福利厚生制度

-2024.05.24.Fri

福利厚生の休暇制度「特別休暇」とは?有給か無給か、メリットや注意点を解説

昨今の若い世代は、ワークライフバランスを重視する傾向にあるようです。実際、福利厚生に関する複数のアンケートでも、特別休暇はランキングの上位に入っています。確かに、忙しい現代人にとってプライベートが充実していれば、仕事のパフォーマンスの質も向上しそうです。

今回は、福利厚生の休暇制度「特別休暇」を導入する際のメリットや注意点を詳しく解説します。

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福利厚生の休暇とは?「特別休暇」の概要

まず最初に、福利厚生の休暇について概要を説明しましょう。

実は、単に従業員にとって嬉しいだけではなく、企業側にとっても導入メリットのある福利厚生のひとつです。

制度の概要を正しく理解し自社の福利厚生として上手に運用すれば、労働生産性や従業員満足度の向上にもつながるでしょう。

福利厚生の休暇の種類

福利厚生の休暇の種類は2つで、法律で義務づけられている法定休暇と、企業が自由に設定できる法定外福利厚生としての特別休暇があります。

このうち主な法定休暇は、下記の11項目です。

<法定休暇の種類>

名称内容
年次有給休暇入社6ヶ月後に5日間、以後、勤続年数に応じて最大20日まで付与できる
生理休暇女性労働者のすべてが取得できる。日数の上限・下限に関する規定がなく、企業側で上限を設定できない
介護休暇1年につき5日、要介護の家族が2人以上の場合は最長10日まで取得できる
妊娠・通院休暇従業員から要望があれば通院時間を確保する義務がある。回数や時間などは、企業側で設定できる
産前休業出産予定日の6週間前から利用でき、従業員から請求があれば取得させる必要がある。強制ではないため、直前まで就業させても違法にはならない
産後休業出産した翌日から8週間取得でき、強制力がある。従業員から復帰希望があり、医師の認可があった場合は産後6週以後の就業が認められる
子の看護休暇就学前の子どもに認められ、年5日の取得が可能。未就学児が2人以上の場合は最大10日で、時間単位で取得できる
育児休業雇用形態および性別を問わず、子どもが1歳になるまで連続して取得できる
出生時育児休業子どもの出生後、8週間以内に最大4週まで取得できる。分割取得が可能で、休業期間中も一部の就業が認められる
裁判員休暇裁判員に選出された場合に、参加のために必要な日数や時間を取得できる。有給か否かは企業で設定できる


法定休暇は、法律で義務づけられているため、従業員が申し出た場合は取得させる必要があります。

有給にする必要のあるものと、企業に判断が委ねられているものとがあるので、確認しておきましょう。

特別休暇は無給?有給?

