福利厚生制度
定着率とは?重視すべき理由と「福利厚生」を活用した改善施策のポイント
企業における定着率は重要な数値だといわれていますが、その定義や、重視される理由をご存じでしょうか。
今回は定着率について、「福利厚生」を利用した改善施策のポイントも交えながら詳しくご紹介していきます。
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目次
定着率とは?
定着率とは、入社した社員が、一定期間を経てどのくらいの割合で会社に残って働いているかを示す指標のことです。
定着率の数値が高い=従業員の離職が少ないことを意味し、働きやすい職場環境が整っていると言えるでしょう。
反対に定着率が低い=従業員の離職が多い企業は、職場環境に問題がないかどうかを見直す必要が出てきます。
定着率の計算方法
定着率の算出方法は
(一定期間後の定着人数÷一定期間の開始時点での入社人数)×100
となります。※期間内に中途入社した従業員は計算に含めません。
たとえば、あるタイミングで100人入社した場合、3年後に20人辞めていた場合、(80÷100)×100となるので、定着率は、80%となります。
もしその後、5年間でさらに20人辞めた場合、(60÷100)×100となり、定着率は60%となります。
このように、定着率は期間によって変動していきます。
平均的な定着率とは
厚生労働省の令和4年雇用動向調査結果の概況を参考にすると、常用労働者の定着率は85%(離職率15%)となっています。
定着率は男女間でも差があり、男性86.7%(離職率13.3%)女性83.1%(離職率116.9%)と男性の方が定着率が高くなっています。
また、一般労働者は88.1%(離職率11.9%)、パート労働者は76.3%(離職率23.1%)のように、雇用形態によっても差がみられます。
参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/gaikyou.pdf
定着率と離職率
一方、離職率は、一定期間において社員がどれくらい離職したかを指す数値で、定着率とは対になっています。
そのため、100%から離職率を引けば定着率を計算することができます。
例えば、離職率が15%であれば、100%から15%を引き、定着率は85%となります。
定着率を重視すべき理由
定着率の定義についてお話しましたが、なぜ定着率が会社にとって重要なのでしょうか。
ここからは、定着率を重視すべき理由について詳しくみていきます。
人材育成にかけるコストが減らせる
企業は社員を採用した後、その人材を育てなければなりません。
即戦力のある人材を採用したとしても、入社した社員が職場に慣れるまでは一定の時間がかかります。定着率が上がり会社を辞める人が減ると、長期間会社で働く人が増えるため、初期の人材育成にかかるコストを減らすことができます。
また、採用する社員が多いと、採用や教育をする人材も必要となるため、そのコストが必要となります。定着率が上昇すれば、人材採用や育成にかけるコストを減らすことができるでしょう。
良い人材を確保しやすくなる
求職活動において、定着率を重要視する人は多く見受けられます。定着率は、職場環境の状態を推測するにあたって、わかりやすい指標となるからです。
会社にとって、定着率が良ければ、職場環境が良いことをアピールできるポイントになります。
具体的な数値は信ぴょう性があり、高い定着率を示すことができれば、求職者に対して良い印象を与える可能性があります。
また、定着率の高さは、良い人材に長く働いてもらえることにつながるため、さらによい職場環境へと発展していく好循環がうまれることも期待できるでしょう。
生産性の向上につながる
上記でみてきたように、定着率と人材育成は大きく関わっています。
社員の入れ替わりが多く、引継ぎ業務が多い職場では、引継ぎ業務にばかり時間が取られ、生産性が下がる恐れがあります。
また、その都度人間関係を築いていかなければならないため、部署内の連携やチームワークを維持することも難しくなります。
反対に定着率が高ければ、こういった時間が短縮されるため、生産性が上がるでしょう。
業績の向上につながる
定着率が高いと、業績の向上につながります。
業績に大きく貢献している優秀な社員が辞めてしまうと、業績が下がる恐れがあります。
新しく入ってきた社員を教育しても、これから業績を上げてくれるという段階で辞めてしまっては、業績の向上につなげるのは難しくなります。
モチベーションが上がる
定着率の高い会社は、社員が働きやすい環境が整っている会社といえます。
社員一人一人の不平不満が減ってくれば、自然と業務に対するモチベーションも上がるでしょう。
