働き方改革

-2023.01.30.Mon

360度評価とは?メリットやデメリット、実施の注意点を解説

「360度評価」という人事評価制度が近年、企業で採用され始めています。

これまでの人事評価で不足していた内容を補えることから、経営者や人事担当者の関心が高い評価制度です。

初めて360度評価を知る方も、企業に導入するかどうか検討中の方も、360度評価の概要から制度設計に至るまでまるごと解説しますので、ぜひチェックしてみてください。

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360度評価とは

これまで、企業が従業員を評価するときには、直属の上司や人事担当者だけが関わることがほとんどでした。

人事評価の内容は個人情報を含んでいることから、機密情報として扱ってきた側面もありますが、評価する人を限定してきたのです。

そのため、上司とそりが合わないと、業務を進めにくいだけでなく、高い評価も望みにくいため、必要以上に上司に気を遣っていた人もいることでしょう。

オフィス内で常に上司の目を気にして仕事をしてきた人もいるかもしれません。

360度評価とは、評価対象者が直属の上司だけでなく、同僚や部下など、周囲のさまざまな立場の人に評価を受ける制度です。

多角的な視点から公平で客観的な評価が行われるため、評価対象者に評価内容を納得されやすいという特徴があります。

国が企業に多様な人が活躍可能な労働環境づくりを促す「働き方改革」により、新たな評価方法である360度評価に注目が集まり、導入する企業が増えています。

360度評価を取り入れる目的

360度評価を取り入れる目的は、従業員の行動変容を促すことです。従業員に促したい行動の基準は2種類あります。

自社が大切にする行動指針に加えて、高業績を上げている従業員の行動特性です。

この2つの基準を360度評価を介して周知すれば、企業が従業員に望む行動を促すことが可能となります。

つまり、基準を元に評価項目が作成されていれば、従業員がどのような時も評価項目を意識し行動するようになれば、多くの従業員が自社が望む従業員像に近づいていくことになるのです。

ただ単に新しい評価制度を導入すれば企業経営がしやすくなるという理由ではなく、目的を持って導入することが大切です。 

360度評価を取り入れるメリット

企業が従来の人事評価方法から360度評価に変更するメリットはたくさんあります。

その中でも、多くの企業が得られる可能性が高い3つのメリットを紹介します。

社員のモチベーションアップにつながる

360度評価を導入する大きなメリットは、従業員のモチベーションアップが期待できることです。

従業員のモチベーションを向上させる方法として代表的なものは、昇進や昇給、報酬アップですが、人事評価の都度、それらを上げ続けて行くには限界があるでしょう。

ほかにも、モチベーションアップのためには、仕事のやりがいや担当する仕事の難易度が上がることなどによる成長実感、周囲の方と同じ目標に向けて働く一体感など、さまざまな方法があります。

