企業の健康経営

-2023.09.20.Wed

健康経営の推進とメンタルヘルスの関係性とは?取り組みのポイントを解説

アフターコロナとなり、リモートワークからオフィスへの出勤回数が増えた企業も多いのではないでしょうか。

これに伴い、時差出勤のないことや長時間労働が復活したことなどから、従業員のメンタルヘルスの不調が課題となっています。

企業は、従業員の体調を管理しながら組織としてできることから始め、生産性を維持しなければなりません。

今回は、健康経営の推進とメンタルヘルスの関係性について、取り組む際のポイントを含めて解説します。

【1品100円〜】継続率99.2%の福利厚生
置き型健康社食の『OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)』

メンタルヘルスとは?

メンタルヘルスとは、肉体ではない精神面における健康のことです。

日本語にすると、メンタルヘルスは「心の健康」や「精神的健康」などと訳され、最近では、精神的なストレス・悩み・疲労の軽減や、精神障害の予防・回復の目的で精神保健医療などに使われるようになりました。

2019年の公益社団法人日本WHO協会の発表によれば、世界では約10億人が精神障害を抱えており、メンタルヘルスの不調は人間にとって大きな課題となっています。

日本でも2020年のうつ病有病率は17.3%で、2013年の7.9%からおよそ2倍以上、増加しました。

欧米の20~30%と比べると、うつ病有病率自体は低いものの、日本の心理カウンセリングの利用率はわずか6%に過ぎません。欧米の52%に比べて驚くほど低い割合です。

日本では、メンタルヘルスの不調を理由に「心理カウンセリングを気軽に受ける」という認識があまり浸透していないことがよくわかります。

高熱や風邪を引けば通院する一方で、気分が落ち込んでベッドから出られない、出勤できない日が続くなど、メンタルヘルスの不調は軽視されているのです。

参考:

OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19)

メンタルヘルスを身近なものにするための日本の課題

メンタルヘルスの不調が起きる原因

厚生労働省がまとめた「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」の結果によると、メンタルヘルスの不調により連続1カ月以上休業した、もしくは退職した労働者がいた事業所の割合は、過去1年間に13.5%に上りました。企業にとって、従業員の休職や退職は大きなダメージとなりかねず、健康経営の取り組みを阻む問題でもあるため、気になるところでしょう。

先に紹介した調査では「仕事や職業生活に関するストレスの状況」も調べており、メンタルヘルスの不調をきたす原因の一端を見ることが可能です。

調査によると、仕事や職業生活に関することで強いストレスや不安などを感じたことがある人の割合は82.7%で、その内容は「仕事の失敗、責任の発生等」(39.7%)が最も多く、次に「仕事の量」(39.4%)、「対人関係(セクハラ・パワハラ含む)」(29.6%)という結果となりました。

特筆すべきことは、「仕事の失敗、責任の発生等」とほぼ同割合で「仕事の量」がストレスの原因として挙げられていることです。過重労働は、食生活の乱れや睡眠不足を引き起こし、疲労の蓄積につながり心身ともに不調をきたしてしまう原因となるでしょう。

さらに、「対人関係(セクハラ・パワハラ含む)」の悩みも重なっては状態の悪化を招き、企業の生産性の低下を招きかねません。ほかにも、家庭内の人間関係・金銭トラブルや家族の病気、引越などの家庭環境の変化も不調の一因とされています。

しかし、同じ環境下でも、人の感じ方はそれぞれに異なり、誰もが同じようにストレスを感じるとは断言できません。個人のストレス耐性や対応力、健康管理能力などにより、メンタルヘルスの不調の生じやすさは変わってくるといわれています。

