経営に活かすためのポイントを2つご紹介します。
日頃から健康経営の取り組みに力を入れていても、自分ではなかなか現状や効果に気づきにくいものです。
健康経営度調査の回答内容やフィードバックシート、評価結果は、自社の立ち位置を客観的に判断・分析する材料になります。
健康経営度調査を毎年続けていくと、企業が健康経営を実施したことで従業員の生産性や企業経営にどのような効果があったのかを経年的かつ客観的に評価・分析することができます。
健康経営優良法人「ホワイト500」の認定条件には、健康経営度調査の回答やフィードバックシートの一部の公開承諾が含まれており、その内容は経済産業省のウェブサイトで公開されています。
健康経営度調査には、「社会全体の健康に関する取り組み」などの調査項目があり、自社だけでなくサプライチェーン、SDGs、社会全体での健康経営の取り組みについて知ることができます。
つまり、健康経営度調査に参加することで、自社の取り組みはもちろん、社会全体の健康に関する取り組みにも目を向けることができるようになります。
他社のフィードバックシートを参考に、取り組み内容やそれに対する評価などを自社の今後の健康経営に活かすことで、より良い経営に役立てていきましょう。
健康経営度調査は、令和3年度から一部の内容が変更されました。
おもな変更点は以下の5点です。
経営理念・方針、組織体制、制度・施策、評価・改善の4つの項目への回答が必須に
経営理念・方針、組織体制、制度・施策、評価・改善、これらの設問に回答するには、しっかりと戦略を立ててPDCAサイクルを回していく必要があります。
申請フローの簡略化
従来は調査票のほかに認定制度の申請に必要な誓約書を提出しなければなりませんでした。
しかし、これらが統合されたことにより、調査票に回答することで手間なく優良法人の申請までできるようになりました。
ホワイト500認定の必須条件としてフィードバックシートの公開承諾が必要に
公開が承諾された場合、調査票とフィードバックシートの回答内容の一部は経済産業省のウェブサイトに掲載されることになりました。
健康組合など保険者との連携を問う設問や、喫煙対策に関する設問が追加
この変更で、40歳以上の従業員の健康診断結果を健康組合へ提出することや、禁煙外来の治療費補助や喫煙率を下げるための保健指導の実施状況の報告が必要になりました。
新型コロナ対策についてテレワークなど柔軟な勤務形態の整備や、従業員のワクチン接種に対する支援、従業員や同居家族が感染者・濃厚接触者になった場合のルール等が整備されているか確認するための設問が問われることとなりました。
令和3年度には、健康経営度調査のフィードバックシートの内容にも一部変更がありました。
3つの変更点について解説します。
変更点1/健康経営度調査の総合評価がわかりやすくなった
今までの健康経営度調査は、側面ごとの偏差値と総合得点の統計グラフでの記載でしたが、今回の変更で総合得点の偏差値も記載されることになりました。
これにより総合評価がわかりやすくなり、直近5年の評価も振り返ることが可能になっています。
変更点2/評価の詳細分析に、対応する設問番号が追記された
メリットとして、具体的にどういった課題改善が必要なのか、自社の健康経営に対する取り組みで何が強みなのかわかるようになりました。
変更点3/調査票の回答内容が一部経済産業省のウェブサイトに掲載されるようになった
掲載の対象となったのは「健康経営の戦略」、「情報開示媒体」、「重点を置いている具体的な施策とその効果」で、健康経営度調査の評価に加えて具体的な取り組み内容も発信していくことになりました。
健康経営を実現するのであれば、健康経営度調査の5つのフレームワーク(経営理念・方針/組織体制/制度・施策実行/評価・改善/法令順守・リスクマネジメント)を意識しながら取り組みましょう。
しかし、健康経営を実現すると一口に言っても、さまざまな方法があります。
例えば「従業員の健康増進のために、生活に運動を取り入れるための教育や仕組みづくりをする」という方針に決めたとします。
5つのフレームワークの中の「組織体制」「制度・施策実行」だけに絞ったとしても、そのアプローチ方法は、オフィスにスポーツジム機能を設けたり、歩数計などを従業員に配布したりなどの方法があるでしょう。
運動以外にも多くの企業が健康経営を実行するために取り入れているのは、従業員の「食事」へのアプローチです。レストランのように立派な社員食堂を設ける企業や、昼食だけでなく、従業員に朝食や夕食などを提供している企業もあります。
従業員の食事へのアプローチは、どのような年齢・性別の従業員にも対応しやすいことが特徴です。多くの従業員の食事をサポートして、自社の健康経営につなげることができるでしょう。
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企業が健康経営度調査に回答することは、単に経産省の調査に協力することではなく、自社の健康経営の取り組みについて省みたり、他者と比較して不足点を確認したりする貴重な機会です。
毎年の健康経営度調査で気づきを得ながら、柔軟にPDCAサイクルを回していくことで、優良経営法人の認定にも近づくことが期待できるでしょう。
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