企業の健康経営

-2023.09.18.Mon

中小企業が健康経営に取り組むべき理由とは?事例や実践のポイントを紹介

近年、従業員の健康に配慮する「健康経営」が話題となり、中小企業でも取り組む企業が増えています。

従業員のパフォーマンスやモチベーションを高く保つためには、心身の健康が重要な役割を果たすと注目されているためです。

今回は健康経営とはどのようなものかを解説し、中小企業で行われている実際の事例や、取り組みを進めるポイントを紹介します。

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健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康管理や健康増進に関する取り組みを、経営の視点から捉えて戦略的に行うものです。

健康をサポートする福利厚生の導入など、中小企業でもさまざまな取り組みを行っている会社があります。

心身の不調は仕事に対するモチベーションや生産性に影響するため、従業員の健康管理は組織の活性化につながる重要なものです。

業績の向上や離職率低下といった面で効果が期待でき、中小企業でも取り組むことは大きなメリットがあるでしょう。

また、経済産業省は健康経営を行う企業を顕彰する制度として、「健康経営優良法人認定制度」などを設けて推進しています。

中小規模法人の部門があるため、中小企業でも認定を目指して取り組みやすくなっているようです。

中小規模法人部門の中でも特に優れた取り組みを行う中小企業には「ブライト500」の冠が付加されます。

認定されれば社会的に評価されるため、求職者へのアピールや企業イメージの向上にも活用できるでしょう。

中小企業において健康経営が重要な理由

人材確保や生産性向上への対策としても、健康経営の取り組みは有効です。

健康経営の取り組みが中小企業において重要な理由を詳しく解説します。

人材の確保や維持に活かせる

近年は少子高齢化が進み、人手不足が課題となっている中小企業も少なくありません。

健康経営を行う企業は、従業員が働きやすい職場づくりをしていると評価されるため、求職者へのアピールになります。

また、健康を損ねて離職する人を減らすこともできるので、人材の維持や定着にもつながるでしょう。

健康経営は人材確保や維持に大きく役立つ取り組みなのです。

医療費の削減につながる

近年、医療費の増加は日本にとって大きな問題となっており、令和4年度の医療費動向によると、概算医療費は46兆円、対前年同期比で4.0%増加しています。

従業員の医療費の一部は企業が負担しているため、従業員が病院へ通う頻度が増えると、企業の負担もそれだけ大きくなるのです。

中小企業においても、従業員の高齢化が進んで通院する人が増えている場合、医療費の負担額が大きくなっていることもあるでしょう。

また、入院などによる長期休業や欠員が発生した場合、他の従業員を雇う必要があるため、さらに負担額が増えることになります。

このような課題解決策の一つとして、会社としての健康経営への取り組みが有効です。

健康管理や健康増進といった取り組みによって、従業員の健康を維持し、病気や体調不良で病院へ行く回数を減らすことができます。

健康経営の取り組みは、医療費の削減につながるのです。

短期間で結果を出すことは難しいかもしれませんが、中長期的な健康経営への取り組みによって、中小企業の医療費負担を下げることは可能でしょう。

健康面の不調による影響が大きい

従業員が健康に不調をきたすと、業務にさまざまな支障が発生します。

心身が健康的ではない状態だと仕事へのモチベーションが下がり、十分なパフォーマンスが発揮できないものです。

また中小企業では特に、1人でも従業員が休んでしまうと、業務の滞りや人手不足といった事態が引き起こされることも少なくありません。

従業員の健康面の不調は中小企業にとって影響が大きいものでしょう。

健康経営に取り組み、従業員の安定した労働を確保できるようになることは、中小企業にとって大きなメリットなのです。

生産性の向上・企業イメージの向上につながる

健康経営への取り組みは、生産性や企業イメージの向上に大きな効果が期待できます。

従業員が健康的であれば、仕事において高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

多くの従業員に対する健康的な労働のサポートによって、企業全体の生産性向上につながり、利益の向上を目指すことができます。

また、健康経営に取り組む中小企業は、従業員を大切にしている会社であるという評価へとつながるため、企業としてのイメージアップにも有効だといえるでしょう。

さらに、健康経営の取り組みによって優遇措置を受けられるケースもあります。

投資の観点で優遇

EGS投資の推進により、健康経営に積極的に取り組む企業は、高い評価を得られるようになってきました。

ESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(管理)の頭文字を取った言葉で、社会に対して配慮し、適切な企業統治が行われている会社を指します。

