福利厚生制度

-2024.07.30.Tue

企業が行うべき熱中症対策とは?福利厚生としての提供も

毎年、猛暑日が増えているように感じる日本の夏。今や季節も、四季から二季になりつつあるともいわれています。

特に、今年は早くも梅雨時に猛暑日を迎えるなど、地球温暖化の影響も大きいようです。

実際、満員電車のなか、熱中症で倒れて救急車で搬送される方のニュースをよく耳にします。

今後は、企業も福利厚生などで熱中症対策を検討する必要がありそうです。

この記事では、福利厚生としての提供も考慮に入れつつ、企業が行うべき熱中症対策について解説します。

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毎年多く発生する「熱中症」

熱中症とは、暑熱環境での人間の身体適応の障害で起こる症状全般の総称です。

この熱中症は、大きく分けて3つの種類「労作性熱中症」「非労作性熱中症」「浴室熱中症」があり、仕事中の発症は「労作性熱中症」に該当します。

日本における熱中症の年間件数は、2010年以降、大きく増加しています。

総務省消防庁の報告データによれば、2018年には95,137人が記録的な暑さで救急搬送されています。

その後、2019年・2020年は6万5,000人前後を維持していましたが、令和5年の5月〜9月には、91,467人と過去最多に迫る勢いを見せました。

気候変動を考慮に入れると、屋外作業の多い業界はもちろん、リモートワークから出社スタイルが増えた企業も、福利厚生などで何らかの熱中症対策を講じる必要があるでしょう。

参考:令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況 |総務省

熱中症に必要な対策とは

熱中症に必要な対策は、予防と対処の2つに大別できます。

主な予防対策は次の4つです。

1.涼しい服装で作業する
2.日陰を利用する
3.日傘や帽子を活用する
4.水分・塩分をこまめにとる

体調の悪いときは特に熱中症を発症しやすいため、少しずつ熱さに体を慣らすことが大切です。

屋外作業の多い建設業や日陰のない地域で配送する運送業などの業界は、企業側が福利厚生として予防対策となるアイテムや飲料を提供するとよいでしょう。

熱中症になった時の応急処置は、まず意識障害の有無を確認する必要があります。

意識障害がある場合は速やかに救急隊を要請し、その後は次の3つを実践しましょう。

1.涼しい場所に避難する
2.衣服をゆるめて身体を冷却する
3.水分を補給する

経過観察で症状が改善されなければ、意識があっても医療機関へ搬送したほうが安全です。

屋外作業や出張・外回りの多い企業は、福利厚生として予防グッズを提供するほか、休憩所の提供や熱中症を発症した場合の治療費負担などを福利厚生とすることも検討しましょう。

企業が熱中症対策を講じることの重要性

企業が、福利厚生を含め熱中症対策を講じることの重要性は主に4つあります。

健康・安全性の確保

福利厚生などで対策を講じれば、従業員の健康や安全性を確保できます。

熱中症は命に関わるケースもあり、状況によっては企業の社会的責任を問われる事態も想定しておかなければなりません。

従業員が健康で安心して仕事を進められるよう、熱中症の予防対策となる福利厚生の導入を検討しましょう。

損失の回避

損失を回避する意味でも、企業の熱中症対策は有効です。

特に、換気口・ダクト付近や炎天下で作業するような業界では、従業員が熱中症で倒れたら、その作業がストップすることになります。

人手不足が慢性化している企業の多くは、その従業員が復帰するまで作業を進められず、大きな損失を被ることになるでしょう。

福利厚生などで組織として対策を講じて損失を未然に防ぎ、労働生産性を維持していきましょう。

法的リスクの低減

企業が福利厚生などで対策を講じれば、法的リスクの低減にもつながるという点も重要です。

労働法令では、半月ごとの作業環境の気温や湿度測定、冷房の設置、通風の確保や飲料水・塩分の準備、半年ごとの特定業務従事者健康診断の実施などを企業に義務づけています。

実際、熱中症で死亡した従業員の両親が、企業に対し損害賠償を請求したケースもありますので、注意が必要です。

企業評価の向上

福利厚生を含めた熱中症対策で、企業が従業員の健康や安全をきちんと考えていることを社会的にアピールできます。

特に、福利厚生で組織としての体制を整えておけば、社会的な信頼度や企業評価も向上し、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。

さらに、「自分たちのことを考えてくれている」と感じて従業員満足度も向上し、離職率の低減も期待できます。

知っておくべき「安全配慮義務」

労働契約法では、従業員が安心して健康な状態を保ちながら働けるよう「安全配慮義務」を定めています。

労働契約法第5条:使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする


この安全配慮義務に違反しても特に罰則はありません。

しかし、先述のとおり、本人やその家族から訴訟を提起される可能性があります。

裁判事件になれば、手続きや答弁のための時間やお金などのコストが必要です。

もし敗訴したら世間からの信用を失い、企業のイメージダウンにもつながるでしょう。

熱中症を発症しやすい業務に携わる企業は、大事にならないよう福利厚生などでセイフティーネットを張っておくことが重要です。

職場で従業員が熱中症になった場合は労災になる?

