企業の健康経営

-2023.04.24.Mon

人的資本経営とは?注目されている理由や「健康経営」との関係

近年、「人的資本経営」という経営手法に注目が集まっています。

人的資本経営とは簡単にいうと「人材=資本」の考え方を軸に、人材へ投資することで企業価値を高めていくというものです。

人的資本経営は世界中で注目されていて、海外では人的資本の情報開示が義務化されている国もあります。

そうした流れにのって、日本でも企業に対する人的資本の情報開示要請が強まっています。

しかし、人的資本経営の重要性は分かっていても、従来の経営手法との違いが分からず、具体的にどうすればよいか頭を悩ませている企業も多いようです。

この記事では、人的資本経営が注目されている背景や実際の企業の取り組み内容をはじめ、健康経営・ウェルビーイングとの関係性にも注目してご紹介していきます。

人的資本経営とは

経済産業省は、人的資本経営を「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義しています。

投資によって付加価値を生み出せるものを「資本」と定義しており、従来の人材を「資源」と考える経営手法とは真逆のものといえるでしょう。

企業が投資の対象と考える「資本」は、「有形資本」と「無形資本」に分けられていて、従業員の能力や経験、意欲といった「形のない資本」である人的資本は無形資本にあたります。

無形資本の分類は、人的資本の他に、特許権・著作権・ノウハウといった「知的資本」、再生可能な環境資源とそのプロセスなどの「自然資本」、情報を共有する能力などの「社会・関係資本」の4つです。

一方、形のあるものが「有形資本」とされ、分類は「財務資本(株式・借入・寄付など)」と、「製造資本(建物・設備など)」の2つです。

従来の「人材=資源」という経営では、管理や育成をコストと捉えますが、人的資本経営の「人材=資本」という考えのもとでは、人材の成長や活用にかかる費用や時間は、企業の戦略的投資として捉えています。

また従来の経営では、終身雇用や年功序列などにより、企業と人材とが相互依存の関係となっていましたが、人的資本経営では、企業と人材とがお互いに選び選ばれる自律的な関係へと変わっていきます。

さらに、人的資本経営では人材データを収集し数値化して、人的資本を正確に測定しなければなりません。それをもとに、従来は経験や勘に頼っていたところも、客観的な判断をくだしていくことになるでしょう。

このように2つの経営手法は大きく異なるため、人的資本経営に対応するためには大きな変革が必要です。

また投資家などのステークホルダーは、企業の将来性をはかる判断基準として人的資本経営に大変注目しています。そのため、管理職の登用状況や人材育成への取り組みなどの情報開示が強く求められるようになってきたのです。

人的資本経営が注目されている背景

人的資本経営が注目されている背景として、考えられる主な理由を3つご紹介していきます。

技術の進歩による市場の成熟

AIやロボットが自ら考えて最適に業務を行うようになり、世界の市場は第4次産業革命と呼ばれる時代を迎えています。

このようにテクノロジーによって市場が成熟してくると、企業は既存の技術力だけでは他者との差別化を図ることが難しくなってきます。

そうなってきた時に重要なのが、イノベーションのアイデアを生み出すことができる人材です。

AIやロボットは、学習により業務を最適化していくことはできますが、ニーズを深掘りし革新的なサービスや商品につなげたり、市場を一気に覆すような斬新なアイデアを生み出したりというクリエイティブな活動はできません。

均質化する市場においては、クリエイティブな活動ができる人材を確保・育成していくことこそ企業の優位性につながると考えられ、人的資本経営に注目が集まっています。

人材と働き方の多様化

少子高齢化による労働人口の減少は、企業の人材確保に大きく影響しています。

従来のように人材を確保することが難しくなり、外国人労働者や非正規雇用の増加、シニア世代の再雇用など、企業の人材構造に変化が生じています。

さらに近年のリモートワークやフレックスタイムなどの普及で、働き方の多様性もより求められるようになりました。

企業が持続的な発展と成長を目指すためには、さまざまな人材がライフスタイルに合わせて働ける環境や、個々が力を最大限発揮できる環境・仕組みを整えていくことが重要です。

それを実現していくために「人的資本経営」が求められているのです。

ESG投資の浸透

「ESG」とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字で作られたものです。

この3つを通じて、企業の持続的な成長を目指す経営が「ESG経営」で、ESGを重視して行う投資が「ESG投資」です。

環境汚染や労働問題といった社会的課題から、企業のサスティナビリティと言えるESG経営を評価のポイントとする投資家や消費者が増えています。

また人的資本は、ESGの中のSocial(社会)とGovernance(ガバナンス)に属するものと考えられ、投資家などのステークホルダーが企業の成長性を評価するポイントである、人材への投資状況の判断材料ともなります。

