企業の健康経営

-2022.10.24.Mon

健康経営戦略マップとは?役立つポイントや作り方を解説

今や大企業だけでなく中小企業も含めた多くの企業において、国の推進する健康経営に注目を寄せています。経済産業省によると、特に優良な健康経営をしているとされるホワイト500認定法人では、4社中3社が健康経営戦略マップを作成しているそうです。

健康経営を実施し、ホワイト500認定のように外部からの評価を目指すのであれば、健康経営戦略マップの作成は必須事項といっても過言ではないでしょう。

本記事では、健康経営戦略マップの全体像を明らかにし、作成するメリットや作り方まで詳しくご説明します。

参考:「健康投資管理会計ガイドライン」について

健康経営とは

健康経営とは、企業が従業員の健康改善の取り組みをすることで、経営課題を解決するという考え方です。

日本では長らく長時間労働や超過労働などにより、私生活ばかりか従業員が自分の健康を犠牲にして働くことが当たり前になっていました。

しかしようやく政府がこの事態を重く見るようになり、「従業員の健康管理」は企業にとっての経営的な課題であるととらえられるようになりました。

従業員の健康問題に対して、経営的な視点から戦略的に取り組むことで、経営課題を解決できると考える「健康経営」を推進する施策が政府主導ですすめられています。

企業が健康経営に取り組むことで、従業員が心身ともに健康に長く働くことができるようになり、離職率が下がったり、生産性が向上したりというメリットが生まれます。

また取り組みがうまくいけば「健康経営優良法人認定制度」や「健康経営優良法人」など外部機関によって認められるので、企業のイメージアップにつながります。

その結果として採用活動がスムーズになったり、株価の上昇や投資額の増加などが見込めたりという波及的な効果も期待できるでしょう。

健康経営戦略マップとは

健康経営戦略マップとは、健康経営を推進するための計画書のことです。

企業が健康経営を推進するためには、まず自社が解決したいと思っている経営課題や、課題を解決するために必要な健康課題を把握しなくてはなりません。

その上で健康課題に対してどのような戦略で挑み、経営課題解決を目指すのかというストーリーを描きます。

このストーリーは経営者間だけでなく、従業員やステークホルダーなど企業内外にも共有することが必要なので、いかに分かりやすく見える化するかが鍵となります。

戦略マップは、自社の置かれている現在地を把握し、これから向かう目的地を定め、目的地までに到達するために解決すべき問題が書かれた、まさしく「地図」だと言えます。

健康投資管理会計ドキュメントとは

健康経営戦略マップは、健康投資管理会計ドキュメントの1つです。

健康経営という概念においては、従業員の健康増進のための取り組みにかかる経費は、単なるコストではなく「投資」であると考えられています。

健康投資管理会計とは、この「健康投資」を効率的かつ効果的に推進することを目的とした仕組みです。

経済産業省は健康投資管理会計を「健康増進活動をおこなう費用と、活動による効果を客観的に測定し、伝達する仕組み」と定義づけています。

健康投資管理会計を使うメリットがあるのは、健康増進活動による経営課題解決に既に取り組んでいてPDCAサイクルを回し始めている企業、健康経営の効果や評価を社外に開示しているような企業です。

これから取り組みを始める企業や、始めて間もない企業にはこの管理会計を使うメリットはあまりありません。

健康投資管理会計の実施にあたっては、次の4種類のドキュメントを作成することがよいとされています。

1.健康投資シート
2.健康投資効果シート
3.健康資源シート
4.健康経営戦略マップ

1の健康投資シートとは、健康投資の見える化を行うためのシートです。

後述する健康経営戦略マップの各施策においてどのくらいの投資額が発生しているのか、健康関連の最終的な目標指標ごとにどのくらいの健康投資をおこなっているのか、具体的に金額を記載します。