 職場で従業員が熱中症になった場合は、要件を満たせば労災認定されます。

労働基準法では、企業など使用者の指示で作業した従業員に、その業務に内在する危険や有害な要因によって外傷や疾病があった場合は、使用者の療養費・休業補償費を義務づけています。

ちなみに、企業が安全配慮義務を怠っていなくても、熱中症で労災認定される要件は次の2つです。

<一般的認定要件>
1.業務で突発的に起きたことを時間や場所によって明確にできる
2.原因となる性質や強度が身体に作用した部位と、熱中症を発症するまでの時間的間隔との間に因果関係がある
3.業務ではないほかの原因によって発症・悪化したものではない

<医学的診断要件>
1.作業条件と温度・湿度条件等の把握
2.けいれんや意識障害など一般症状の視診と体温の測定
3.作業中に発生した頭蓋内出血や脳貧血、てんかんなどによる意識障害などとの鑑別診断

なお、労働基準法施行規則では、「物理的因子による疾病」について「暑熱な場所における業務による熱中症」との記載があります。

暑熱な場所かどうかの判断基準は、「生活環境より職場が暑いまたは身体への負担が高く、熱中症になりやすい」かどうかです。

業務上の疾病かどうかは、作業場の環境や労働時間、作業内容、従業員の身体や被服の状況、作業場の温度や湿度などを総合的に勘案して決定されます。

寝不足や自宅の高温多湿を原因とする個別的な要因で熱中症を発症した場合は、労災とは認定されません。

企業が取るべき熱中症対策とは?福利厚生として提供できるものも

 この章では、福利厚生として提供できるものも含め、企業が取るべき6つの熱中症対策についてくわしく説明します。

暑さ指数(WBGT)の活用

福利厚生を検討する前に企業がすべきことは、暑さ指数(WBGT)の活用です。

WBGTとは、「Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)」の略称で、1954年に熱中症予防の目的でアメリカが指標として提案しました。

人体と外気との熱との関係から、3要素「気温」「湿度」「日射などの輻射熱」を取り入れ、乾球温度計・湿球温度計・黒球温度計の測定値によって算出します。

屋内と屋外のWBGTは異なり、計算式は下記のとおりです。

<WBGT計算式>

屋内WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
屋外WBGT=0.1×乾球温度+0.7×湿球温度+0.2×黒球温度


目安として、WBGTが「28以上」になると熱中症を発症しやすく、特に関東・関西圏は、発症リスクの高い数値になる日が多いようです。

厚生労働省も、作業場にWBGT測定器の設置を推奨していますので、屋外作業や外回りの多い業界・業種に関わる企業は、福利厚生よりも測定器の購入を検討すべきでしょう。

休憩スペースの提供

休憩スペースの提供は、福利厚生として導入できます。

たとえば、作業場付近での冷房設備を備えた休憩スペースや日陰・テントなどを活用した涼しい休憩場所の設置などです。

水分や塩分を定期的に補給できるよう、夏季限定の福利厚生としてミネラルウォーターやスポーツドリンクなども備え付けると、さらに熱中症の発症リスクを抑えられます。

ドリンクや食事の提供

福利厚生として、ドリンクや食事の提供するのもおすすめです。

先述の休憩スペースなどに、浸透率のよいドリンクや手軽に栄養補給できる軽食や弁当などを置いておけば、暑さで体力を消耗した従業員も手早く水分や栄養を補給できるでしょう。

熱中症は、猛暑続きで体力が落ちていると発症リスクも高まるため、福利厚生でこまめに水分や栄養を補給できる環境を整えておくと安心です。

服装の工夫や体を冷やすグッズの提供

福利厚生として、服装の工夫や身体を冷やすグッズなどを提供するのもよいでしょう。

昨今は、熱中症対策となるファン付きの作業着や身体を冷やすアイテムも、市場に多く出回っています。

インターネットの通販で、ファン付き作業着は6,000円〜10,000円程度、携帯扇風機は1,300円~4,000円程度、首元を冷却するクールリングは数百円程度です。