特別休暇は、企業が自由に設定できるものです。従って、無給か有給は、企業方針や内容によって判断すべきでしょう。

一般的に、私事のなかでも、やむを得ず休む必要のある慶弔や病気に関するものは有給として取り扱う企業が多いようです。

特に、身内の不幸は予測できず、急に帰省せざるを得ないケースも少なくありません。だからこそ、従業員の気持ちを考慮して有給にする企業が多いのです。

病気についても、ここ数年の新型コロナウイルスやインフルエンザなどに罹患した場合は、ほかの従業員に感染し、業務に支障を来すこともあるでしょう。

有給にしてしっかり休んでもらったほうが、ほかの従業員も安心して働けますし、無理して出勤して職場で集団感染となる事態も未然に回避できます。

もちろん、予算の事情で無給にする企業もありますが、有給にするほうが従業員を大事にしているという姿勢は伝わりやすいでしょう。

福利厚生における特別休暇のおもな例

この章では、福利厚生における特別休暇の主な7つの例について説明します。

慶弔休暇

慶弔休暇は、親族の葬儀や結婚など冠婚葬祭に適用されます。なかには、「忌引き休暇」や「結婚休暇」など別の名称で、福利厚生として導入している企業もあるようです。

日数や対象範囲などの詳細は、企業によって異なります。

これから導入する企業の担当者は、下記の例を参考にするとよいでしょう。

<慶弔休暇日数>
①弔慰:配偶者は10日、一親等(父母・子など)は5日、二等親以上(祖父母など)は2日
②結婚:本人は5日、子は2日

なお、遠方に帰省する必要のある従業員に対しては、さらに日数を追加するケースもあるようです。

バースデー休暇

バースデー休暇は、従業員本人の誕生月に与えるものです。

福利厚生として導入する際は、一般的には1日のみで、当月であれば任意の日を休みに設定できる旨を定めていることもあります。

なかには、繁忙期で同月に取得できない場合は、翌月以降に繰り越せるよう配慮する企業もあるようです。

1年に1日のみで、従業員の誕生日が同じ日に重なる可能性は低いため、福利厚生として導入しても納期の立て込む時期に休みが重なる事態を回避できるでしょう。

病気休暇

病気休暇は、傷病休暇ともよばれています。

有給で対応できる風邪や軽いけがとは異なり、数日では回復を見込めない場合に付与されるものです。

本来、業務時間内に起こった場合は、福利厚生ではなく、労災保険で休業する従業員の補償が義務づけられています。

一方、休暇中や突発的な病気やけがなどは、本来なら企業側に補償する義務はありません。

しかし、骨折や手術などで入院が必要な場合は、長期にわたって休業せざるを得ないでしょう。

福利厚生として導入すれば、業務時間内の労災に対しさらに手厚く補償することも、勤務時間外で発生した病気やけがに活用することもできます。

企業が従業員をいたわる姿勢も伝わりやすく、万が一の時に従業員が安心して活用できる福利厚生といえるでしょう。

なお、美容整形など健康保険の対象外となる事案については、対象としない企業が多いようです。

リフレッシュ休暇

リフレッシュ休暇も、要件や日数、有給または無給などの条件は、企業が自由に設定できます。

法定外福利厚生ですので、必ずしも付与する義務はありませんが、勤続年数の長い従業員に対し、勤続3年、5年、10年などを区切りに一定の日数を付与する企業が多いようです。

令和5年に厚生労働省が実施した調査によると、300~999人までの中規模企業は約30%、1,000人以上の大企業は約40%以上が福利厚生として導入しています。

本来は、永年勤続表彰を兼ねて付与するもので、以前は記念品の贈答などで対応していました。

最近では、福利厚生のなかでも、予算のかからないリフレッシュ休暇に変更する企業も少なくありません。

日数に制限がないため、有休とつなげて休む場合に備え、就業規則に「上長の判断が必要」などの条件を定めておけば、繁忙期や納期の多い時期の人手不足も回避できるでしょう。

旅行や帰省、短期留学や資格の勉強など目的に合わせて取得できれば、従業員の仕事へのモチベーションの向上にもつながります。

夏季休暇・冬季休暇など

夏季休暇・冬季休暇も、企業が自由に設定できる法定外福利厚生です。

取得できれば、お盆休みや年末年始に家族や親戚と過ごしたり、家族旅行に出かけたりできるので、従業員から喜ばれるでしょう。

企業側に制度化する義務はないものの、特に、家庭を持っている方からはニーズの高い福利厚生のひとつです。

法定外福利厚生ですので、有給か無給かは企業に委ねられていますが、有給にすれば、従業員の企業満足度の向上を期待できます。

なお、夏季休暇や冬季休暇という名目で、有給休暇を強制的に消化させる行為は違法となりますので注意しましょう。

ボランティア休暇

ボランティア休暇は、「社会貢献活動休暇」ともよばれる法定外福利厚生のひとつです。

注目された背景には、1995年に起こった阪神淡路大震災や、2011年の東日本大震災でボランティアとして志願する人が増えたことにあります。

90年代初期から新設する企業が見られるようになりましたが、先の震災による被災地支援の流れで、浸透が一気に加速しました。

具体的には、企業が、従業員の無償によるボランティア活動への参加を支援・奨励するために付与するものです。

従業員が被災地の活動やイベントに参加すれば、企業の社会貢献度は高まり、地域活動に貢献することで、周囲の住民達からの企業活動への理解もさらに深まるでしょう。

ちなみに、このボランティア休暇は、1993年に機械メーカーの富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(旧:富士ゼロックス株式会社)が日本で初めて導入しました。