2の健康投資効果シートとは、健康経営戦略マップに記載する健康投資効果の各指標について、どの指標にどのくらいの金額を投資したのか、その数値がどう変化したのかを一覧にしたものです。健康投資の効果を見える化することが目的です。

3の健康資源シートとは、健康資源を見える化するシートです。

健康資源とは、環境健康資源(従業員を取り巻く環境)と人的健康資源(従業員等の健康状態やヘルスリテラシー)のことを指します。

4の健康経営戦略マップについては、次章以降で詳しくご説明します。

健康経営戦略マップは「健康経営の計画書」

前述したように、健康経営戦略マップは「健康経営の計画書」とも言われます。

戦略マップには、後述する5つの要素を盛り込みながら作成します。

5つの要素を満たすことで、企業が抱えている課題や具体的な取り組み内容、健康経営によって解決したい経営課題などを可視化できるでしょう。

健康経営戦略マップの全体像

まずはに健康経営戦略マップの全体像をご説明しましょう。

戦略マップは経済産業省からシートのフォーマットが提供されているので、それを埋めていけば全体が完成するようになっています。

戦略マップの作り方については後述します。

健康経営戦略マップを構成する5つの要素

戦略マップの全体構成は、次の5つの要素から成り立っています。

1.健康経営で解決したい経営課題
2.健康関連の最終的な目標指標(アウトカム指標)
3.従業員等の意識変容、行動変容に関する指標
4.健康投資施策の取組状況に関する指標
5.健康投資

5つの要素それぞれについて、必要な指標や施策名などに落とし込んでタスク化して表記すると戦略マップが完成します。

戦略マップは、このあとに作成する健康投資シート、健康投資効果シート、健康資源シートとも密接につながってくるので、明文化する際の言葉選びや指標は注意深くおこなわければなりません。

健康経営戦略マップを作るメリット

ここまでお読みになった方の中には、戦略マップを作るのは大変そうに思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

健康経営の実施は、経営陣だけでなく実際の現場で動く健康経営推進担当者の協働が欠かせませんが、両者の考え方に齟齬があるとうまくいきません。

戦略マップを作るメリットには、経営陣と推進担当者との齟齬を補うことや、健康経営を実現するための課題点を改善することなどがあります。

2つのメリットについて見ていきましょう。

経営陣と健康経営推進担当者との齟齬を補う

例えば、推進担当者は予算を増やさないと自社の健康経営戦略を実現できないと思っているケースを考えてみましょう。

推進担当者が実現に向けて進めようとしても、経営陣が今よりも予算をかけられないと思っている場合、現場は具体的な施策を打つことができなくなります。

しかし、戦略マップを作ると、両者の認識のずれを可視化することができるでしょう。

マップを作る過程で今まであいまいにしていた部分が明文化されるので、推進担当者から経営陣への説明もしやすくなるメリットがあります。

健康経営を実現するための課題点を改善する

健康経営戦略マップを作ると、従来PDCAサイクルが曖昧だった健康経営の分野において、PDCAをスムーズに回せるようになるというのもメリットです。

「健康投資管理会計ガイドライン」では、P(計画)が健康経営戦略マップ、D(実行)がその他3つのドキュメントであるとされています。

戦略マップを作れば、健康経営が計画書として見える化されているので評価しやすくなり、C(評価)やさらにその先のA(改善)へとサイクルを回せるようになるというメリットがあるのです。

健康経営を実現するまでの流れや手順が分かりやすくなることで、課題点の解決などにつなげられるようになるでしょう。

健康経営戦略マップを作る手順

それでは実際に健康経営戦略マップをどのように作るのか、ご説明します。

作成にあたって、前述した健康経営戦略マップを構成する5つの要素を使います。

まず1~5の要素を番号の若い順に右側から記載すると、戦略マップの大枠を描くことができます。

次のそれぞれの要素の中で、経営課題を解決するための手段をタスクとして細かく落とし込んでいき、明文化して記載します。

以下、戦略マップに記載する、それぞれの要素の枠組みの中で検討すべき内容を詳しくご説明します。

1.健康経営で解決したい経営課題

健康経営戦略マップを作成する際、最初にやるべきことは、健康経営で解決したい経営課題を明文化することです。

経営課題が明文化されていないと、経営陣と健康経営推進担当者との間で齟齬が出たり、ステークホルダーに理解してもらうことが難しくなったりします。

今まで健康経営のためにどのような施策を打ってきたのか、その目的が何だったのか、今後どのようなことを解決したいのかなど棚卸しして分析しましょう。

2.健康関連の最終的な目標指標(アウトカム指標)