企業としてメンタルヘルスケアに取り組む重要性

従業員がメンタルに不調を抱えた場合、企業は大きな影響を受けるでしょう。

未然に防ぐためにも、企業の組織としてメンタルヘルスケアに取り組む姿勢が大切です。

特に、職場で人間関係のトラブルや長時間労働がある場合は、従業員に大きなストレスをかけることになります。

メンタルヘルスの不調が悪化すれば、従業員の離職などにつながる可能性があります。

深刻化する前にセルフケアやラインケア、社内のメンタル相談窓口や外部の専門機関によるケアなど、メンタルヘルス対策に取り組むことが重要です。

ケアのほかにも、社内のコンプライアンスや教育体制の整備など、人事・労務問題の強化も効果があります。

メンタルヘルスに問題が起きないよう、メンタルヘルスケアとともに従業員にとって快適な職場づくりを目指しましょう。

健康経営でメンタルヘルス対策に取り組もう

企業がメンタルヘルス対策に取り組む際は、健康経営を推進するとよいでしょう。

厚生労働省が令和3年に実施した「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、仕事や職業関係でストレスを感じると回答した労働者の割合は53.3%でした。

つまり、およそ2人に1人がストレスを感じているということです。

また、ストレスの内容で最も多かったのが「仕事の量(43.2%)」で、次いで「仕事の失敗、責任の発生等(33.7%)」と「仕事の質(33.6%)」が拮抗する結果となりました。

「対人関係」が25.7%に留まっている同調査の結果から、人間関係よりも仕事そのものにストレスを抱えていることがわかります。

勤勉で真面目といわれる日本人は、与えられた仕事をしっかりこなそうとする一方で、自分の抱えている仕事に大きなストレスを感じているのです。

これらの結果を見ても、企業は、健康経営に取り組み、組織全体で従業員のメンタルヘルスケア対策を講ずるべきでしょう。

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康増進や健康管理を経営課題としてとらえ、従業員の健康維持と生産性の向上を目指し、戦略的に実践する経営手法のことです。

健康管理を経営的な視点でとらえる健康経営の概念は、1994年にアメリカの臨床心理学者のロバート・ローゼン博士が著書で発表したことに由来しています。

それまで日本企業の多くは法令遵守の観点から、自社の従業員に健康診断を受けさせることに重点が置かれていました。

しかし、社会情勢の変化や少子高齢化による労働人口の減少などから、近年は健康経営を重視する企業も少なくありません。

人材を「人財」と考え、戦略的に従業員の健康づくりや生活習慣の見直し・改善などの取り組みを実施する健康経営は、今後の新たな付加価値や企業価値の創造につながります。

企業が健康経営を実践する主なメリットは、次の3つです。

1.休職率・離職率の低減
健康経営の実践によって従業員の健康を管理すれば、心身ともによい状態で仕事ができるようになり、従業員満足度も向上します。また、体調不良の従業員が減少しますので、休職率や離職率の低減も期待できます。

2.労働生産性の向上
健康経営で従業員が心身ともに健康になれば、仕事への集中力やパフォーマンスの質が高まります。その結果、従業員のメンタルヘルスだけでなく、仕事へのモチベーションや労働生産性の向上も見込めるでしょう。

3.企業ブランディングの構築
健康経営の実践は、従業員を大事にする働きやすい企業であることを社外にアピールできます。求職者や取引先を含め世間に対して企業ブランディングを構築すれば、信頼や高い評価の獲得につながります。

健康経営とメンタルヘルス対策の関係

実は、健康経営とメンタルヘルス対策は大きく関係しています。

経済産業省では、地域の健康課題に沿って健康増進に取り組んでいる特に優良な企業に対し、健康経営優良法人認定制度によって顕彰しています。

健康経営優良法人のなかで、特に優れた大規模法人部門の企業には健康経営優良法人「ホワイト500」、中小規模法人部門には健康経営優良法人「ブライト500」を認定しています。

