働き方改革

-2023.07.20.Thu

ワークシェアリングとは?導入方法やメリットデメリットを詳しく解説

「ワークシェアリング」や「ワーキングシェア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

ワークスタイルが多様化する昨今、ワークシェアリングへの関心が高まっています。

ワークシェアリングを正しく理解して導入することで、生産性向上につながる職場環境を作ることができるともいわれています。

しかし実際にどんな方法なのか、どう取り入ればいいのかわからないという方もいるでしょう。

本記事では、ワークシェアリングの内容やメリットとデメリット、取り入れ方についても紹介します。

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ワークシェアリングとは?

ワークシェアリングは言葉の通り、仕事を複数の人で共有することを指しますが、チームで1つのプロジェクトを進めていくといったようなことではありません。

「これまで1人が担っていた業務を、複数名で分担して行う」というのがワークシェアリングの基本的な考え方です。

また、仕事を分けることで、個々の業務時間を短縮でき、パフォーマンスの向上や生産性の向上が期待できるとされています。

ワークシェアリングの考え方が生まれた経緯は、1970年代から1980年代ごろの欧米とされており、失業者の増加を防ぐために行われた労働改革が元となっています。

1つの業務を複数が担うことで雇用を拡大し、失業者を減らすことが大きなねらいです。

ヨーロッパをはじめとした各国でワークシェアリングの取り組みが行われていますが、特にオランダが行ったさまざまな施策は「オランダモデル」と呼ばれ、失業率の改善に成功した例として評価されています。

なぜワークシェアリングが注目されているのか

ワークシェアリングが日本で注目されるようになった背景は、2000年代初めの失業率の増加が大きく関係しています。

バブル崩壊後の90年代終わりごろから完全失業率が上昇し始め、2002年には完全失業率が5.5%、そのうち15〜24歳の若い世代では10.7%に上りました。

このような雇用情勢の悪化を懸念し、当時の政府はワークシェアリングの検討を進め、企業にも導入を推進してきたのです。

さらに近年は、働き方改革やコロナ禍における景気の悪化により、改めてワークシェアリングの重要性について関心が高まっています。

参考:https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1193.html

ワークシェアリングのメリット

ワークシェアリングを行うことで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。企業側と従業員側に分けて解説します。

企業側のメリット

企業側は主に次のようなメリットを得ることができます。

・労働環境が改善できる
・生産性アップにつながる
・従業員満足度がアップする
・企業のイメージアップになる
・優秀な人材を確保できる

これまで1人が担っていた業務を、複数で分担して行うことで、1人あたりの業務にかかる時間を短くすることができます。

仕事量が分散されれば、従業員はより重要な仕事に時間を使えるうえ、1つ1つの業務にゆとりを持って取り組むことで個々のパフォーマンスが向上し、生産性アップにつながるでしょう。

また、長時間労働や業務過多といった職場の課題が改善されることで、残業や休日出勤などを減らすことも可能です。

ワークシェアリングを通して働きやすい環境を整えることができれば、従業員のストレスが軽減され、従業員満足度のアップも期待できるでしょう。

ワークシェアリングを推進する場合、今まで以上に従業員の数を確保しなければなりません。しかし働きやすい職場として企業イメージが向上すれば人材が集まりやすくなるため、優秀な人材を確保できる可能性も高くなります。

従業員側のメリット

従業員側が得られるメリットは、以下の3つが挙げられます。

・雇用が維持される
・労働時間が短縮される
・ワークライフバランスを保てる

企業は人員確保が必要となるため、従業員にとっては自身の雇用が守られるという大きなメリットが生まれます。個々の業務量が少なくなることで労働時間も減らすことができるため、短時間勤務が可能になるなど、多様な働き方を選択できるようになるでしょう。

また業務過多によるストレスや時間的な拘束がなくなることで、ワークライフバランスを保ちやすくなります。

プライベートの時間をしっかりと確保できることで、心身ともにリフレッシュした状態でゆとりを持って仕事に取り組むことができるでしょう。

ストレスの少ない状態であればモチベーションを高く維持することができますし、高いパフォーマンスによって成果率がアップすれば、仕事に対する満足感や達成感も得られます。

ワークシェアリングのデメリット

新しい方法を取り入れる際は、デメリットも理解した上で導入しましょう。ワークシェアリングで考えられるデメリットは何か、企業側と授業員側でそれぞれ解説します。

企業側のデメリット

企業側に考えられるデメリットは、以下の4点です。

・制度の見直しを行う必要がある
・一時的に生産性がダウンする
・給与計算や勤怠管理の手間が増える
・コストが増える

ワークシェアリングに限らず、既存のシステムを変えるために新しいシステムを導入する際は、すでにあるさまざまな制度や仕組みを見直して作り替える必要があります。

社内制度を見直すには膨大な時間と労力が必要になるため、担当者の負担は大きいでしょう。さらに、新しい制度が正しく機能するのか、制度に穴がないかなど、実際に運用して導入効果が出るまでには長い時間を要することも考えられるため、一時的に生産性が落ちてしまう可能性もあります。