健康経営で経営課題を解決するために、どのような目標を達成しなくてはいけないのか、客観的に判断できる指標を設定します。

例えば目標指標は「従業員一人当たりのプレゼンティーイズム損失額10%減」「メンタル休暇日数13.5%削減」のように、数値で計れる定量的なものにするのがポイントです。

3.従業員等の意識変容、行動変容に関する指標(パフォーマンス指標)

次に従業員等の意識や行動の変容に関する指標を設定します。

2のアウトカム指標を達成するには、企業の構成員である従業員の健康に対する意識や行動が改善されなければいけないからです。

例えば「喫煙率の低下」「不適切な食習慣を有する従業員比率の低下」のように具体的な意識や行動に関する指標を記載します。

4.健康投資施策の取組状況に関する指標(アウトプット指標)

さらに3のパフォーマンス指標の成果をあげるために、どのような施策の参加率や実施率等を上げていけばいいのかを健康投資施策の取組状況に関する指標として設定します。

例えば「各種イベント参加率の向上」「特定保健指導完了率の向上」などが挙げられるでしょう。

5.健康投資

最後に具体的に取り組む健康施策の内容を記載します。

例えば「ストレスチェック組織別分析結果による高ストレス職場への介入」「フィジカルリスク者への個別指導の強化」などです。

基本的に健康投資と4のアウトプット指標は1対1で対応するように記載します。

しかし中には、複数の指標に対応する健康投資もあります。

この場合は「様々な効果に関連する健康投資」としてまとめて記載しておきます。

作成方法についてさらに詳しく知りたい方は、経済産業省が作成した「健康投資管理会計 実践ハンドブック」などを参考にするとよいでしょう。

参考:健康投資管理会計 実践ハンドブック

健康経営戦略マップを作るポイント

ここからは、実際に戦略マップを作る際の、作り方のポイントを3つご紹介します。

1つ目が、健康経営戦略マップを作る前に、健康投資の目的を明確にすることです。

健康投資の目的について例を挙げると「心身の不調による休職や離職を減らしたい」「優秀な人材確保のために会社のイメージを高めたい」などがあります。会社の経営課題や経営理念などによって異なるので、自社に合った目的を明確に決めてから取り組みましょう。

健康投資の目的が明確でないと、それ以外の部分にコストをかけたり無駄な作業が発生してしまう可能性もあります。

健康経営に取り組みたい場合、まず健康投資で何を達成したいのかを明確にしてから戦略マップを作ると良いでしょう。

2つ目が自社の健康課題を「見える化」することです。

健康投資の目的を達成するためには、従業員アンケートやミーティングでのヒアリングを通して従業員が現状抱えている健康課題をしっかり把握し、分析する必要があります。

例えば、残業時間や休日出勤が多い場合は、部署や役職、年代などをもとに分析を行い、どうして長時間労働が発生してしまったのか原因を探りましょう。

課題が「見える化」することで、その後どのように取り組んでいけば良いかの指標にもなります。

注意しなければならないのが、健康課題を把握する時に経営陣や健康経営推進担当者の意見だけを反映してしまうと、実態と合っていない場合があることです。

現場の生の声や当事者の意見を取り入れることで、自社の現状をしっかりと把握しましょう。

3つ目が健康課題の解決方法を考えることです。

健康課題を「見える化」したら、その課題をどう解決していくか、具体的な解決方法を考えましょう。

例えば、残業時間や休日出勤の多さが課題となっている場合は、新たなシステムやツールの導入、人員配置といったことを検討し業務効率化を図ることで、長時間労働を改善できるかもしれません。