例えば、「環境」であれば、気候変動・廃棄物・水資源が挙げられます。

また、「社会」についてであれば、格差社会・差別・人口問題・労働問題・ダイバーシティが挙げられるでしょう。

このように、さまざまな領域にわたる課題に対して、企業としての取り組みが求められており、配慮が必要とされているのです。

不正会計や不適切営業などを許さない、しっかりとした管理体制を備えることが、企業の発展には必要不可欠といえるでしょう。

なお、EGS投資は、これらの課題に配慮して取り組む企業への投資であり、経営陣に対して持続可能な経営を求めることです。

従業員の健康を重視し、労働環境や柔軟な働き方を実現するといった取り組みによって、会社の生産性を向上する取り組みである健康経営とEGS投資は、方向性が一致しているといっても過言ではありません。

投資先として投資家に選ばれるためにも、健康経営の積極的な取り組みは、大きな前進となるでしょう。

融資や保険料で優遇

健康経営への取り組みによって、融資の面で優遇されることがあります。

日本政策投資銀行、DBJでは、DBJ健康経営格付があり、DBJの独自のスクリーニングシステムで、健康経営の取り組みに優れた企業を評価しています。

この評価で「先進的」ないしは「特に先進的」と認められた企業には、特別金利が適用されるため、条件の良い融資を受けることができるのです。

また、健康経営優良法人認定制度と連動した保険料率を設定している会社もあります。

三井住友海上あいおい生命保険株式会社では、健康経営優良法人認定制度により認定を受けた団体に対し、専用の割引制度を導入しています。

このように、健康経営の取り組みは、企業自体のイメージアップだけでなく、ビジネスの場でも優遇される場合があるといえるでしょう。

中小企業においても、積極的に健康経営に取り組むことで、優遇措置を受けられる場面が増えることが想定されます。

中小企業で健康経営を実施するのが難しい理由

健康経営は中小企業でも重要である取り組みですが、実施が難しいという声も少なくありません。

しかし、取り組みが難航している理由を正確にとらえることができれば、対策を立てながら進めていくことが可能です。

中小企業で健康経営の取り組みを行うことが難しいとされる理由を挙げ、どう対応すれば取り組みを進められるかを解説します。

「健康経営」の認知が不十分

そもそも「健康経営」とはどういうものかということを経営者や従業員が認知しておらず、取り組みが難航してしまうということもあるようです。

中小企業で取り組みを実施したい場合は、経営陣はもちろん従業員全体にも情報共有をするところから始めましょう。

健康の重要性や取り組むことで得られるメリットを説明し、中小企業の健康経営について、経営者や従業員の理解を高める必要があります。

効果を確認できる機会を作ったり、日常的に活用できるサービスを取り入れたりという工夫で、健康意識を高めていくことも大切です。

企業全体で取り組みを行うことが成功させるポイントになります。

健康経営に関する認知が広がるように環境を整えながら、各種取り組みを行うようにしましょう。

どのように進めるべきかわからない

どのような取り組みを行えば効果があるのかわからず、健康経営の実施ができていないという中小企業も少なくありません。

どのように進めるべきか分からない場合は、まずひとつ健康に役立つ福利厚生のサービスを導入してみるという方法があるでしょう。

社内にノウハウがない場合でもサービス提供会社に相談したり、同じサービスを活用して健康経営を成功させている企業の方法を参考にしたりといった対策を取れるので、取り組みを進めやすくなります。

健康に役立つ福利厚生サービスから、自社の従業員に合ったものを検討してみましょう。

取り組みを進めるための予算や人員が不足している

健康経営の取り組みを実施したくても、予算や人員が足りないという中小企業もあるようです。

しかし、コストや手間の少ない方法もあるので、工夫すれば中小企業でも可能になる場合が少なくありません。

たとえば食の面からのサポートを考えて、社員食堂を導入したいけれど予算が足りないというケースは、設置型の健康社食サービスを活用するとコストや手間を抑えることができます。

最近は健康経営の取り組みに役立つ様々なサービスがあり、内容を企業規模に合わせて調整できるなど、中小企業でも導入しやすいものが多いようです。

また中小企業が使える助成金もあるので、活用すればコスト面の問題が解決できるかもしれません。

健康経営の取り組みで予算や人員に不安がある中小企業は、コストを抑えられる代替のサービスを探すことや、助成金の申請を検討することで、取り組みを進めることができるでしょう。