同社では、3ヶ月から上限2年間の長期で休むことを認め、休職中も給与・賞与に相当する援助金が支給されています。

もちろん、法定外福利厚生ですので、企業側で有給か無給かを決定できますが、企業にとってもメリットがあるため、有給にすることも多いようです。

全国社会福祉協議会では、ボランティア活動等の事業を支援するための助成金制度や貸付制度も実施していますので、導入する場合は参考にしましょう。

その他ユニークな特別休暇

法定外福利厚生における特別休暇には、各企業が独自に設けているユニークなものもあります。

ここで、いくつか代表的なものを紹介しましょう。

休暇の名称内容
記念日休暇結婚記念日や子どもの誕生日などで、年に1日取得できる
失恋休暇失恋した時に取得でき、年齢によって取得日数が異なるよう配慮されている
サッカー休暇ワールドカップやオリンピックの時のみ活用できる
二日酔い休暇飲み過ぎた翌日に、年2回まで取得できる
親孝行休暇両親との時間を過ごせる。親孝行手当が別途付与されることもある
プロポーズ休暇プロポーズする日を申請すると取得できる。報告する旨が定められている


いずれも、企業や事業主が自社の従業員を考慮しつつ、企業ブランディングの一環として導入しているものです。

これから福利厚生として導入を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。

福利厚生として特別休暇を導入するメリットとは?

福利厚生として特別休暇を導入するメリットは、大きく分けて4つあります。

1.心身の健康維持
残業や休日出勤で疲れている時に、自宅での休息やプライベートでの活動にゆっくり時間をかけることでリフレッシュでき、心身の健康維持につながる

2.企業満足度の向上
繁忙期に区切りがついた時やプライベートを優先させたい時に取得できれば、企業から大切にされているとの従業員満足度が高まり、働くモチベーションや生産性の向上を期待できる

3.離職率の低減
福利厚生として取得しやすい労働環境であればストレスを感じることも少ないため、従業員の離職を回避できる

4.企業ブランディングの構築
ボランティア関連や従業員をいたわるものを導入すれば、社会貢献度も高まり、従業員に配慮しているとのポジティブな企業イメージをアピールできる

企業担当者は、これら4つのメリットをふまえた上で、自社に福利厚生として導入すべきものをじっくり検討しましょう。

福利厚生として特別休暇を導入する手順

この章では、福利厚生として特別休暇を導入する際の手順について説明します。

  1. 導入する内容を決定する
  2. 給与支給の有無を決定する
  3. 取得できる日数や上限を決める
  4. 取得のタイミングや申請方法を明確にする
  5. 就業規則に取得する際の詳細を明記する

取得できる日数やタイミングは、休暇の内容によって検討しましょう。

一般に、記念日の場合は取得日数を1日のみとし、短期でも土日とつなげて最大9日間を取得できるよう、5日前後を目安としている企業が多いようです。

また、中期の場合は14日間、海外のボランティア活動などを奨励する場合は、1~2年とするケースもあります。

取得のタイミングは、「1ヶ月前に上長に申請する」など事前に規則を定めておくと、複数の従業員の休みが重なる事態を回避できるでしょう。

なお、納期が多い月や繁忙期など、福利厚生の活用で業務に支障を来すことを考慮して、従業員と上長とで調整できるよう事前に就業規則で定めておくと、より安全です。

特別休暇を導入する際に注意すべきこと

福利厚生として導入する際の注意点は、次の2点です。

1.年次有給休暇に含まない
企業は従業員に対し、年5日の有給休暇の付与が義務づけられています。
一方、特別休暇は法定外のため、有給休暇として付与することは認められていません。
ただし、特別休暇を無給とし、年次有給休暇に振り替えできる旨を就業規則に記載している場合には認められます。

2.福利厚生制度を形骸化させない
年次有給休暇を取得しづらい企業は、法定外福利厚生として特別休暇を導入しても利用されず、制度自体が形骸化するリスクがあります。
有給休暇の取得率を高めたうえで、特別休暇を組織全体に周知することが重要です。

以上2点を念頭に置いて給付の有無や取得可能な日数を検討し、効果的に導入しましょう。

まとめ

慌ただしい現代社会では、年収アップよりもプライベートの充実を重視する傾向があるようです。

従業員が、理想のワークライフバランスを得られるようサポートするには、法定外福利厚生として特別休暇を導入するのもよいでしょう。

ボランティア活動や傷病に関するものであれば、従業員の企業満足度が向上するだけでなく、企業ブランディングにもつながります。

このほか、法定外福利厚生を検討する際は、食の福利厚生を充実させるのもおすすめです。

たとえば、オフィス内に手軽に設置できて好きな時に食べられる「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」は、幅広い業界で福利厚生として導入されています。

特別休暇とあわせて導入すれば、健康経営の一環としても大きな効果を発揮できるでしょう。

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