こうしたことから、企業は投資家や消費者に対して、サスティナブルな取り組みをアピールする必要があり、そのため人的資本経営が注目されているのです。

国内外での人的資本経営に関する主な取り組み

国内外での人的資本経営に関する主な取り組みは、現状どのようになっているのでしょうか。

例えばアメリカでは、すでに人的資本情報の開示が義務化されていて、開示要請の段階にある日本より先に人的資本経営が広まっていると言えます。

欧州でも、日本に先駆けて開示の動きが広がっていて、グローバルな動きも加速している状況です。

日本と海外での取り組みについて、それぞれもう少し詳しくみていきましょう。

日本における取り組み状況

日本における人的資本経営のための取り組みとしては、まず2020年9月に経済産業省が「人材版伊藤レポート」を発表したことが始まりといえるでしょう。

このレポートは、人材戦略や変革の方向性についてまとめたもので、発表に先立って行われた「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の報告書が使われています。

そこには人的資本経営を現場で実践していくために重視すべきことは、人材個々の能力や経験などの価値を最大限に引き出すことだと記載されており、これは、経営戦略と合わせて人材戦略の必要性が提示されたと言えるでしょう。

同レポートでは、これからの人材戦略に欠かせないものとして「3つの視点」と「5つの共通要素」(3P・5Fモデル)を掲げていました。

その後、人材戦略をどう実践していくかに着目して、さらに内容を深掘りし、高度化したものが2022年5月に発表された「人材版伊藤レポート2.0」です。

「人材版伊藤レポート2.0」では、「3つの視点」と「5つの共通要素」について具体的な事例集や取り組む上でのポイント、有効な工夫例などが追加され、企業がより実践しやすいように改訂されています。

また、2022年8月には内閣官房より「人的資本可視化指針」も公表されました。

人的資本経営での情報開示のガイドラインとなる内容になっていて、以下4つの方法で人的資本の可視化を進めることが望ましいとしています。

●可視化において企業・経営者に期待されることを理解する
●人的資本への投資と競争力の繋がりの明確化
●4つの要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った開示
●開示事項の類型(2類型/独自性・比較可能性)に応じた個別事項の具体内容の検討

その他、開示事項の例も同指針に提示されています。

さらに、2023年1月に施工された内閣府令により、有価証券報告書の開示が義務化されました。これにより、上場企業は人的資本経営に関する「戦略」と「指標及び目標」の開示が必須となります。

多様性に関する「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」を公表している場合は、これらの指標についても開示が必須です。

開始時期は、2023年3月31日以降に終了する事業年度から適用とのことなので、2023年度(令和5年度)期から開示義務が適用されます。

このように、日本でも人的資本経営への取り組みが進んできています。

海外における取り組み状況

人的資本情報の開示に関する動きは、まず欧米で広まり始め、その後世界各地で急速に議論されるようになりました。

アメリカでは以前から、企業の市場価値の要素として無形資産が重要視されており、2020年には市場価値の9割超が無形資産で構成されるほどになりました。

人的資産を重要視し、無形資産への投資を積極的に進めてきた結果と言えるでしょう。

2020年8月には、上場企業に対して人的資本の開示が義務化されました。

EUではサスティナビリティ開示に関する法令が2023年1月に改訂され、人的資本に関しては、ジェンダーの平等性、トレーニングや能力開発に関する情報開示が求められるようになりました。

⼈材版伊藤レポートで示された「3P・5Fモデル」とは 

先述の人材版伊藤レポートで示された「3P・5F」モデルとは、3つの視点(Perspectives)と5つの共通要素(Factors)に基づく人材戦略のことです。

本レポートでは、人的資本経営の実践には、この「3P・5F」をフレームワークとして取り入れることが重要である旨が述べられています。

実際に人材戦略を立てる際は、次の「3P」の視点から実践すると効果的です。

視点1:経営戦略と人材戦略の連動
経営戦略と人材確保の具体的なアクションやKPIとの連動が、人的資本経営の効果を大きく左右します。
そのためにも、常に経営側の視点も持ちながら、この2つを一体不可分なものとして戦略を立てることが大切です。

視点2:「As is-To be ギャップ」の定量把握
視点1を考慮に入れつつ、現状(As is)と理想(To be)を定量化によって可視化すれば、双方にあるギャップを確認できます。
さらに、PDCAサイクルで問題点や課題を分析し、ギャップを埋める目的で人材戦略の組み立てや見直しを繰り返すことで、経営面でも大きな効果を期待できます。

視点3:企業文化への定着
企業理念や存在意義・行動指針など、自社の企業文化を従業員と共有するのも、人的資本経営では大事なポイントです。
実行するプロセスにおいて、経営層だけでなく組織全体として企業文化を定着させるとの視点を持ちながら人材戦略を醸成させる必要があります。

さらに、本レポートでは、人的資本経営を実践する際、どの業界の企業も取り組むべき人材戦略として5つの要素が提示されています。

要素1:動的な人材ポートフォリオ計画の策定
経営課題を解決するうえで必要な各人材のスキルや経験、在籍情報などの人材ポートフォリオをリアルタイムで動的に活用すると、適材適所の人材配置が可能です。
また、活用の仕方によっては、未来から現在に逆行して人材の質や量を最適化・拡充し、将来的な経営戦略も立てられます。

要素2:知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
多様化時代の今だからこそ、働き方だけでなく、従業員の知識や経験も千差万別であるとの認識も必要です。
各従業員が持っている多様な個性や経験を受け入れ、その特性をうまく活かして企業活動に対応することが人的資本経営の成果につながります。