この健康経営優良法人の認定基準は、下記の5項目です。

1.経営理念(経営者の自覚)
2.組織体制
3.制度・施策実行
4.評価・改善
5.法令遵守・リスクマネジメント

また、認定要件は、「必須項目」と「選択項目」の2項目で構成されます。

この認定要件には、ストレスチェックの実施やメンタルヘルス不調者への対応に関する取り組みなどの項目が含まれています。

ちなみに、メンタルヘルス対策は、健康経営優良法人の認定における重要項目の一つです。

認定基準の項目のうち、健康経営を実践するための土台づくりや健康づくりのための具体的な対策は、メンタルヘルスと密接に関わっています。

たとえば、項目のなかの「50人未満の事業場でのストレスチェックの実施や管理職や従業員へのメンタルヘルスに関する教育」「メンタルヘルス不調者の対応に関する取り組み」は、いずれもメンタルヘルスの領域です。

これらの項目を網羅し、従業員のメンタルヘルスを向上させるためには、適切な働き方の実現やコミュニケーションの促進に向けた取り組みの実施などが考えられます。

また、認定項目にある「食生活の改善・運動機会の増進・喫煙率の低下などに関する取り組み」は、ストレスによる暴飲暴食・喫煙の対策や運動によるストレス発散が効果的です。

長年の習慣や嗜好を変えていくことは、けっして容易ではありません。

しかし、生活習慣とフィジカルに関するデータとストレスチェックのデータを掛け合わせることで、ストレスの要因となっている隠れた根本的な問題を発見できます。

このように、メンタルヘルス対策は、健康経営の施策のひとつになっているのです。

企業が取り組むべきメンタルヘルス対策とは?

企業の健康経営を成功に導くためには、メンタルヘルスへの取り組みに注力することが必須といっても過言ではありません。

厚生労働省が発行している冊子「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」には、対策として次の4つが挙げられています。

1.セルフケア
2.ラインによるケア
3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
4.事業場外資源によるケア

同冊子をもとに、企業が健康経営として取り組むべきメンタルヘルス対策について紹介します。

セルフケア

企業が健康経営の一環として、従業員のメンタルヘルスを良好に保つために取り組む方法には、セルフケアがあります。

セルフケアとは、企業がストレスやメンタルヘルスについて情報提供や研修などを行うことで、従業員の理解を深め、不調を予防あるいは軽減させることです。

先に紹介した冊子では以下のセルフケアを推奨しています。

・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
・ストレスチェックなどを活用したストレスへの気付き
・ストレスへの対処

企業は、健康経営の管理・監督に関わる従業員もセルフケアの対象にすることも示されています。

ラインケア

ラインケアも、健康経営につながるメンタルヘルスへの取り組みです。

具体的には、管理監督者が職場環境の現状を把握・改善し、従業員からの相談の対応や職場復帰へサポートすることなどによって、未然にメンタルヘルス不調を防止します。

前述の冊子には具体的に以下のような取り組みが示されています。

・職場環境等の把握と改善
・労働者からの相談対応
・職場復帰における支援、など

ほかにも、ストレスを軽減させるための職場環境の改善も提示されており、健康経営の取り組みのヒントとなるでしょう。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

健康経営の一環として行うメンタルヘルスへの対策としては、事業場内産業保健スタッフ等によるケアも効果的です。

たとえば、企業の産業医や保健師、人事労務管理スタッフなどが、セルフケアやラインケアのサポートをすれば、それぞれのケアの効果も大きくなるでしょう。

健康経営の視点から見ても、事業場内産業保健スタッフ等の協力を得ることが非常に大切といえます。

先述の冊子には具体策が示されています。


・具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
・個人の健康情報の取扱い
・事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
・職場復帰における支援など