「健康経営優良法人認定制度」は中小企業向けの部門がある

健康経営優良法人認定制度は、「経済産業省」や民間組織が行政の支援を受けて運営する「日本健康会議」が中心となって運営される公的な制度で、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰しています。

中小企業向けの部門があるため、中小企業は認定を受けることで、さまざまな利点があるといえるでしょう。

従業員や求職者、関係企業や金融機関などから、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む法人として社会的に認知させることも可能です。

認定を受けると、健康経営優良法人のロゴマークの使用が可能になります。

また、上記で紹介した保険料の割引を受けられるなどの利点もあり、積極的な活用がおすすめです。

中小規模法人部門におけるおもな評価項目

  1. 経営理念(必須)
  2. 組織体制(必須)
  3. 制度・施策実行
  4. 評価・改善(必須)
  5. 法令遵守・リスクマネジメント(必須)

認定基準としては、上記の5項目になります。

3.制度・施策実行は、「健康経営の具体的な推進計画」「受動喫煙対策に関する取り組み」が必須項目ですが、それ以外の項目については、中小企業は大企業と比較すると認定項目も少なく設定されています。

中小企業は、中小規模法人部門の認定を目標にするのも良いでしょう。

健康経営の取り組みを推進すれば、企業の発展を促すことにもつながります。

中小企業における健康経営取り組みの事例

一般に健康的であるという取り組みであっても、従業員の生活リズムや労働スタイルにあったものでないと、負担になってしまう恐れもあります。

中小企業によっては健康経営を始めてみたものの、浸透しなかったというケースもあるようです。

自社に合った取り組みを模索するためには、勤務形態などが似ている他社の取り組みの成功事例を調べて、参考にするとよいでしょう。

経済産業省は健康経営優良法人2023に選出された企業の取り組みを事例集にまとめて発表しているので、いくつか紹介します。

参考:ACTION!健康経営

南双サービス株式会社

南双サービス株式会社は人材確保や育成の面で経営課題を感じる中で、離職防止や企業イメージに効果がある健康経営に注目して、取り組みを始めました。

業務中に使用できる姿勢矯正クッションの導入など、継続ができる健康施策を実施することを念頭に取り組んでいるとのことです。

また、日頃から食事の食べ始めに野菜を食べるべジファーストの習慣をつけられるように、仕出し弁当に生野菜を付けて提供する取り組みも行っています。

健康経営の取り組みを続けた結果、社内のアンケートでは7割に達する従業員が食生活に気を使っていると回答するようになったなど、従業員の健康意識向上の効果を得られているようです。

日美商事株式会社

日美商事株式会社では、従業員が精神疾患で入院した経験が健康経営を始めるきっかけになりました。

従業員数が少ない中小企業であるため、1人の入院は仕事に大きく影響します。

取り組みを始めた当初は無関心である従業員も少なくなかったようですが、各部から健康管理委員を選出し、朝礼の場などで健康活動を推進したことで、従業員全体に健康への関心が高まったそうです。

また、講演や取材にも積極的に応じて社外への健康経営のPRにも取り組んでいます。

ブライト500を取得してからは認定企業であることを前面に出して採用し、応募者増加の効果も感じているということです。

高木建設株式会社

高木建設株式会社は、従業員の病気や労災の増加による生産性低下の恐れに直面し、健康経営に取り組みはじめました。

取り組みを進める中では、毎年の取り組みに変化をつけられないという悩みが発生したようです。

しかし、地域や業種の異なる4社で合同健康研究会を設立したことで、課題を話し合うことができるようになり、多彩な健康プロジェクトを推進していくことが可能になりました。