360度評価の導入もモチベーションを向上させる方法として活用していくことが可能です。

360度評価は、さまざまな方から評価されることになるので、自分への評価だけでなく期待値を知る機会が増え、成長を実感しやすくなります。

「企業の歯車だから自分はいつでも交換可能だ」と思っているような従業員にも、360度評価を取り入れて個人に光を当てることで、自己重要感も上がっていくでしょう。

評価に対する不公平感が軽減される

360度評価を導入すれば、これまでの人事評価よりも多角的に評価されるため、より公平な評価が期待できます。

従業員の評価に対する不公平感が軽減されることがメリットといえるでしょう。

上司や人事部の評価だけでなく、部下や同僚などの評価が加われば、評価の信頼性が上がります。

たとえ、上司が従業員の功績を見逃していたり、忘れてしまったりする場合にも、周囲が評価することで評価漏れを防ぐこともできます。

従業員は、公平に評価を受けられる企業だということが分かれば、企業への信頼感も増し、仕事へのモチベーションも高まることが期待されます。

モチベーションの高い従業員が多くなれば、企業の業績にも関わってくるため、とても重要なことだといえるでしょう。

管理層の意識が変わる

360度評価を導入する3つ目のメリットは、管理層の意識が変わることです。

業績評価は数値として表れるため、課長や部長が統括するグループの評価もしやすいでしょう。

しかし、そのような管理層のマネジメント能力や若手の育成などの手腕の評価はなかなか難しいものです。

360度評価を導入して部下による行動評価を行えば、管理層のこれまでは可視化できなかった手腕を明らかにすることができるでしょう。

チームをまとめる力など、これまで評価されなかった点が評価されるようになれば、管理層のモチベーションアップにもつながっていくはずです。

また、ある程度の役職に昇進すると、部下からの率直な意見や自信に対する評価などは耳にしなくなってくるでしょう。

そのような管理層に、適切に部下や周囲の評価を届けることは、成長の停滞を防ぐことにつながります。

部下や周囲の評価から気づきを得て、意識が変わり、行動変容も期待できるでしょう。

管理層の意識が変わることにより、部下や周囲の人の仕事がしやすくなるという好循環も生まれる可能性があります。

360度評価の注意すべきデメリット

メリットばかりに思える360度評価ですが、実はデメリットも併せ持ちます。

デメリットは、実際に360度評価を導入してみないと気付きにくい傾向がありますので、あらかじめ注意すべきデメリットを把握しておきましょう。

適切な運用を実現するまでに負担がある

従来型の評価制度から360度評価に切り替えたとき、適切な運用を実現するまでには、さまざまな人に相当の負担がかかることがデメリットです。

今の評価制度は、企業の創業当初から続いてきたものかもしれません。

従業員だけでなく、管理層にも多かれ少なかれ、戸惑いが生じるはずです。

これまでは評価を受けるだけだった人も評価をする側にも回るため、時間的にも精神的にも負担感が増す恐れがあります。

人事担当者は、このような状況を把握しつつ、360度評価の実現に向けて動いていくため、負担感は大きくなるでしょう。

途中で運用中止とならないよう、360度評価を運用するための目的をしっかりと持ち、計画性を持って運用に臨む必要があります。

評価が甘くなるおそれがある

360度評価は、上下関係のない人同士が評価をし合うことになりますので、評価が甘くなる恐れがあることがデメリットとして挙げられます。

仕事を円滑に進めていくために、できれば同僚や同期の人とは仲良くしておきたいと思う従業員が多いはずです。

どうしても評価が甘くなりがちになる傾向は否めません。

高い評価をもらったら高い評価を返すというようなことが続いてしまうと、企業全体で甘く評価する慣習ができてしまうでしょう。

360度評価制度の特徴である、公平で客観的な評価は望めなくなります。

主観や個人的な感情が評価に影響するおそれ

360度評価は、多角的な視点から評価できることがメリットではありますが、個人の主観や感情が評価に影響する恐れがあることがデメリットでもあります。

優秀な同期へ嫉妬や、出世争いをしている同僚の足を引っ張りたいという気持ちなど、個人のさまざまな思いや気持ちが評価に込められてしまうのです。

低い評価をもらったから低い評価を返すような報復的な評価が行われることもあるでしょう。

360度評価の導入における注意点

360度評価は、評価の対象者は誰なのか、どのような方法で評価をするのか、その評価をどのように活用するのかなどの制度設計が重要です。

さらに、作成した制度設計をどのように運用していくのかを計画しておくことも大切です。

360度評価を導入するにあたって、特に注意が必要な点をまとめました。

対象は全社員

360度評価の評価対象は、全社員です。

誰もが評価をし、誰もが評価を受けることができる状況でなければ、360度評価の公平で客観的な評価は得づらくなります。

上司も部下も、同僚も同期も、例外なく評価をし、評価を受けるのです。

誰もが評価し、評価される環境をつくることが大前提なのが360度評価です。

わかりやすい評価基準を設ける

360度評価の評価基準は、執務態度を中心にわかりやすい項目を設けることが重要です。

従来の人事評価では執務態度のほかにも、仕事の成果や能力も評価項目として含まれていることが多くあります。

仕事の成果や能力は、周囲の人が把握するには限界があるでしょう。

周囲の人が評価対象者の日頃の様子を見ることで評価が可能な、執務態度に項目を絞ることがおすすめです。

評価項目は、回答しやすくするため、できるだけ具体的な内容を設けることも大切です。

例えば「周囲とコミュニケーションを図りながら業務を進めている」「業務に悩んでいる人がいたら積極的に声をかけている」などです。

それでも、中には「どうしても評価ができない」「どう評価したらいいかわからない」という人もいるでしょう。

評価者の負担感をなくすため「評価不可能」「わからない」などの回答項目を用意しておく配慮も求められています。

このような配慮をしておくことで、誰もが加われる評価制度となるのです。

評価得点には平均値を使う

個人の主観や感情が360度評価には表れやすいため、評価内容にばらつきが出る可能性があります。

従業員同士の好き嫌いが評価に込められてしまうことや、業務での関わり具合によっても評価が異なってくるでしょう。

評価の最高・最低値ではなく、公平な評価をするために評価得点には平均値を使用することが大切です。

平均値を使うことが分かっていれば、評価をする側も、自分が感じた通りの評価を付けやすくなるでしょう。

課題の改善に向けたアクションが重要

360度評価は、従業員が自分の執務状況を把握する機会です。

時には自信を持ったり、時には改善点に気付いたりして成長につながることもあります。

360度評価では数値だけではなく、記述式欄を設けて、フィードバックできるようにすることがおすすめです。

具体的には「チーム全体で目標達成に向けて行動するには、どのような改善をすればいいか」などというように、評価者が記述しやすい内容を工夫しましょう。

記述内容も具体的であれば、評価を受けた人が改善に向けて動きやすくなります。

360度評価のフィードバックするだけでなく、さらに改善に向けてアクションを促すためには上司と部下の面談機会を設けるのもおすすめです。

チームを組んでいる場合にも、チームリーダーとチームメンバーが行動の改善に向けて話し合うことで、目標に向けて動きやすいチームとなっていくでしょう。

360度評価を制度設計する際は、どのような運用法を採用するかに加えて、評価の活用法についても十分に検討しましょう。

まとめ

360度評価を導入することは、従来の人事評価の仕組みを刷新する、企業内でも大きな改革となるでしょう。

運用当初は、なかなか上手く運用できず大変かもしれませんが、従業員をよりよい形で評価をしていこうという企業の姿勢は、従業員からも好意的に受け止めてもらえるのではないでしょうか。

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働き方改革の一環として、360度評価と共に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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