また、さまざまな雇用条件の従業員が増えると、給与計算や勤怠管理の手間も増えるでしょう。

さらに雇用の増加に伴って、社会保険料の負担額や教育にかかるコストなど、一部のコストが増加することもデメリットの1つです。

従業員側のデメリット

従業員側のデメリットとして、次のようなことが挙げられます。

・引き継ぎの手間が増える
・収入が減る可能性がある
・給与や待遇に格差が生まれる

業務分担により引き継ぎ作業が発生し、1人で行う時とは異なる手間が増えます。

引き継ぎや共有が適切に行われなかった場合、業務の進行を妨げてしまう可能性や、人間関係のトラブルに発展する可能性も否定できません。

また、業務にかかる時間が減ったり残業や休日出勤の必要がなくなったりすることは、結果的に収入の減少を招いてしまうと考えられます。

多様な勤務時間や勤務形態が取り入れられることによって、従業員間の収入格差や待遇の差が生まれる可能性もあります。

これらの問題を解決するために、給与制度の見直しや賃金アップなども検討していく必要があるでしょう。

ワークシェアリングには4つのタイプがある

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ワークシェアリングは、分類すると4つに分けることができます。このうち、2004年に厚生労働省が発表した資料によると、日本政府は主に緊急対応型と多様就業型の2つを柱とした施策に力をいれているようです。

参考:https://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0630-2.html

・雇用創出型

雇用創出型は、ワークシェアリングの基本である「失業率の改善」を目的として行われる施策です。

今いる従業員の労働時間を短くしたり業務量を減らしたりすることで、新たな雇用の受け皿を作ることができます。

また時短やパートタイムの従業員を多く雇い入れることで、失業者を減らし、求人倍率を高めることにつながります。

・雇用維持型

雇用維持型は主に中高年など、定年によって離職する年齢層の雇用維持を目的として行います。

労働時間を短くして定年の延長や再雇用などを行うことで、体力的にも長時間労働が難しくなる中高年層の離職を防ぐことができるでしょう。

また中高年層が組織に残ることで、豊富な経験や知識の喪失を防ぐことができますし、後進の育成にも大きく貢献してくれます。

・緊急対応型

緊急対応型は、減少した仕事量を今いる従業員で分け合うといった方法で、雇用維持型の1つとも考えられます。

景気の悪化などで一時的に売上や生産量が減ってしまった際に、所定の勤務時間を短くすることで、人員削減を行うことなく人件費を抑えることができます。

事業を継続しながら雇用も維持することができるため、生産体制を変更する際にも活用できる方法です。

・多様就業型

多様就業型とは、いわゆる多様な働き方を取り入れることで新しく従業員を雇い入れたり、離職を防ぐことができたりする方法です。

雇用形態を「短時間勤務」「在宅勤務」「兼業・副業」の3つに分類し、それぞれに必要な制度を取り入れることで、育児中や介護中といった従来であれば勤務の難しかった人材を雇うことができます。

ワークシェアリングの取り入れ方

ワークシェアリングを取り入れたい場合、多くの従業員が同じように業務を遂行できる環境を整えることが重要です。

時短勤務を導入して雇用を拡大しただけでは、仕事の進め方や成果にムラができてしまったり、生産性の低下につながったりする可能性があります。

ワークシェアリングを取り入れる際は、次の4つに沿って段階的に進めていきましょう。

現状の把握

効果的にワークシェアリングを行うために、社内のどの業務に人が足りていないのかや、業務が集中してしまっているところはどこなのかを把握する必要があります。

人手が十分足りているところに新たな人材を投入しても、ワークシェアリングの導入効果は薄くなってしまうばかりか、不要なコスト増加を招きかねません。

1つの業務にかかっている人数や時間、コストまで細かく確認し、業務が集中している場合はその理由も確認しておきます。

また、ワークシェアリングを行うことで期待する効果や、達成したい業績目標なども、あらかじめ定めておきましょう。

業務の洗い出し

次に、どのような手順で業務が行われているのか、業務フローに無駄なところはないかなどを確認します。

洗い出しを行うことで、必要のない業務やコストを削減して効率化を図るとともに、その業務がワークシェアリングに適しているかどうかを選別することができます。

また削減できる部分だけでなく、手順を追加したりコストをかけたりすることで改善できそうな部分についても、洗い出しておきましょう。

業務の一般化

業務の洗い出しが終わったら、実際にワークシェアリングを行うために、運用手順の作成や社内体制の整備を行いましょう。

どの業務を何名で担当し、どのようなフローで行うのかといったことはもちろんですが、トラブルが起きた時の対処法や責任の所在なども細かく決めておきます。

またそれらをマニュアルにまとめる際は、属人化が起こらないよう1つ1つ丁寧に言語化していくことが大切です。

専門用語の多用は避け、新人社員にもわかりやすい言葉を使うと、業務にあたる際の混乱や誤認を防ぐことができます。

マニュアルの作成とともに、ワークシェアリングを行う目的や目標を社内に周知しておきましょう。

メリットやデメリットを伝えて社内全体の理解を得ることで、スムーズに運用を始めることができます。

効果の測定と改善

ワークシェアリングを導入した後は、どのような効果があったのか、あるいはなかったのかを定期的に測定します。

評価のポイントは次の2つです。

・定めた目標が達成できているか
・導入前の課題が解決しているか

効果が得られていない場合は改善点を見つけて修正し、効果が得られている場合も、その要因を明確にして精度を高めましょう。

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ワークシェアリングを導入することで、たくさんの従業員が業務に関わることになります。

人が増えると、組織の統率が取りにくくなったり、従業員同士の連携がうまく取れなくなったりといったことも起こりやすくなるでしょう。

統率や連携をスムーズに行うためには、日頃から社内のコミュニケーションが活発であることが重要です。

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まとめ

単なる時短勤務制度として導入しただけでは、ワークシェアリングの利点を十分に活かすことはできないでしょう。

自社の課題や問題点をきちんと把握することが、ワークシェアリングの導入を成功させる重要な基盤となります。

ワークシェアリングを正しく導入し、雇用の拡大だけでなく業務改善や従業員の満足度アップなど、さまざまな効果を実感してみてください。

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