社員のモチベーションが高ければ、社員は将来的にも展望を持って働くことができ、会社や周りにも良い影響を与えてくれることになるでしょう。
組織力が高まる
定着率が上がり、やる気のある社員が多く集まってくるようになると団結力がうまれ、組織力は高まります。
組織力とは、組織全体で共通の目標や展望を持ち、協力しながら業務を遂行する力です。
組織がまとまって動くときに発揮される実行力は、会社としては欠かせない要素であるといえます。
また、離職の傾向として、優秀な人材から離れていく事例が多くみられるため、定着率が下がると、会社全体における人材の質の低下につながる恐れがあるのです。
定着率を高い水準で維持できれば、組織力の高い会社をうみだすことにつながっていくでしょう。
定着率を上げるために取り組むべきポイント
定着率は、さまざまな理由で重要だということがわかりました。
では、会社としては、どのように定着率を上げていけば良いのか、ポイントをいくつか解説していきます。
・定着率と職場環境の現状把握
まずは、自社の定着率を分析し、自社についての状態を知ることが重要です。
平均値とくらべて自社の定着率はどうか、また現在と過去の比較など、自社について深く知り、労働条件の改善に役立てましょう。
また、入社人数、離職人数など自社についてのデータは日頃からしっかり管理しておくと、定着率や、さまざまな分析をしやすくなります。
・離職理由を探る
会社を辞める人を減らせれば、定着率は上がります。
もし離職理由が分かれば、どのように職場環境を改善すればよいかの大きな指標となるでしょう。
ただ、辞めていく人の本心を探るのは困難でもあるため、日頃から社員が職場について、どう思っているかを知ることがポイントになってきます。
社内でアンケートをとったり面談をしたり、何か問題がないかを調べれば、社員の離職を防げる可能性もあります。
何か問題があればすぐに見直していく対応が日頃からできていれば、定着率の改善につながっていくでしょう。
また、厚生労働省、令和4年雇用動向調査結果の概況によれば、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「職場の人間関係が好ましくなかった」など、さまざま理由で離職していることが浮かび上がってきます。
自社でそのような理由が見当たらないか、公の資料などを参考にしてもよいでしょう。
・人材配置を適切にする
人材の配置がうまくできていないと、仕事の効率が悪くなるばかりでなく、社員の負担も大きくなります。
社員がやりたいと思っている仕事ができているか、得意な分野で活躍できているかどうかに気を配ることは大切です。
適材適所が実現できれば、定着率を上げることにつながっていくでしょう。
社員の理想とする仕事と、実際の仕事とのギャップが大きくなればなるほど、職場を離れることにつながる可能性があります。
日頃の業務に対する充実度、入社前と実際仕事をしてみてどう感じているかなど、カウンセリングを行い、把握しておくことも大切だといえます。
・丁寧なキャリアサポート
社員一人一人のキャリア形成のサポートをすれば、社員の仕事に対する充実感も増し、定着率の向上に結びつくでしょう。
離職はさまざまな理由でおこってしまいます。
人間関係や仕事に対する不満のほかに、将来の展望がみえない不安から離職を選択するケースもあります。
仕事を通して将来に役立つスキルを身に付けられたり、キャリアアップが見通せるなど、社員にとって魅力的な会社であれば、定着率も向上するでしょう。
目的意識を持って仕事に励むことは、充実した社会生活につながります。
資格取得のための費用補助や、スキルアップのためのセミナーを開くなど、丁寧なサポートがある職場なら、社員も安心して長く働けるのではないでしょうか。
・福利厚生の充実
福利厚生とは、給料や賞与といった基本的な労働対価に加えて、従業員やその家族に対して提供する報酬のことです。
福利厚生には雇用保険や健康保険などの法定福利厚生と、法定外の福利厚生があります。
法定外の福利厚生は住宅手当や通勤手当、健康診断の補助、またスポーツクラブの割引や、オフィス内の飲み物を無料にするなどがあります。
福利厚生が充実していると社員は安心して働くことができ、また満足度も高まります。
また求職者が仕事を選ぶ際、会社の福利厚生は比較検討される材料になることも多く、充実している印象を与えることができれば、優秀な人材に入社してもらえる機会も増えるでしょう。
これらのことから、福利厚生は定着率向上の大きなポイントとなるといえます。
定着率を下げてしまう要因となるもの
定着率の重要さ、また定着率を上げるポイントをご紹介してきましたが、反対に、定着率を下げてしまう要因とは何なのでしょうか。