健康課題の解決方法を考える際も、どういったツールや仕組みが必要なのか、どうすれば課題を解決できるのか、現場で働く従業員の意見を取り入れることで、一人ひとりが主体的に取り組めるような環境を作りましょう。

健康経営戦略マップはどのように活用するのか

健康経営戦略マップは健康経営を行っていくための設計書です。戦略マップを作ったら健康経営を進めながら適宜確認・分析を行い、今後の取り組みに生かすとよいでしょう。

戦略マップを見れば、施策への参加度合いについて管理や改善をしたり、十分な効果が得られているのかといったことを定点的に評価したりすることができます。

また、産業医による面接指導を受けた人と受けなかった人を比較して、メンタルヘルスの変化をチェックするなどの分析にも便利です。

さらに、戦略マップの活用で指標間の相関関係がわかりやすくなると、健康経営の取り組みの検証結果や改善策の提案といった、健康経営の効果を経営陣に共有する際にも活用できます。

戦略マップを作ったらそのままにしておくのではなく、実際に健康経営を進める中で効果的に活用しましょう。

健康投資として注目の福利厚生「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」

オフィスで野菜

健康経営戦略マップを構成する要素の5として「健康投資」の項目をご紹介しました。

これは具体的に取り組む健康施策ですが、よほど健康関連に特化した企業でもない限り、なかなか自社ですべての取り組みを完結させるのは難しいのではないでしょうか。

そこで多くの企業が、外部の専門企業などに健康投資のサービスを外注しています。

健康経営において注目されている健康投資の一つが、「食」関連の福利厚生を活用することです。

従業員の多くが1日の大半を会社で過ごし、毎日必ず食事をとります。

企業が健康的な食事を福利厚生として提供すれば、従業員の健康の数値が改善したり、健康への意識が高まったりするでしょう。

しかし社員食堂を作るのは初期投資や維持コストが莫大なものとなるため、現実的ではありません。

そこで手軽に導入できる食の福利厚生としておすすめなのが「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」です。

オフィスで野菜は、専用の冷蔵庫(または冷凍庫と電子レンジ)を設置するスペースさえあれば、中小企業でも気軽に導入できる設置型の社食です。

オフィスで野菜には「オフィスでやさい」と「オフィスでごはん」の2つのプランがあります。

「オフィスでやさい」は野菜たっぷりのお惣菜やサラダ、フルーツ、ドリンクなどが1個100円からというお手頃価格で買えます。

野菜やフルーツを朝ごはんや間食として摂取することで、実際に健康になるだけでなく、戦略マップにある従業員の健康への意識変容も期待できます。

「オフィスでごはん」はしっかりとした食事をとることができるので、満足感もありながら野菜をしっかりとって心身ともに健康を目指せます。

独り暮らしの従業員は、特になかなか野菜をとる機会が少ないため、食生活が乱れていることから心身の健康を損なうことがあります。しかし、職場に手軽に野菜をとれる福利厚生が導入されていれば、自然と健康への意識が高まります。

その結果、健康経営戦略マップのさまざまな指標の向上に役立てることができるでしょう。

ぜひ健康投資の方法の1つとして、オフィスで野菜の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

健康経営戦略マップについて、全体像を明らかにし、役立つポイント、作成するメリットや作り方などについてご説明しました。

また健康投資として注目される、食の福利厚生についてもご紹介しました。

健康経営の推進は、どの業界においてもさらなる企業の成長のために必須となります。

漫然と施策に取り組んでいるだけでは、成果を出すことが難しいでしょう。

客観的な指標が記載された戦略マップを作成して活用することで、形だけでなく本当に経営課題を解決できる健康経営を目指していただければと思います。

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