企業の健康経営

-2022.09.20.Tue

健康経営宣言とは?取り組みのメリットや活用方法、実施の流れを解説

健康経営とは

そもそも「健康経営」とは、企業が自社従業員の健康管理を経営方針としてとらえて実践し、従業員の健康を維持・増進させることで生産性の向上を目指そうとする経営手法のことです。

現代の日本社会は、「ブラック企業」という語が社会現象となっているように長時間労働が恒常化し、心身の健康維持が難しい時代になっています。

このような中、企業が自社の労働生産性を高めるためには、従業員の健康状態を把握し、適切な健康管理を行うことが重要です。

健康経営宣言(健康宣言)とは

「健康経営宣言」(健康宣言)とは、組織や企業が加入している全国健康保険協会または健康保険組合などの保険者のもとで、病気の予防や健康づくりなど、従業員に対する健康管理への取り組みを宣言することです。

日本では約5年前から、企業に健康経営宣言を推進するよう、政府が促しています。

健康経営は、従業員の健康維持・向上を図るだけでなく、生産性向上や組織の持続的な発展にもつながる取り組みです。

企業が健康経営宣言をすることで、従業員の健康意識を高め、働きやすい環境を整備することが期待されています。

また、企業間の競争力向上や人材の確保・定着にも寄与するとされており、健康経営宣言は組織だけでなく、社会全体の健康への関心と取り組みを高める重要な手段です。

保険者による健康宣言事業とは 

 中小規模の企業が健康経営優良法人に申請を行うためには、保険者が行う「健康宣言事業」への参加が必要です。

健康宣言事業は、事業所などで健康経営宣言を策定する際に、保険者が支援する取り組みであり、保険事業の一環として保険加入者の健康増進を促すものでもあります。

企業が健康経営優良法人認定制度へ申請する際は、健康経営優良法人認定事務局が保険者に以下の2つの項目について照会します。

①健康宣言事業の実施の有無
②事業所等の健康宣言事業への参加の有無

保険者が健康宣言事業を開始する際は、健康経営優良法人認定事務局や経済産業省への届け出は必要ありません。

日本国内のすべての保険者が、健康宣言事業を行っているわけではありませんので、注意しましょう。

健康経営宣言を検討している企業の経営者や担当者は、健康宣言事業を行っているかどうか、事前に保険者への確認が必要です。

健康経営優良法人の認定要件となっている 

経済産業省は東京証券取引所と連携し、2014年度以降、上場企業の中で特に「健康経営」を積極的に実践している企業を「健康経営銘柄」に認定しています。また、2016年度からは健康経営に取り組む上場企業・中小企業等に対する「健康経営優良法人認定制度」も策定しました。

「健康経営宣言」(健康宣言)は、この「健康経営優良法人」の認定要件となっています。

「健康経営優良法人」とは、全面的な行政の支援のもと、民間と行政との連携活動を目的に結成された「日本健康会議」によって認定された法人のことで、いわゆる「ホワイト企業」のことです。

「健康経営優良法人」の認定は、大企業や規模の大きい医療法人等を対象とする「大規模法人部門」と、中小企業や中規模の医療法人等を対象とする「中規模法人部門」の2部門によって構成されます。

このうち「大規模法人部門」の上位500社は「ホワイト500」に、2021年以降は、「中規模法人部門」の上位500社が「ブライト500」に認定されています。

どちらも申請時点で「健康経営宣言」(健康宣言)を実施している必要があり、実施見込みでは受理されません。

さらに、「健康経営宣言」(健康宣言)は、単に宣言すればよいものではなく、下記の3つを実践していることが要件となっています。

・健康に関する課題の把握

・取り組み内容の選定と宣言

・宣言した内容に関するPCDAサイクルの活用

従って、企業は、「健康経営優良法人」に認定されることを想定して「健康経営宣言」(健康宣言)を実施するとよいでしょう。

健康経営宣言のメリット

企業が、「健康経営宣言」を実践すると、主に3つの大きなメリットがあります。

社内外への周知・アピールになる

まず、「健康経営宣言」を実践する1つ目のメリットは、社内外への周知・アピールになることです。

「健康経営」は、従業員の健康管理を行うことですから、「健康経営宣言」の実践は、「企業が従業員を大切にしている」ことを社内外に周知することにほかなりません。

「健康経営宣言」によって「健康経営」を推進していることが世の中に広く知れ渡れば、その企業は世間だけでなく、求職者からもよい印象やイメージを持たれるようになるでしょう。