具体例を挙げてみていきます。
・コミュニケーションのトラブル
会社で働くにあたり、人間関係はかなり重要なポイントであるといえます。
職場の上司や同僚とトラブルになったり、円滑な関係が築けなければ、社員には大きな精神的負担がかかります。
出社が難しくなったり、そのまま離職になったりすれば、定着率も低下することになります。
そのような事態にならないためにも、日頃から社内、また社外においても、人間関係が社員に大きなストレスとなっていないかを確認しておきましょう。
会社での個人面談や、メンタルカウンセリングを定期的に実施すれば、トラブルを防げる可能性も高くなるため、常時相談できる窓口などを設けておくのも良いでしょう。
会社のスペースを使って、コミュニケーションがとれる場所をつくることも有効です。
社員同士の交流や、休憩がとれるスペースなどを設置し、気軽にコミュニケーションがとれるようにすれば、社内の良い雰囲気づくりに役立つでしょう。
また、社内で交流を深めるイベントを開催したり、サークル活動なども効果的です。
会社が人間関係を円滑になるようサポートすることで、定着率が上がる可能性は十分あるといえます。
・休日日数や労働時間の不満
労働条件や環境の不満から離職する人が多いことは、上記でもみてきました。
自社の労働環境を見直し、改善点を探すことは重要なポイントの一つです。
労働基準法に反していることがないのはもちろんですが、個々の労働負担やそのストレスもチェックしましょう。
また、会社で規則を定めるだけではなく、それらが実行できるかどうかに配慮することも大切です。
ノー残業デーでも、仕事が多忙であれば社員は帰りたくても帰れないかもしれません。
また、会社が有給休暇取得を推奨していたとしても、誰も有給をとらないなど上司に言い出しにくい雰囲気があれば、なかなか取得率は上がらないでしょう。
仕事量の偏りをなくしたり、有給休暇消化の期限を設けるなど、具体的な施策を提示して、労働環境の見直しをしていくことが大切です。
・評価が適正でない
人事評価が適正に行われないことも、定着率を下げる原因となります。
人事評価の不透明さや不公平さは、社員のモチベーションが大きく低下する要因となってしまうことがあります。
努力しても評価が上がらない、成果を出していても待遇が悪いなどが続けば、他の職場にそれらを求めて離職する社員が出てくるかもしれません。
社員の一人一人の努力や活躍がきちんと認められ、それに沿った待遇をしていくことは定着率を上げることにつながるでしょう。
一人の上司のみで部下の評価を一方的に決めてしまうことは避け、他の社員や、本人の意見が反映されるようにするなど、社員が納得できるような評価の仕方を取り入れることが大切であるといえます。
評価が適正に行われていると社員が安心できれば、会社に対する信頼関係を築くことができ、定着率の向上に結びついていくでしょう。
定着率向上に「食の福利厚生」が貢献!
前述の通り、基本的な労働条件の他に、休日や働きやすさなど福利厚生の充実が定着率の向上には有効です。
社員一人一人がやる気を持って、長く働いてもらえる会社にしていくには、今までの福利厚生を見直したり、新しいサービスを導入したりすることも、大切であるといえます。
福利厚生についてのアンケート結果によると、従業員があってよかった、良いと思うものは、住宅手当や家賃補助、宿泊施設の割引などの他に、「食堂・昼食補助」が上位になっています。
休憩時などのご飯の楽しみがあれば、出社したくなる会社の環境づくりの一環にもなります。
また、食事に気を使うことは社員の健康維持に役立ち、活力がうまれることも期待できます。
このように社員の満足度が上がれば、「食の福利厚生」は定着率の向上にもつながっていくでしょう。
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「食の福利厚生」は定着率の向上に大きく役立ちますが、食堂がない会社も多くあることでしょう。
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栄養バランスを考えた食事は、社員の満足度や健康に大きく貢献することでしょう。
まとめ
今回は定着率とは何か、またその重要視する理由についてと、「福利厚生」を使った改善施策も併せてご紹介しました。
福利厚生などを利用して定着率を上げていけば、会社も働く社員も一緒に発展、成長していけます。
ご紹介したポイントを参考に豊かな社会生活を実現させていきましょう。
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