企業が、福利厚生として毎日の作業で使用できるグッズを提供すれば、熱中症の発症リスクを抑えられるでしょう。

健康管理に関する支援

健康管理に関する支援も、福利厚生として導入できます。健康診断だけでなく、専門医による健康相談や健康管理の指導など、医療・健康関連の福利厚生を充実させるのです。

昨今は、従業員のストレスチェックや健康診断の義務化もあり、企業は従業員の日常的な体調管理にも気を配る必要があります。

熱中症は、体調不良や寝不足、朝食抜きや二日酔いなどが原因で発症することも少なくありません。

持病のある従業員に異常が認められた場合は、専門医と相談のうえ、本格的な夏を迎える前に部署の転換や作業場を変更すると、熱中症の発症を未然に防止できます。

毎年、本格的な夏を迎える前に熱中症予防法や緊急時の対応、過去の事例などを共有できるセミナーなどを開催してもよいでしょう。

このほか、企業が産業医や衛生管理者、衛生推進者(安全衛生推進者)と一体になって予防策を検討し、いざという時に連携できるシステム作りの構築も大切です。

労働時間の調整など

屋外での作業の多い企業は、福利厚生として労働時間の調整も検討しましょう。

高温多湿な作業場や炎天下での業務は熱中症を発症しやすいため、比較的涼しい早朝に作業を集中させ、昼休みを長く取れるようにするのも効果的です。

労働時間の調整だけでなく、必要に応じて夏の間は代謝率レベルの高い作業を控える、作業場所の変更なども検討しましょう。

健康管理に「食事補助」の福利厚生もおすすめ

暑さの厳しい夏は、従業員の健康管理に「食事補助」の福利厚生を導入するのも効果的です。

日本は、毎年、猛暑日の日数が長期化している傾向にあります。

東京都や横浜市など関東圏もさることながら、大阪・名古屋などの関西圏も、2020年以降は猛暑日の日数が増加している状況です。

暑い日の続く夏は、体力に加えて精神的にもストレスがかかります。というのは、室内外で5度以上の温度差があると、自律神経が乱れやすくなるからです。

自律神経は、人間が自分で調整できないため、暑さによる自律神経の乱れは「夏季うつ病」とも関連があるといわれています。

そんななか、従業員のストレスを軽減できるのが、食の福利厚生によるヘルシーでおいしい食事の提供です。

栄養面を配慮した食事は免疫力を高め、「おいしい」という感情は「幸せホルモン」とよばれるセロトニンの分泌を活発にします。

1日のなかで最も気温の高い時間帯に昼食をとるために外出したり、コンビニやお店まで買いに行ったりするのは大変です。

食事補助の福利厚生を導入すれば、暑さ対策だけでなく健康経営の一環にもなります。

参考:うつ病100万人時代―うつ病の診断基準と夏季うつ病―

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食事補助の福利厚生でおすすめしたいのが、置き型健康社食「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」です。

本サービスの2つのプラン「オフィスでやさい」と「オフィスでごはん」は、暑い夏も外出せずに活用でき、栄養素や食事の時間帯で自由にメニューを選べます。

「オフィスでやさいは、」はサラダやフルーツがメインなので、暑さで食欲のない時におすすめです。

「オフィスでごはん」は、栄養士の監修によるレンジで温められる惣菜中心で、ハードな屋外作業を担う従業員も、十分満足できるボリュームです。

いずれも1品100円から利用でき、メニューも毎月リニューアルされるので、飽きずにランチを楽しめます。

ビタミン豊富なフルーツや、栄養バランスのよい惣菜を食の福利厚生として提供すれば、従業員からも喜ばれるでしょう。

まとめ

今や地球温暖化ではなく、地球沸騰化とよばれる時代です。

猛暑日の続く夏は、出社するだけで体力を消耗します。

コロナ禍以降は、真夏でもマスクを着用している方が依然としていらっしゃるようです。

熱中症は、いつ誰が発症しても不思議ではありません。

福利厚生として、予防対策となるグッズの提供や労働時間・休憩スペースを配慮するのも効果があるでしょう。

しかし、企業が健康経営を視野に入れ、日ごろから熱中症にかかりにくい身体作りや免疫力アップを目指すなら、食の福利厚生がおすすめです。

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