要素3:リスキル・学び直し
経営層を含め、従業員に新しいスキルを習得し学び直すとの姿勢がなければ、現代社会の多様な価値観には対応できません。
特に、変化が著しく革新的なイノベーションの創出にもつながるデジタルスキルや創造性を養うには、人的資本経営の一環として、企業側の従業員のキャリア構築をサポートしようとする体制作りも必要です。

要素4:従業員エンゲージメント
人的資本経営で求められる愛社精神や貢献意欲などの従業員エンゲージメントは、企業と従業員との信頼関係のうえに成り立つものです。
企業の労働環境やキャリアパスの整備、共感できる経営戦略の策定によって従業員エンゲージメントが向上すれば、働くモチベーションや企業定着率も高まります。

要素5:時間や場所にとらわれない働き方
リモートワークや時短勤務・フレックスタイムなど、諸処の事情にとらわれない労働環境を整備すれば、人材流出の回避につながります。
アフターコロナの今、「いつでもどこでも仕事ができる」という環境作りは、人的資本経営だけでなく事業継続の面からも看過できません。
また、働き方が多様でも、企業が公正に評価できるような評価基準・業務プロセスの見直しや、ミーティング・面談などによる積極的なコミュニケーションにも配慮すべきです。

このように、人材版伊藤レポートでは、人的資本経営の推進にあたって3つの視点と5つの要素に意識を向けることの重要性が説かれています。

人的資本経営に取り組む方法

実際に人的資本経営に取り組む際は、先述の人材版伊藤レポートを参考に次の3つの方法で進めていきましょう。

⼈材版伊藤レポートの「3つの視点」に沿って設計する

人的資本経営の実践には、⼈材版伊藤レポートの「3つの視点」に沿って設計することが大切です。

先に述べた3つの視点のどれが欠けても、十分な効果を得られません。

経営層と人事部の認識のすり合わせをおこなって、経営課題や将来を見据えた適した人材の選定・配置を検討し、現状と理想との間にあるギャップを定量化しましょう。

また、十分な効果を得るためにも、従業員に人的資本経営における自社の企業理念や行動指針をしっかり浸透させておくことも大切です。

KPIを設定する 

人的資本経営を推進するにあたっては、KPI(重要業績評価指標)の設定も大事なポイントです。

現状と理想のギャップを定量的に分析すれば、そのギャップを埋めるために必要なKPIを設定できます。

たとえば、自社に必要な人材を何人採用して育成するか、離職率をどの程度に抑えたいか、女性管理職の割合をどの程度にするかなど、定量的な目標を具体的に示しましょう。

人的資本経営では、情報開示での活用も視野に入れながら、経営戦略と連動できるよう自社に適したKPIを盛り込むことが重要です。

施策を実施しPDCAを回す

人的資本経営を実践する際は、施策を実施しPDCAを回すことも忘れないようにしましょう。

KPIを設定して具体的な施策を実施しながら、常にPDCAサイクルを回して改善する姿勢が大切です。

人的資本経営で大きな効果を得るには、自社の人材データを定期的に収集・継続し、施策に何らかの課題があれば常に修正・改善しなければなりません。

人材データを一括管理できるタレントマネジメントシステムなどのツールを適宜導入し、リアルタイムでデータにアクセスできる環境も構築しておきましょう。

人的資本経営と健康経営・ウェルビーイングとの関係性

人的資本経営のガイドラインとなっている「人材版伊藤レポート2.0」には、健康経営について下記のように言及されている部分があります。

「社員の健康状況を把握し、継続的に改善する取り組みを、個人と組織のパフォーマンスの向上にむけた重要な投資と捉え、健康経営への投資に戦略的かつ計画的に取り組む。その際社員のWellbeingを高めるという視点も取り込んでいく」

このことから、人的資本経営と健康経営は近しいものであることがうかがえます。

従業員のウェルビーイングを高めるという視点から、健康経営を意識して行なっていくことは、人的資本経営の一環といえるでしょう。

導入しやすい健康経営施策「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」

オフィスで野菜

人的資本経営を実践する際、取り入れやすい施策の一つとして、健康経営があります。そして、健康経営を実現させる取り組みの一つとして、導入しやすくおすすめなのが設置型社食です。

OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」は、専用の小型の冷蔵庫や冷凍庫、電子レンジなどをオフィスに設置するだけという手軽さで、すぐに従業員に健康的な食事を提供することが可能です。

新鮮なサラダやフルーツのほか、国産や無添加にこだわった栄養士監修のお惣菜などが、定期的にオフィスに届けられ、価格も1つ100円からとリーズナブルなのも人気の理由です。

低予算で導入できる「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」を、健康経営に取り入れてみてはいかがでしょうか。

まとめ

人的資本経営は、今後主流となっていくことが予想され、本格的に実践していくには大きな変革が必要となるでしょう。

人的資本経営に取り組む企業は、投資家からの信頼を得やすく、イメージアップや生産性の向上などにもつながります。

持続的な発展と成長のためにも、早めに人的資本経営に取り組み始めるのがおすすめです。

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