事業場外資源によるケア

健康経営につながるメンタルヘルスへの対策の一つとしては、事業場外資源によるケアも有効です。

事業場外資源とは、都道府県の産業保健総合支援センターや医療機関などのことを指します。

特に、小規模な事業場の場合、健康経営の取り組みをサポートしてくれるような事業場内産業保健スタッフの確保が難しい場合もあるでしょう。

事業場内でメンタルヘルスの推進担当者を選任し、事業場外資源による情報提供や助言などを積極的に活用することが健康経営にとっても有効です。

ストレスチェックを健康経営の推進に活かそう

健康経営の一環としてメンタルヘルスの不調を未然に防ぐには、従業員のストレス状況を定期的に検査するストレスチェックが不可欠です。

ストレスチェックで従業員にストレスへの気付きやセルフケアを促し、結果を組織で集団分析して職場環境を改善することが、健康経営の推進につながります。

義務づけられているストレスチェックによって従業員のメンタルヘルスを把握し、結果をセルフケアに役立てるよう、既にオフィス内に周知している企業も多いことでしょう。

しかし、組織内の傾向を正しく把握し、ストレスチェックの結果を今後に活かさなければ意味がありません。

ストレスチェックを健康経営の推進に活かすための施策は、主に2つです。

ストレスチェック実施と活用のポイント

1つ目の施策は、ストレスチェックを実施したら対策にうまく活かすことです。

ただ実施するだけでなく、データを活用して対策に活かすことがポイントになります。

実際、健康経営認定制度で上位の企業ほど、ストレスチェックの結果から集団分析を実施しています。

紙ベースからWebに切り替えるのも効果があります。

Web化すれば、紙の配布や回収にかかる人的および時間的なコストを省き、分析結果のスピーディーな集計やグラフ化も可能です。

ストレスチェックは実施するにとどめず、集団的に分析して職場改善の体制を早期に構築し、健康経営の推進につなげましょう。

2つ目の施策は、ストレスチェックから課題を発見し、具体的な施策を実施することです。

自社に適した属性からのアプローチで集計単位を検討すると、ストレスチェックの分析結果から自社の課題を発見できます。

たとえば、ストレスの高い従業員が多いという結果が出た場合は、階層別のセルフケア研修の実施が有効です。

また、若年層や勤続年数の少ない従業員に対人関係でトラブルを抱えている傾向が見られるような場合は、人事面談や上司のヒアリング、コミュニケーション研修の実施が施策になります。

これらの施策を実施する際は、自社の特性や課題に取り組む主体別に次の4つの型に分けると効果的です。

1.経営者主導型
社内全体に導入する制度や費用のかかる改善施策の場合は、経営者が主導的に実施します。

2.専門職主導型
ストレスの負荷が大きい部署に対して出張カウンセラーを活用して適切なケアをおこなうなど、外部の専門職が主導的に関わります。

3.管理職主導型
各部署の管理職がチェックデータを共有し、分析結果から従業員にフィードバックするとともにアクションプランを検討・実施します。

4.従業員参加型
全従業員が分析結果を共有し、全員でアクションプランを検討・実施します。その効果は大きく、ストレスケアだけでなく従業員エンゲージメントの向上や職場の活性化などのメリットも期待できます。

メンタルヘルス研修の実施も効果的

健康経営として、ストレスチェックを行ったら、セルフケアを促すためにメンタルヘルス研修を行うことが、不調を予防するのには効果的といえます。

メンタルヘルスに問題を抱える従業員を発見しやすくなり、不調者に対して理解があることで離職を防ぎ、健康経営もはかどるからです。

健康経営の一環として、事業場内産業保健スタッフや事業場外資源を活用しながら、研修内容を組み立てていきましょう。

まとめ

健康経営には、メンタルヘルスが大きく関係しています。

今後、企業が従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐためには、ストレスチェックの実施と集団的な分析結果の有効活用が不可欠です。

しかし、健康経営を推進するには、メンタルヘルスに加え、フィジカル面での健康管理や健康増進についても検討しなければなりません。

このような健康経営の施策アイディアの1つとして、食の福利厚生の充実も効果があります。

オフィスで野菜

たとえば、設置型社食サービスの「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」は、オフィス内に専用の冷蔵庫と電子レンジを設置すれば気軽に導入できるのでおすすめです。

健康経営とメンタルヘルスの関係性を正しく理解し、従業員の健康を管理して健康経営優良法人を目指しましょう。

手軽に導入できる健康社食で福利厚生を充実!
>> OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜) <<

▼ お役立ち資料はこちら ▼

関連記事

記事はありませんでした