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健康経営の推進とメンタルヘルスの関係性とは?取り組みのポイントを解説
アフターコロナとなり、リモートワークからオフィスへの出勤回数が増えた企業も多いのではないでしょうか。
これに伴い、時差出勤のないことや長時間労働が復活したことなどから、従業員のメンタルヘルスの不調が課題となっています。
企業は、従業員の体調を管理しながら組織としてできることから始め、生産性を維持しなければなりません。
今回は、健康経営の推進とメンタルヘルスの関係性について、取り組む際のポイントを含めて解説します。
目次
メンタルヘルスとは?
メンタルヘルスとは、肉体ではない精神面における健康のことです。
日本語にすると、メンタルヘルスは「心の健康」や「精神的健康」などと訳され、最近では、精神的なストレス・悩み・疲労の軽減や、精神障害の予防・回復の目的で精神保健医療などに使われるようになりました。
2019年の公益社団法人日本WHO協会の発表によれば、世界では約10億人が精神障害を抱えており、メンタルヘルスの不調は人間にとって大きな課題となっています。
日本でも2020年のうつ病有病率は17.3%で、2013年の7.9%からおよそ2倍以上、増加しました。
欧米の20~30%と比べると、うつ病有病率自体は低いものの、日本の心理カウンセリングの利用率はわずか6%に過ぎません。欧米の52%に比べて驚くほど低い割合です。
日本では、メンタルヘルスの不調を理由に「心理カウンセリングを気軽に受ける」という認識があまり浸透していないことがよくわかります。
高熱や風邪を引けば通院する一方で、気分が落ち込んでベッドから出られない、出勤できない日が続くなど、メンタルヘルスの不調は軽視されているのです。
参考:
OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19)
メンタルヘルスの不調が起きる原因
メンタルヘルスの不調が起きる原因は、さまざまな出来事による外的な要因や環境の変化などが考えられます。
家庭内の場合は、家族との人間関係や金銭トラブル、配偶者や子どもの病気、引越などの環境の変化が主な原因です。
オフィスでは、異動・昇進による職場環境の変化やセクハラ・パワハラなど対人関係のトラブル、長時間の残業や担当替えなど、仕事の質・量の変化などが挙げられます。
しかし、誰もがこれらのことを同じようにストレスと感じているとは限りません。同じ環境下でも、人の感じ方はそれぞれ違うからです。
一般的に、ストレスに対する耐性や対応力の低い人、人間関係をうまく対処できない人、生活や健康を管理できない人は、メンタルヘルスの不調が起きやすいといわれています。
企業としてメンタルヘルスケアに取り組む重要性
従業員がメンタルに不調を抱えた場合、企業は大きな影響を受けるでしょう。
未然に防ぐためにも、企業の組織としてメンタルヘルスケアに取り組む姿勢が大切です。
特に、職場で人間関係のトラブルや長時間労働がある場合は、従業員に大きなストレスをかけることになります。
メンタルヘルスの不調が悪化すれば、従業員の離職などにつながる可能性があります。
深刻化する前にセルフケアやラインケア、社内のメンタル相談窓口や外部の専門機関によるケアなど、メンタルヘルス対策に取り組むことが重要です。
ケアのほかにも、社内のコンプライアンスや教育体制の整備など、人事・労務問題の強化も効果があります。
メンタルヘルスに問題が起きないよう、メンタルヘルスケアとともに従業員にとって快適な職場づくりを目指しましょう。
健康経営でメンタルヘルス対策に取り組もう
企業がメンタルヘルス対策に取り組む際は、健康経営を推進するとよいでしょう。
厚生労働省が令和3年に実施した「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、仕事や職業関係でストレスを感じると回答した労働者の割合は53.3%でした。
つまり、およそ2人に1人がストレスを感じているということです。
また、ストレスの内容で最も多かったのが「仕事の量(43.2%)」で、次いで「仕事の失敗、責任の発生等(33.7%)」と「仕事の質(33.6%)」が拮抗する結果となりました。