企業の社会的な評価が高まれば、取引先である金融機関や関連企業と信頼関係を築くことにもつながります。

モチベーションやエンゲージメントの向上につながる 

従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上につながるというのも、「健康経営宣言」を実践するメリットの1つです。

企業が「健康経営宣言」を発信すれば、従業員も企業の健康作りへの真摯な姿勢を改めて認識するでしょう。

慢性的な人手不足の日本社会では、いかに従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、離職率を低減させるかが、企業の今後の発展に大きく影響します。

今や、以前のように「終身雇用が当たり前」という時代ではありません。だからこそ、企業は日ごろから従業員を大事にしていることを積極的に発信していく必要があるでしょう。

健康診断の実施に留めず従業員に寄り添った「健康経営」を実践すれば、従業員自身の生活習慣や周囲環境の見直し、改善行動にもつながります。

また、従業員自らが企業の「健康経営宣言」の実践によって以前より体調がよいと実感できれば、働くモチベーションやエンゲージメントの向上を期待できるでしょう。

生産性の向上につながる

「健康経営宣言」を実践する3つ目のメリットは、生産性の向上につながることです。

心身ともに健康でなければ、仕事に対する集中力が欠け、パフォーマンスの質も低下してしまいます。

昨今は、成人病や生活習慣病など、現代の生活習慣や環境に起因する、いわゆる「現代病」を患う人も少なくありません。また、ストレスからくるメンタル面の不調や長時間のパソコンでの作業による頭痛や肩こりなど、大病とはいえないまでも、何らかの心身の不調を抱えている人も増えています。

企業が「健康経営宣言」を実践し、組織全体で健康作りに取り組めば、従業員の健康状態は良くなるでしょう。

自社従業員が健康になると、これまで心身の不調が原因で低下していた能力が改善し、組織全体の業務の効率化につながり、労働生産性も向上します。

健康経営宣言の流れ

企業にとって主に3つのメリットのある「健康経営宣言」は、全体の流れを把握しておくと実践もスムーズです。

ここでは、実際に「健康経営宣言」を実践する際の流れを具体的にご説明します。

自社の現状をチェックする

まず、「健康経営宣言」を実践する際に大切なのは自社の現状をチェックすることです。健康経営優良法人の認定に必要な項目や、健康経営調査票について事前に確認しておきましょう。

従業員に対し、過去の定期健康診断やストレスチェック診断の結果についてアンケートを実施したり、勤怠データなどから不調の原因を探ったりするのも効果的です。

できることならこの段階で自社の現状をしっかりチェックし、「健康経営宣言」の内容や方向性を明確にしておくことをおすすめします。

 【中小規模法人部門の場合】保険者の健康宣言事業への参加 

次に、中小規模法人部門の場合は、保険者の健康経営宣言事業に参加して組織全体の健康に対する意識を高めていきましょう。

健康経営宣言事業の参加によって従業員の健康状態をチェックすると、企業が取り組むべき内容や優先順位を明確化できます。そのためには、自社の所属する健康経営宣言事業の運営主体となる保険者に対し、実施しているかどうかの事前確認が必要です。

たとえば、健康保険組合に加入している企業は、その管轄である健保連都道府県連合会の実施する事業に参加することになります。ただし、協会けんぽ東京支部では「健康企業宣言」と呼ぶなど、健康経営宣言事業は、都道府県によって名称や参加要件が異なりますので注意しましょう。

また、中には健康経営宣言事業を実施していない保険者もあります。その場合は、加入している保険者に健康経営宣言事業を実施できるかを相談し、必要に応じて自治体の実施する健康経営宣言事業への参加で代替が可能です。