取り組みを行う中で取った社内アンケートでは、心身の不調で業務ができなかった日が0日だったと回答する従業員が、42.1%から80.1%まで改善しています。

休みなく現場を回すことができるようになり、健康経営による生産性の向上を実感しているということです。

中小企業が健康経営に取り組むポイント

健康経営は企業規模に関わらず重要な取り組みですが、中小企業ならではの課題も少なくありません。

中小企業において健康経営を成功させるためのポイントを解説します。

重要な経営課題として取り組む

健康経営は重要な経営課題であるという認識を、経営陣で共有しましょう。

従業員が健康を損なうと生産性やモチベーションの低下、離職率の上昇といった企業に大きなダメージを与える事態が起こりやすくなります。

取り組みを行わなかった場合にどれぐらいの損失が発生するかを試算して共有すれば、重要性がはっきりと見え、経営陣の課題意識を高めることができるでしょう。

採用や企業イメージへの効果といった社内外への影響力についても、他社の取り組みの成果を元に紹介するといいかもしれません。

健康経営を重要な経営課題として、企業全体で一丸となって取り組みを進めましょう。

推進のための組織体制づくりを行う

健康経営を効果的に行うためには、組織の体制づくりが有効です。

健康経営を推進する専門部署を設置したり、組織内の役割を分担したりと、健康管理のシステムを構築していきましょう。

中小企業などで人員を割けない場合には、人事部など、既存の部署で専任、もしくは兼任の人材を配置するという方法もあります。

責任を持って健康経営に携わることができる環境を整えましょう。

また、健康経営の必要性を伝えたり、健康経営に必要な情報を伝えるなどを担う推進者としての「健康経営アドバイザー」という資格もあります。

資格を取得してもらい、組織の体制づくりの中心役を担ってもらうのも一手でしょう。

さらに上の資格として「健康経営エキスパートアドバイザー」というものもあります。

より専門的な知識を得てもらうことは、健康経営の取り組みにも良い影響を与えることになるでしょう。

現在の状況や課題など、各部署で健康経営の取り組みが重要であることを認識し、情報を共有していくことが大切です。

健康経営に関する企画を役員会で取り上げるなどして、企業全体で健康経営の取り組みを行える体制づくりを推進していきましょう。

助成金を活用する

中小企業が健康経営を行う場合、コスト面に関して不安に感じる会社も多いようです。

予算が足りないという課題がある場合は、助成金を活用するという方法があります。

代表的な助成金としては、「小規模事業場産業医活動助成金」や「受動喫煙防止対策助成金」などが挙げられます。

「小規模事業場産業医活動助成金」は、労働者数50人未満の事業場が産業医や保健師と契約し、健康に関する意見や指導など受けるといった活動に適用できるものです。

「受動喫煙防止対策助成金」では、中小企業の喫煙専用室設置の工事費などについて補助を受けられます。

助成金を上手に活用することで、予算が少ない中小企業でも取り組みを進められるので、活用を考えてみてください。

顧問社会保険労務士がいる中小企業なら、助成金情報の照会をしてもらえる場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。

専門家によるサポートを受ける

社内だけで取り組むと健康経営について十分な知識が得られず、取り組みが難航してしまう場合があります。

効果的に進めるためには、専門家によるサポートを受けることも一つの方法でしょう。

産業医やコンサルタントと契約することで、健康に関するアドバイスを受けたり、従業員向けの改善プログラムを組んでもらったりすることができます。

社内だけでの取り組みに限界を感じる場合は、専門家のサポートを受ける方法を検討しましょう。

健康経営のきっかけとして取り入れやすい「食の福利厚生」

オフィスで野菜

健康経営の取り組みにはさまざまな方法がありますが、きっかけとして取り入れやすいのは「食の福利厚生」です。

食事は健康に密接に関わるものであると同時に、福利厚生の中でも食に関するサポートは多くの従業員に喜ばれる傾向があります。

食の福利厚生を活用すれば健康意識を持ってもらうきっかけを作りやすくなるため、健康経営との相性が良いと言えるでしょう。

食の福利厚生のうち、中小企業におすすめのサービスとして「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」があります。

「OFFICE DE YASAI」は設置型の健康社食で、専用の冷蔵庫に健康的なサラダや果物、お惣菜が届き、従業員が食事や間食に利用できるサービスです。

冷蔵庫を置くスペースがあれば導入できるため、従来の社員食堂のように広いスペースや人員は必要なく、低コストで利用できます。

規模に合わせてプランの調整も可能なため、10名程度のオフィスから1,000名以上の企業まで、利⽤⼈数に合わせた活用がされており、中小企業での導入実績も豊富です。

おいしく健康的な野菜や果物を会社で手軽に摂取できるのは助かると、従業員からの評判が高く、「OFFICE DE YASAI」が導入されてから社内の健康意識が高まったという声もあります。

健康経営を考えている中小企業の方は、ぜひ「OFFICE DE YASAI」の導入を検討してみてください。

まとめ

中小企業でも健康経営は大きなメリットを得られる重要な取り組みです。

予算面などに不安がある場合でも、助成金や低コストのサービスを検討すれば、健康経営の取り組みで十分に効果を得ることができるでしょう。

「オフィスで野菜」などの食の福利厚生サービスを上手に活用しながら、健康経営の取り組みを進めてみてください。

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