「対人関係」が25.7%に留まっている同調査の結果から、人間関係よりも仕事そのものにストレスを抱えていることがわかります。
勤勉で真面目といわれる日本人は、与えられた仕事をしっかりこなそうとする一方で、自分の抱えている仕事に大きなストレスを感じているのです。
これらの結果を見ても、企業は、健康経営に取り組み、組織全体で従業員のメンタルヘルスケア対策を講ずるべきでしょう。
健康経営とは
健康経営とは、従業員の健康増進や健康管理を経営課題としてとらえ、従業員の健康維持と生産性の向上を目指し、戦略的に実践する経営手法のことです。
健康管理を経営的な視点でとらえる健康経営の概念は、1994年にアメリカの臨床心理学者のロバート・ローゼン博士が著書で発表したことに由来しています。
それまで日本企業の多くは法令遵守の観点から、自社の従業員に健康診断を受けさせることに重点が置かれていました。
しかし、社会情勢の変化や少子高齢化による労働人口の減少などから、近年は健康経営を重視する企業も少なくありません。
人材を「人財」と考え、戦略的に従業員の健康づくりや生活習慣の見直し・改善などの取り組みを実施する健康経営は、今後の新たな付加価値や企業価値の創造につながります。
企業が健康経営を実践する主なメリットは、次の3つです。
1.休職率・離職率の低減
健康経営の実践によって従業員の健康を管理すれば、心身ともによい状態で仕事ができるようになり、従業員満足度も向上します。また、体調不良の従業員が減少しますので、休職率や離職率の低減も期待できます。
2.労働生産性の向上
健康経営で従業員が心身ともに健康になれば、仕事への集中力やパフォーマンスの質が高まります。その結果、従業員のメンタルヘルスだけでなく、仕事へのモチベーションや労働生産性の向上も見込めるでしょう。
3.企業ブランディングの構築
健康経営の実践は、従業員を大事にする働きやすい企業であることを社外にアピールできます。求職者や取引先を含め世間に対して企業ブランディングを構築すれば、信頼や高い評価の獲得につながります。
健康経営とメンタルヘルス対策の関係
実は、健康経営とメンタルヘルス対策は大きく関係しています。
経済産業省では、地域の健康課題に沿って健康増進に取り組んでいる特に優良な企業に対し、健康経営優良法人認定制度によって顕彰しています。
健康経営優良法人のなかで、特に優れた大規模法人部門の企業には健康経営優良法人「ホワイト500」、中小規模法人部門には健康経営優良法人「ブライト500」を認定しています。
この健康経営優良法人の認定基準は、下記の5項目です。
1.経営理念(経営者の自覚)
2.組織体制
3.制度・施策実行
4.評価・改善
5.法令遵守・リスクマネジメント
また、認定要件は、「必須項目」と「選択項目」の2項目で構成されます。
この認定要件には、ストレスチェックの実施やメンタルヘルス不調者への対応に関する取り組みなどの項目が含まれています。
ちなみに、メンタルヘルス対策は、健康経営優良法人の認定における重要項目の一つです。
認定基準の項目のうち、健康経営を実践するための土台づくりや健康づくりのための具体的な対策は、メンタルヘルスと密接に関わっています。
たとえば、項目のなかの「50人未満の事業場でのストレスチェックの実施や管理職や従業員へのメンタルヘルスに関する教育」「メンタルヘルス不調者の対応に関する取り組み」は、いずれもメンタルヘルスの領域です。
これらの項目を網羅し、従業員のメンタルヘルスを向上させるためには、適切な働き方の実現やコミュニケーションの促進に向けた取り組みの実施などが考えられます。
また、認定項目にある「食生活の改善・運動機会の増進・喫煙率の低下などに関する取り組み」は、ストレスによる暴飲暴食・喫煙の対策や運動によるストレス発散が効果的です。
長年の習慣や嗜好を変えていくことは、けっして容易ではありません。
しかし、生活習慣とフィジカルに関するデータとストレスチェックのデータを掛け合わせることで、ストレスの要因となっている隠れた根本的な問題を発見できます。
このように、メンタルヘルス対策は、健康経営の施策のひとつになっているのです。
企業が取り組むべきメンタルヘルス対策とは?