保険者も自治体も実施していない場合は、自社独自の「健康経営宣言」を遂行する必要がありますが、下記の3つのうち1つ以上の要件を満たさなければなりません。

・従業員の健康課題を把握し、具体的な改善策の検討
・ヘルスリテラシー・ワークライフバランスの向上、健康経営を実践するための基盤作りとワークエンゲージメントの向上に関する取り組み
・健康の増進、生活習慣病・感染症の予防、過重労働やメンタルヘルスなど、従業員の心身における健康作りへの具体的な対策の実施

課題をもとに目標を設定する

3つ目のステップとして、課題をもとに目標を設定します。健康経営優良法人の認定要件となる項目・健康経営調査票・過去の定期健康診断やストレスチェックの診断結果などから現状を把握し、自社の課題について考察しましょう。

中には、企業全体ではなく特定の部署や従業員・管理職に課題があるかもしれません。

<課題例>
・喫煙が多い
・残業が多い
・健康診断の受診率が低い
・有給休暇の消化率が低い
・休日出勤が多い

自社の労働環境における課題を明確化したら、何を優先し、どんな目標を設定するかを検討しましょう。

<目標例>
・健康に関するセミナーの開催
・ノー残業デー・ノー休出デーの推進
・保健師などによる健康・栄養指導の実施

最初からハードルの高い目標を設定しても、長続きしません。すぐに始められて継続して実践でき、時間の経過によって成果がわかるような目標がよいでしょう。

健康経営宣言として発信する

健康経営宣言を行う場合、社内・社外へ宣言を公開しますが、「大規模法人」と「中小規模法人」では、宣言方法が異なります。

大規模法人部門の場合には「健康経営優良法人」の要件として「全社方針の明文化」「社外公開」の両方を行わなければなりません。

健康経営を目指し「社内公開」を行う際には社内の誰もが方針について知ることができるよう、周知する必要があります。健康経営で目標とする内容は、企業理念に関わる部分もあるため経営理念の中に組み込まれている場合が多いでしょう。

「社内公開」としては具体的に、企業行動指針・規範・行動憲章に盛り込む、経営計画・経営方針への記載などがあげられます。

一方「社外公開」では、自社の対外向けサイトはもちろん、株主向けの開示資料、CSR報告書、など自社の媒体で、健康経営に触れられる部分があれば、明記して情報公開を行います。

そのほか「社外公開」では、 アニュアルレポート、 統合報告書、 CSR報告書など、企業に関わる幅広い人へのアピールを行う必要があります。コーポレート・ガバナンス報告書や、投資家向け開示文書など、 多言語に対応した各種開示文書を用意することで、さらに多くの人に宣言が届くようになるでしょう。

中小規模法人部門の「社内公開」は、従業員個人への通知や社内文書での公開、掲示板などを通じて周知を促すなど、朝礼や全社会議等、従業員が全員揃っているところで公開します。

「社外公開」は、社外向けの自社HP、SNS、求人広告やパンフレットなどへの記載を行うことで、公開できるでしょう。社内の事務所や、来客の多い場所へ掲示するのもよいでしょう。

取り組みの実施と評価・改善

最後に「健康経営宣言」の取り組みの実施と評価・改善を行いましょう。

たとえば協会けんぽ東京支部が保険者の場合は、取り組みの実施は2つのステップに分かれています。

第1ステップは、「健康企業宣言」のチェックシートに記入をして申し込みます。

取り組みを実践した後に振り返りを行うと、協会けんぽ東京支部より「健康優良企業」の「銀の認定証」が発行される仕組みです。

この「銀の認定証」が発行された企業は、経済産業省による「中小規模法人の健康経営優良法人」への申請が可能です。

第2ステップは、第1ステップと同じ流れですが、職場の健康経営や健康作りをさらに推進するもので、その取り組みには安全衛生も含まれます。

取り組み後に振り返りを行い、レポート確認書類を提出すると、東京推進協議会より「健康優良企業」の「金の認定証」が発行されます。

どちらのステップも、「健康経営宣言」の取り組みにおけるPDCAサイクルの活用が重要です。

【例】協会けんぽの「健康宣言」取り組み項目の一覧

例として、協会けんぽの「健康経営宣言」の取り組み項目の一覧を紹介しましょう。協会けんぽでは、この一覧のうち3項目以上の選定が必要とされます。

なお、「★」印は、協会けんぽが表彰する際の審査重点項目です。

・社員の家族の健康づくり
・受診奨励の取り組み(★)
・ストレスチェックの実施
・健康増進・過重労働防止に向けた具体的目標
・管理職および一般社員それぞれに対する教育機会の設定
・適切な働き方の実現
・コミュニケーションの促進
・病気の治療と仕事の両立支援
・保健指導の実施(★)
・食生活の改善
・運動機会の促進
・受動喫煙対策
・社員の感染者予防
・長時間労働への対応
・メンタルヘルス不調者への対応
・女性の健康保持・増進に向けた取り組み

健康経営宣言の事例 

健康経営宣言を行い、実際に施策を行っている企業の活動を紹介します。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、健康経営の取り組みを「健康管理」「安心安全な職場環境」「健康維持・増進」という3つのテーマで展開し、健康経営優良法人2022大規模法人部門(ホワイト500)に4年連続で選出されました。

健康管理では、健康診断の受診率向上や特定の社員やリスクのある人への適切なケア、がん、歯科、婦人科検診、ストレスチェックの実施促進に力を入れています。

その他にも様々な試行を行っておりますが、健康維持・増進では、食生活の改善にも力を入れています。

参考:ソフトバンク株式会社

株式会社ベネッセホールディングス 

2018年に「ベネッセグループ健康宣言」を発表した、株式会社ベネッセホールディングスは、グループ会社5社が健康経営優良法人の認定を受けています。

まず、取り組んだことは社内の健康意識調査です。その調査結果から、健康課題を「食生活習慣の改善」「女性社員の不定愁訴の低減」と位置づけました。

課題の解決策として、食生活の見直しを促すセミナーや実技を継続的に続けたところ、70%近くの従業員に健康改善につながる生活習慣の変化があったそうです。

従業員本人だけでなく、家族を含めた健康サポートを行っています。

参考:株式会社ベネッセホールディングス 

健康経営の実践時に活躍する福利厚生とは?

オフィスで野菜

健康経営を実践する時には、福利厚生が活躍します。

企業が独自に設定できる法定外福利厚生を上手に活用することで、従業員を大切にしているという姿勢をアピールできるでしょう。

特に、従業員から人気の高い「食に関する福利厚生」を導入すれば、食事は毎日必要なものですのでダイレクトに効果を発揮します。

「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」

「健康経営宣言」を実践する際に、おすすめの食に関する福利厚生が、設置型の健康社食「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」です。

本サービスは、オフィス内のスペースに専用の冷蔵庫や電子レンジを設置するだけで手軽に始められます。

この「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」には、2種類のプラン「オフィスでやさい」と「オフィスでごはん」があります。

「オフィスでやさい」は、軽めの昼食や朝食を取りそこねた時にピッタリな、新鮮な野菜やフルーツを使用したスナック類やサラダ、ドリンク類を中心とするプランです。

150個を導入する場合の月ごとの企業負担額は49,000円で、従業員は1個あたり税込100円(税込)で購入でき、現代人に不足しがちなミネラルやビタミンなどの栄養素を手軽にとれます。

「オフィスでごはん」は、専用の電子レンジで温めるだけで管理栄養士の監修による肉料理や魚料理、ごはんものなどを自由に組み合わせられるメニューの多彩なプランです。

80個セットを導入する場合の月ごとの企業負担額は25,200円で、従業員の利用額は、1個あたり100円(税込)です。

年間60種類のメニューはバラエティに富み、新鮮で安全な食材にこだわっていますので、どちらも「健康経営宣言」を実践する企業にピッタリの食の福利厚生です。

まとめ

なかなか収束の兆しを見せないコロナ禍ですが、各業界は少しずつ以前の姿を取り戻しつつあります。

そんな中、自社の労働生産性を向上させるには、企業側が従業員に対し「大事にしている」という姿勢を積極的にアピールすることが大切です。

今後、ますます進む少子高齢化社会の日本で自社を発展させるためにも、従業員が仕事の質を高められるよう「健康経営宣言」を発信し、健康管理に取り組んでいきましょう。

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