企業が取り組むべきメンタルヘルス対策は、次の4つです。
1.セルフケア
2.ラインによるケア
3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
4.事業場外資源によるケア
セルフケア
健康経営の一環でもあるメンタルヘルス対策の1つに、セルフケアがあります。
セルフケアとは、教育研修や情報提供で従業員自らがストレスやメンタルヘルスに対する理解を深め、事前にストレスを予防または軽減することです。
ラインケア
ラインケアも、健康経営につながるメンタルヘルス対策になります。
具体的には、管理監督者が職場環境の現状を把握・改善し、従業員からの相談の対応や職場復帰へのサポートなどによって、未然にメンタルヘルスの不調を防止します。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
健康経営の一環でもあるメンタルヘルス対策には、事業場内産業保健スタッフ等によるケアも効果があります。
たとえば、企業内の産業医や保健師・人事労務管理スタッフなどが、従業員のセルフケアや管理監督者のラインケアをスムーズに進められるようサポートすることです。
事業場外資源によるケア
事業場外資源によるケアも、健康経営につながるメンタルヘルス対策の1つです。
情報提供や助言などのサービスを活用したネットワークの形成や、休職者の職場復帰のサポートなどがこれに該当します。
ストレスチェックを健康経営の推進に活かそう
健康経営の一環としてメンタルヘルスの不調を未然に防ぐには、従業員のストレス状況を定期的に検査するストレスチェックが不可欠です。
ストレスチェックで従業員にストレスへの気付きやセルフケアを促し、結果を組織で集団分析して職場環境を改善することが、健康経営の推進につながります。
義務づけられているストレスチェックによって従業員のメンタルヘルスを把握し、結果をセルフケアに役立てるよう、既にオフィス内に周知している企業も多いことでしょう。
しかし、組織内の傾向を正しく把握し、ストレスチェックの結果を今後に活かさなければ意味がありません。
ストレスチェックを健康経営の推進に活かすための施策は、主に2つです。
ストレスチェック実施と活用のポイント
1つ目の施策は、ストレスチェックを実施したら対策にうまく活かすことです。
ただ実施するだけでなく、データを活用して対策に活かすことがポイントになります。
実際、健康経営認定制度で上位の企業ほど、ストレスチェックの結果から集団分析を実施しています。
紙ベースからWebに切り替えるのも効果があります。
Web化すれば、紙の配布や回収にかかる人的および時間的なコストを省き、分析結果のスピーディーな集計やグラフ化も可能です。
ストレスチェックは実施するにとどめず、集団的に分析して職場改善の体制を早期に構築し、健康経営の推進につなげましょう。
2つ目の施策は、ストレスチェックから課題を発見し、具体的な施策を実施することです。
自社に適した属性からのアプローチで集計単位を検討すると、ストレスチェックの分析結果から自社の課題を発見できます。
たとえば、ストレスの高い従業員が多いという結果が出た場合は、階層別のセルフケア研修の実施が有効です。
また、若年層や勤続年数の少ない従業員に対人関係でトラブルを抱えている傾向が見られるような場合は、人事面談や上司のヒアリング、コミュニケーション研修の実施が施策になります。
これらの施策を実施する際は、自社の特性や課題に取り組む主体別に次の4つの型に分けると効果的です。
1.経営者主導型
社内全体に導入する制度や費用のかかる改善施策の場合は、経営者が主導的に実施します。
2.専門職主導型
ストレスの負荷が大きい部署に対して出張カウンセラーを活用して適切なケアをおこなうなど、外部の専門職が主導的に関わります。
3.管理職主導型
各部署の管理職がチェックデータを共有し、分析結果から従業員にフィードバックするとともにアクションプランを検討・実施します。
4.従業員参加型
全従業員が分析結果を共有し、全員でアクションプランを検討・実施します。その効果は大きく、ストレスケアだけでなく従業員エンゲージメントの向上や職場の活性化などのメリットも期待できます。
まとめ
健康経営には、メンタルヘルスが大きく関係しています。
今後、企業が従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐためには、ストレスチェックの実施と集団的な分析結果の有効活用が不可欠です。
しかし、健康経営を推進するには、メンタルヘルスに加え、フィジカル面での健康管理や健康増進についても検討しなければなりません。
このような健康経営の施策アイディアの1つとして、食の福利厚生の充実も効果があります。
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健康経営とメンタルヘルスの関係性を正しく理解し、従業員の健康を管理して健康経営優良法人を目指しましょう。
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